【図書館】
2018.04.04 アルクのダンジョン名を追記。
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【図書館】◇
ダンジョンマスターに転生して、俺の名は、絵本小雪になった。
イージーモードのクリサンセマム皇国にダンジョンエリアを与えられ、オリーブ伯爵領にダンジョンを構えている。
俺のダンジョン【図書館】は、地球とこの世界の様々な書物を閲覧出来るダンジョンである。
販売も行っている。
その内、同人誌即売会でも開こうかと思っている。この国でも似たような事をしているらしいので、違和感無く受け入れられるのではないだろうか?
「この本は盗作だ!」
本屋の一つに入ると、突然、一人の男がある小説を掲げてそう怒鳴った。
「盗作? 何と言う作品の盗作ですか?」
「俺のだ!」
「作品名は?」
そう尋ねると、男は驚きの一言を発した。
「まだ無い!」
「名前は未だでも、作品自体はあるんですよね? 見せてください」
男は更に驚愕する事を言った。
「まだ書いて無い!」
どうやって盗作するんだよ?
「俺が書こうと思ってたんだ! 俺の脳を覗いたんだ! 許せん! 訴えてやる!」
こんな事訴えられても、困るだろうな。
此処は魔法が在るファンタジー世界だが、頭の中を読む魔法は無い。
「マスター」
「療の【病院】に連れて行ってくれ」
「畏まりました」
俺は、声をかけて来た眷族に男を連れて行かせた。
図書館に入ると、奴隷達が返却された本を棚に戻したりしていた。
「やってるか」
「あ。マスター」
「此処、広過ぎだよ」
「そうか? これでも、小さくしたんだが」
流石に、全ての本を並べるのは――ダンジョンだから出来るけど――どうかと思って、皇国の本と翻訳された他国の本と、翻訳された日本で有名な作品に絞ったのだ。翻訳版は、交換リストに有った。
他の本は要望が有ったら出す感じ。
あ、そうそう。床面積は、五千平方メートルね。
「これで……」
「最初は、一万平方メートルにしようと思ってた」
「二倍?!」
「広さは、四倍だよ」
「マスター! 思い止まってくれて、ありがとう!」
尚、借りたい本・読みたい本が決まっていれば、受付の眷族に言えば、ダンジョンメニューの『回収』を使って取り寄せられる。ジャンルや作者で検索でも出来るので、棚から本を探すのは、自分で探したい人やコミュ障の人ぐらいだろう。
俺は、図書館の席に座って、ある本を開いた。
それは、ユティ教について書かれた本である。
現在俺達が知っているのは、女神ユティを唯一の神とし、ダンジョンを邪悪な存在として討伐をしている事。そして、ネズミを聖獣・猫を邪神の使いとしている事。ユティ神国はユティが建国した事。君主である神女は、女神ユティの器であると言う事。
それだけなので、それ以外の情報を得ようと思ったのだ。
先ずは、あの世。
女神ユティを崇める者は、どんな悪人であろうとも天国へ。崇めない者は、どんな善人でも地獄へ落ちる。
ユティ以外を邪神としているので後者は解るが、前者は何なのだ? ユティ神国の犯罪率の高さは、その所為なのではないのか?
あ、殺人被害者が出たら、吸収してDPに出来ると言う事だろうか?
さて、宗教と言えば、食べてはいけない物があったりする。
ユティ教の場合は、ネズミと猫であった。禁止されている理由は言うまでも無い。
元・現代日本人からすればネズミも猫も食料では無いが、食べる国は在る。そして、この世界にも食べる国は存在するのだ。紅星帝国とか。……あいつ等、食べた事あるのかな?
後は、神話。
この世は女神ユティが創り、邪神達は異世界から来たらしい。
ユティは、邪神が邪神だと判らなかった頃、一人の男神アルクと恋仲になったそうだ。
しかし、邪神と気付いて二人の仲は終わり、ユティは悲しみを押し殺してアルクを殺した。
彼が、ユティが最初に殺した邪神だそうだ。
この悲恋は、ユティ教徒――特に女性――の間で人気らしい。
が、其処にアルクへの好意は一切無い。何故なら、ユティを騙して恋仲になった邪神だから。
でも、これ本当なのかね?
メニューの『ヘルプ』でアルクを検索してみる。
アルク
かつて存在したダンジョン【音階段】のダンジョンマスター。
ユティに惚れられて、ストーカーされていた。
……ストーカー殺人した揚句、邪神扱いかよ! しかも、恋愛関係捏造しているし!
何と言う、死体蹴り。酷過ぎる。
やっぱり、ユティこそが邪神なのかもしれない。
深夜。日付が変わった頃。
『皆! 起きろ! 来たぞ!』
遊戯の強制コールが入った時、俺は夜更かしして本を読んでいた。
折角、本の内容に大笑いして気分が良かったのに、台無しである。
モニターで確認すると、二人の少女がダンジョンに入って来た。
聖剣は一つだけで、それを交替で使うらしい。魔力量少ないのか。
飛ぶ本型モンスターが聖剣使い達に向かって行っては、斬り落とされる。
本を並べ替えて開ける扉も、本に関するクイズに正解しないと開かない扉も、ぶった切られてしまった。
魔力量少ない自覚が無いのだろうか?
クイズは兎も角、本の並び替えぐらいは、節約の為にしたら良いのに。
後、モンスター達も、Lv40超えなら聖剣使わないで勝てるからな? 寧ろLv20でも勝てるからな?
そして、聖剣使い達は、地下四階に突入して聖剣を失った。
『畜生! 邪神め!』
『絶対に殺してやる!』
彼女達は怒りはしても冷静に、落ちていた剣を拾って進み、盾を拾って進み、本を拾った。
『本?』
しかし、何気なく本を開いたのは不味かった。
それは、呪いの本。
開くと発動する【無抵抗】の呪い。
暫くの間、攻撃する事も防御する事も出来なくなるのだ。
『まさか、呪いの本だなんて!』
『もう! ダンジョンには、呪いのアイテムも在るって聞いてたでしょう!?』
『ゴメン』
どうやら、【女神製ダンジョン訓練所】では呪いのアイテムは出ないらしい。
『階段よ!』
モンスターから逃げていた二人は、階段を目にして駆け寄った。
残念だったな。
それはモンスターだ。




