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ダンジョンマスターは神様です  作者: ひつじかい
番外編:クリサンセマム皇国(17人) VS 聖剣使い(34人)
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【劇場】

◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【劇場】◇


 ダンジョンマスターに転生して、私の名は、小鳥(おどり)歌音(かのん)になった。

 イージーモードのクリサンセマム皇国にダンジョンエリアを与えられ、グレイ侯爵領にダンジョンを構えている。


 私のダンジョン【劇場】は、音楽・ダンス・演劇・映画を楽しめる場所。勿論、この世界のものも。

 この国の演奏や劇は、それを生業にしている人達を招いて、外国のものは、カスタムで覚えさせた眷族に公演して貰っている。


 更に、音楽教室やダンス教室等も開いている。



「素敵だったね~」

「私もあんな恋をした~い」


 恋愛ものの演劇を見た少女達が、感想を口にしているのを尻目に、ある劇場に入る。


「マスター」

「駄々をこねている女の子が居るって?」


 私は、連絡して来た眷族に確認した。


「はい。ナンバーワンの歌姫として遇して欲しいと」

「歌唱力は?」

「言うだけあって上手いんですけど、お気に入りの一曲以外は歌いたくないと」

「……それって、他の曲は上手く歌えないって事じゃない?」

「恐らくそうかと」


 それでも、私は、一応少女と直接話してみる事にした。



「お待たせしました。私がマスターです」

「貴女みたいな子供が?」


 ダンジョンマスターが赤ん坊から育つとでも思っているのだろうか?


「ナンバーワン歌姫として扱って欲しいとの事ですが」

「その通りよ。私ほど相応しい人は居ないわ」

「それは、客の入りと反応で決まりますので、最初からナンバーワンとして扱う事は出来ません」


 そう言うと、少女は馬鹿にするように溜息を吐いた。


「子供じゃ話にならないわ。一目で私の才能が判らないなんて」


 歌も聞かずに才能が判るなんて、【鑑定】持ちぐらいじゃない? 私は持っているけど。


「では、他所へどうぞ。此処で一番偉いのは私ですので」

「部下の意見を聞かないの?!」


 驚く少女に告げる。


「聞いたけど? 今ナンバーワンの歌姫より上手かったなんて誰も言わなかった」

「それは、その人達の耳がおかしいのよ!」

「……じゃあ、今日の夜歌って貰うわ。当然満席に出来るんでしょう? 出来なかったら劇場の使用料・宣伝料を払って貰う」

「良いわ。私の実力、見せて上げる!」



 あの自信は何処から来るんだろう?


「今夜、この劇場で、自称『現・ナンバーワン歌姫ルカを上回る最高の歌姫!』ナミの公演が有りま~す!」


 私は、眷族達に宣伝をさせている。


「え~。自称? 何それ? 変~」

「ねえ、これ。二時間公演なのに、一曲しか書いて無いよ?」


 興味を持ったらしい少女達が眷族に尋ねた。


「はい。ナミさんは、この一曲で会場を満席にして二時間楽しませてみせるそうで~す!」

「へ~」

「どうする?」

「夜だもん。見れないよ」

「だよね~」


 折角興味を持った少女達は、夜までに家に帰るみたいだ。


「如何ですか~?」

「二時間同じ曲を聞き続けるのは、幾ら上手くてもね……」


 通りかかった男性に勧めるも、敬遠された。


「お客様、如何でしょうか?」

「どんな容姿?」


 次にやって来た男性に、眷族が写真を見せる。


「え? これでルカ以上の歌姫?」

「歌で勝負です!」

「いや~。俺は良いや」



 夜になり、会場内で警備に当たるのは、先日捕らえた紅星帝国人の奴隷達。

 鳥獣人・栗鼠(りす)獣人・兎獣人の三人。


「すげえ。がっらがら」

「こんなの初めて見た」

「ゼロじゃ無くて良かったよな」


 数少ない観客は、どんな理由で来てくれたのだろう?


「開演だよ」

「どうして、少ないの?! 貴女が何かしたんじゃ……!」

「信用出来ないなら、最初からやらなければ良かったんじゃない? 無名の歌姫なんてこんなものでしょう」


 私がした事と言えば、今直ぐナンバーワンとして扱えと言う無名の新人に、現ナンバーワンのルカと同じ規模の会場を用意して上げたぐらいだ。


「これが、貴女とナンバーワンの差よ。さあ、二時間たっぷり歌って来なさい」



 結果、観客達は、一回だけ聞くと帰って行った。

 そして、口コミで追加の客が来る事は無かった。


「払えないって?」


 劇場使用料・宣伝料を払えないと言うナミに、冷たい目を向ける。


「こんな筈じゃなかった!」

「どんな筈だったとしても、払って貰うわ」

「何でこんなに高いのよ!」

「ナンバーワンに相応しい会場・ナンバーワンに相応しい衣装だよ。高いのは、当たり前でしょう?」


 私は、涙目で俯くだけのナミに言った。


「貴女が払えないなら、身内に払って貰うわ。案内しなさい」


 彼女は大人しく眷族と一緒に出て行ったが、直ぐに逃げ出した。

 勿論、そのまま逃がす訳は無い。



「この度は、孫がご迷惑をおかけして……」


 一時間後。

 牢屋とどっちが良いかと脅して漸く案内された彼女の家から、眷族は祖父を連れて戻って来た。


「謝罪は結構です。此方、請求書ですので」


 請求書を目にしたお爺さんは、疲れたように溜息を吐いた。

 十代で結婚するのが普通のこの国なら、祖父はもっと若い筈だが。遅くに出来た子の娘とかかな?


「解りました。直ぐに用意します」

「失礼ですが、お孫さん、一度、ダンジョン【病院】で診て貰っては?」


 普通、幾ら歌が上手くても、国内一だとは自惚れないよね? それだけの実績が有るなら兎も角。


「そうするべきかも知れませんね……」


 私は、落ち込んでいるお爺さんを眷族に家まで送らせた。




 深夜。日付が変わった頃。


『皆! 起きろ! 来たぞ!』


 遊戯(ゆうぎ)の強制コールが入ったので飛び起きる。



 モニターで確認すると、聖剣使いは二人だった。

 剣は一本なので、二人で交替して使うのだろう。


 彼女達は、セイレーンの歌声の【魅惑】に耐え、念入りに高めた魔力を込めた一撃で屠って行く。

 光った順にボタンを押さないと開かない扉も、光った順に床を踏まないと開かない扉も、聖剣に依って壊された。

 でも、そこまで念入りに多くの魔力を注ぎ込まなくても壊せると思うんだけど。



 地下四階への階段手前の扉まで到着した彼女達は、壊そうとしてプレートに気付いた様だ。


『全てを失う覚悟?』

『命を失う覚悟なら、疾うに出来ている』


 おお! カッコイイ! でも、命だけじゃないんだよな~。


 聖剣使い達が階段を下りて行くと、地下三階の床に彼女達の武器や防具が転移した。


『全てを失うって、こう言う意味だったの?!』

『卑怯な!』


 彼女達は直ぐ側に落ちていた剣を、罠を警戒しながら近付いて拾い、慎重に先に進んだ。

 しかし、地下五階でモンスターに【混乱】状態にされ、同士討ちをして果てた。

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