【ファッションの街】
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【ファッションの街】◇
ダンジョンマスターに転生して、私の名は、服衣飾になった。
イージーモードのクリサンセマム皇国にダンジョンエリアを与えられ、ブラック公爵領にダンジョンを構えている。
私のダンジョン【ファッションの街】は、衣服・装飾品・化粧品を扱う店舗が沢山在るの。
カジュアル系・ガーリー系・フェミニン系・エスニック系・ロック系・ロリータ系・ゴスロリ系・ストリート系等々。勿論、この国のファッションも取り扱っているわ。
国内の様々な店舗と委託販売し合ってもいるの。
ダンジョンに行くのは怖い・転移で酔う等の人達が地元でうちの服を買ったり、うちで服を物色する人達が国産の服に目を止めて買う事が有るわ。
型紙や糸や布や裁縫道具等も売っているのよ。
それで作った個人の品も受託販売しているの。
『ドロボー!』
警報が鳴り響く。
誰かが万引きでもしたようね。
「放しなさい! 無礼者!」
眷族に捕らえられ喚いているのは、身分の高そうな身形の女性だったわ。
あ、因みに、私は男よ。この喋り方は前世の幼少期に母の喋り方を真似ていた所為であって、おネエでは無いの。
「泥棒に礼儀を説かれるとは思わなかったわ」
「子供は引込んで居なさい!」
女は、綺麗な顔を鬼の様な形相に歪めてそう怒鳴った。
「このお方はダンジョンのマスターだ!」
「ぐっ! 放しなさいと言っているでしょう!」
締め付けを強くした眷族に、女が再度命じる。
「『窃盗の常習者』ね……」
私は【鑑定】結果に溜息を吐いた。
どうやら、貴族である身内が金か権力で解決して、本人の矯正は放置して来たらしい。
「お金なら有るわよ! 払えば良いんでしょう!?」
「払わなくて良いわ。刑罰を受けなさい」
払うとか言っているけれど、自分のお金なのかしら?
「足りないって言うの!? だったら、十万でも百万でも払って上げるわよ!」
「全然足りない。貴女が盗んだのは、一千万の物よ。でも、払わなくて結構。刑罰を受けて」
確か、三百万で斬首刑だった筈。
「お父様が許さないわよ!」
「貴女の存在を許さないお父様で無くて良かったわね」
座敷牢にも入れないなんて、よっぽど可愛いのね。
「お父様にかかれば貴方なんて」
「三年前の再現をする気? 貴女達ユティ教徒なのかしら?」
その瞬間空気が変わった。
野次馬達から女に敵意が向かう。
これ以上何か言えば、袋叩きにしそうね。
殺意にも似た敵意に怯えたのか、女は大人しくなった。
ダンジョン討伐に因る魔物の襲来と祟りの再現は、幾ら貴族でも許されない。ユティ教徒か否かは関係無い。未遂であっても厳罰に処される。
でも、窃盗だけなら、今回も父親の権力や金で、刑罰を回避出来るかもしれないわね。
刑罰と言えば、先日、ユティ教に雇われた紅星帝国人達を奴隷にしたわ。
彼等には、男性服を取り扱っている店のショーウインドーでマネキンをして貰っているの。
それとは関係無いんだけれど、今度女装用のお店も出すつもりよ。
服と言えば、皆でコドクにローブを送ったけれど、服の替えも送って上げれば良かったわ。
ああ。でも、元聖剣使い達の服が有るわね。それを吸収してDPで交換すれば大丈夫か。
深夜。日付が変わった頃。
『皆! 起きろ! 来たぞ!』
遊戯の強制コールで起こされ、メインダンジョンのボス戦部屋に移動する。
夜更かしは肌に悪いわよ、聖剣使い達。
モニターで見ていると、彼女達はリビングアーマーならぬリビングクロスに襲われ、意味も無く多めに魔力を使った攻撃で両断した。
緊張しているのかしら?
マネキン人形に指定のコーデをしないと開かない扉も、モンスターがドロップする宝石を嵌めないと開かない扉も、聖剣で壊して行く聖剣使い達。
タイムアタックでもしているの?
地下四階への階段を塞いでいる扉も壊して、慎重さが欠片も見られない足取りで降りて行った。
そして、聖剣を失った彼女達は、地下三階に戻れなくなった事に気付いたわ。
『嵌められた!』
『どうやって聖剣を奪ったの?!』
騒いだ為にモンスターが寄って来た事に気付いた彼女達は、逃げようとして昏睡の罠を踏んだ。
「これがダンジョンキラー」
地下四階への階段前で聖剣を拾った私は、しげしげとそれを見詰めた。
女性が握り易い細さの柄・女性が片手で振り回し易い軽さね。
デザイン的には、ダサい。そして、刃はまるで練習用の様に尖っていなかった。
魔力を込めても、刃は尖らない。
込めた魔力をダンジョンにのみ効くように変化させて、魔力を飛ばして攻撃する剣の形の魔導具という事みたいね。
それより、コドクの方にも聖剣使いが来ているかもしれないわね。心配だわ……。




