【夜の街】
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【夜の街】◇
ダンジョンマスターに転生して、俺の名は、花街遊夜になった。
イージーモードのクリサンセマム皇国にダンジョンエリアを与えられ、ネイビー公爵領にダンジョンを構えている。
俺のダンジョン【夜の街】は、スナックやバー等の飲み屋の他に性風俗店もある。寧ろ、こっちがメインか。
此処では、奴隷達を働かせているが、この国でも他所でも奴隷が身体を売らされるのは普通だ。
奴隷省が管理する奴隷は、戦争奴隷・犯罪奴隷・借金奴隷・短期借金奴隷の四種類。他に、違法に奴隷にされた違法奴隷が偶に居るらしい。
戦争奴隷は、給料を貯めて自分を買えば、奴隷身分から解放される。
犯罪奴隷は、刑期満了で、奴隷身分から解放される。
借金奴隷・短期借金奴隷は、借金を返済し終えれば、奴隷身分から解放される。
奴隷に与えられる仕事は、大抵きつい・汚い・危険な仕事で、男性奴隷が優先される。なので、女性奴隷は、娼館で働く――春を売るのも、きつい・汚い・危険な仕事だとは思うが――位しか出来ない。まあ、うちには男娼もいるけどな。
「どうして、私が身体を売らねばなりませんの!」
喜んで娼婦になる者は少数派なので、ままならない現実を受け入れられず喚く者も居る。
親等の借金や親等の犯罪で奴隷になる者は、特に。
「どうしてって、お前の父親が仕事せずに借金したからだろう?」
「お父様を陥れた男が悪いのです!」
この少女は貴族なので、高級娼婦館で働かせようと思っていた。
「その後、友人知人に紹介された仕事を全て断ったのは、お前の父親だろう?」
「お父様は誇り高いのです!」
「誇り高い奴が、娘を奴隷にするかよ」
「無礼者! それ以上言えば、捕らえさせますわよ!」
う~ん。どうするかな? 嫌がってたし、出来ればこのままうちに置いてやりたいんだが。
「此処には、身体を許さない仕事もあると聞きましたわ!」
「お前、父親の借金額が幾らだと思ってんだよ?」
どうしても身体を売るのが嫌なら、仕方ないな。あの男に売るか。
「お前を身受けしたいって貴族が居る」
「あの男でしょう!? 絶対に御免ですわ!」
こいつが奴隷になる前、こいつとの結婚と引き換えに援助すると言われていたらしいが、人間性が受け付けないとかで断ったんだそうだ。
他に援助の話は一切無かったらしいが。普通の縁談も無かったそうだが。
「身体を売りたくないんだろう? 良かったな。売る前に身受けされて」
「嫌だと言っているでしょう!」
「じゃあ、手続きして来るから」
「止めなさい!」
少女が掴みかかって来たがヒョイと避けて、俺は奴隷省に向かった。
少女は奴隷身分から解放され、貴族の男に連れられて去って行った。
俺が調べた限りでは、彼に変態趣味は無いし・性格も真っ当だった。【鑑定】でも人格障害とは出なかったし、どの辺りが受け付けないのか不明だ。顔は人間性には含まれないよな?
「何で駄目なんだよ!? 俺は客だぞ!」
受け付けが騒がしいので行ってみると、一人の男が眷族に詰め寄っていた。
「ですから、性病をお持ちの方は、お通し出来ません」
「性病が怖くて、娼婦が抱けるか!」
何言ってるんだろう?
「お前は性病を娼婦に感染させたいのか? 商品損壊は罪だぞ。牢屋に入るか?」
「何だ、このガキは?!」
「マスター」
「『マスター』だあ? このガキが?」
この国ではダンマスは畏れられているのだが、中にはこういった恐いもの知らずも居る。
「ブルー侯爵領のダンジョン【病院】で治してから来い」
「ふざけんな! 俺は客だぞ! 客!」
「娼婦に病気を感染させるつもりなら、お前は客じゃなくて犯罪者だ。ゴールドマン伯爵と同類だ」
「あんな奴と一緒にするんじゃねえ! あいつの所為で!」
ゴールドマン伯爵に何か恨みが有るらしい。男は激高した。
「病気を広めた伯爵とこれから広めるお前と、何が違うんだ?」
「俺は……。だって……。感染するとは限らねえし……」
男は、同じと気付いて愕然としたのか、勢いが無くなった。
「ゴールドマン伯爵も、ペストがあんなに広がるとは思っていなかったかもなあ」
「……帰る」
「ちゃんと【病院】で治せよ。治ったら問題無いんだからな」
俺は、足取り重く帰って行く男に、そう声をかけた。
ゴールドマン伯爵で思い出したが、数日前にユティ教に雇われた紅星帝国人を捕らえた。獅子獣人・牛獣人・鳥獣人の三人だ。
彼等は皇国の法律によって裁かれ、犯罪奴隷になったので、うちで男娼として働かせる事にした。
他のダンジョンでは普通の雑用をさせているだろうから、ちょっと可哀相かもな。
可哀相と言えば、前世で友人だったコドクだ。
仲間内で一人だけハードモードのユティ神国にダンジョンエリアを与えられて……。
訂正。敵地にダンジョンエリアを与えられて……。
敵が居なければ、ハードモードでも大して問題は無い筈だ。
ユティ教は、ダンマスを邪神として滅するべきと説いている。信者達は、ユティもダンマスだとは思っていないようだ。
そんなに俺達に邪神であって欲しいのならば、今後もしユティを捕らえたら、望み通り邪神の如く触手モンスターにユティを与えてやろうと思っている。
深夜。日付が変わった頃。
『皆! 起きろ! 来たぞ!』
遊戯の強制コールで起こされ、メインダンジョンのボス戦部屋に待機する。
侵入者は、聖剣を持ったのが一人・持って居ないのが一人だった。
聖剣の使用に魔力を必要とするので、交替して使うのだろう。
聖剣使いは、襲いかかる触手モンスターを、奇声を上げながら無駄に魔力を込めて斬り捨てて行く。
セックスしないと出られない部屋も、壊されてしまった。
直ぐに二人は、地下四階へと続く階段の手前の部屋に辿り着いた。
其処には、インキュバスが居る。
『そ、そんな……。聖剣の攻撃が効かない?!』
『残念でしたね。私には、女性の攻撃は通用しません。寧ろ、力になります』
二人は、女性に攻撃されてパワーアップしたインキュバスに眠らされた。
俺は、其処に転移してダンジョンキラーを拾い上げた。
ダンジョンキラーによる攻撃も、女性が振るうのならば通用しないとは、思惑通りだ。
それなら、こいつをユティ暗殺に送れば良いんじゃないか?
ふむ。後で提案しよう。




