【運動公園】
2020.07.02 聖剣使いの人数を間違っていたので、訂正。
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【運動公園】◇
ダンジョンマスターに転生して、俺の名は、雲道遊戯になった。
イージーモードのクリサンセマム皇国にダンジョンエリアを与えられ、イエロー伯爵領にダンジョンを構えている。
俺のダンジョン【運動公園】は、皇国にダンジョンエリアを与えられた他の皆のダンジョンと違って、普通のダンジョンだ。
今日もダンジョンを訪れた者達が、普通にグランドゴルフをしたり、ゲートボールをしたり、サッカーをしたりと楽しんでいる。
眷族達が行うサッカーや野球の試合観戦も人気だ。
その内、国民体育大会でも開きたいな。
三年前まで、此処はゴールドマン伯爵領だった。
ゴールドマン伯爵は、皇国の貴族の中で唯一ユティ教を信奉していた。
彼が何故、ユティ教徒となったのかは判らない。
この地に、唯一外国と交易する港が在ったからかもしれないし、『死んでも生き返るダンジョン』がユティの神性を確かなものとしているからかもしれない。
兎に角、彼は神国に様々な便宜を図っていた。
その内の一つが、密入国の手引き。
三年前、皇国中央に存在していた【中央ダンジョン】が、聖剣使いによって破壊された。
当時、それを防ぐ為に、聖剣使いの入国が禁じられていたのだが、ゴールドマン伯爵が国内に招き入れたらしい。
因みに、コアを破壊されただけでは、塔が倒壊する事は無い。
聖剣使い達が、倒壊する様に亀裂を入れていたのだろう。
倒壊したダンジョンは、周辺に在った街を巻き込み、凡そ九割が命を落としたらしい。
そして、聖剣使い達が倒さずに置いた千を超えるモンスターが、ダンジョンを出て皇国内を暴れ回った。
その対応に追われている内に、聖剣使い達はまんまと帰国し、数日後、神国から皇国に軍が差し向けられた。
それを退けたのは、当然ゴールドマン伯爵領軍では無く、皇国西部を領地とするネイビー公爵領軍だった。
彼等は敵軍の上陸を許さず、海上の敵船の殆どを沈没させたと言う。
その後、皇国では各地で大地震やそれに伴う大津波、更には火山の噴火と災害が相次ぎ、ペストの流行まで起きたそうだ。
そのペストは、ゴールドマン伯爵領から広まったらしい。
伯爵は、自領の猫を駆除していた。ユティ教で聖獣とされているネズミを獲る猫は、邪神の使いと考えられているからだ。
ペストが領内に広まると、伯爵は何も対策を取らずさっさと他領に逃げ出したそうだ。
その為、潜伏期間の者も発症した者も、誰にも止められずに他領へと避難し、そこで広まって初めて国に報告された。
皇国はゴールドマン伯爵を捕らえ、諸々の罪で処刑した。
そして、ユティ教禁教令を出し、改宗を拒んだ者達を全て国外追放とした。
彼等が今どんな生活をしているかは知らないが、きっと神国で上手くやっている事だろう。
「遊戯様、ボール投げて~」
キャッチボールをしていた子供が取り損ねたボールだろう。足元に転がって来ていた。
「ほら」
「ありがと~」
「気を付けて遊べよ」
「は~い」
見た目はこっちの方が幼いのだが、この国ではダンマスは神として畏れられているし、ドラゴエルフが見た目通りの年齢では無い事も良く知られているので、子供扱いされる事は滅多に無い。
ペストが終息した頃、神国は二度目の進軍を開始した。
しかし、今度は迎え撃つまでも無く、荒波に飲まれて壊滅したらしい。
わざわざ海が荒れる時期に来なくても良かっただろうに。
皇国では、それを祟りと呼んでいる。
祟りに操られて進軍し、邪神の加護も弾かれて沈んだのだと。
災害が次から次へと起きていなかったら、皇国はとっくに神国に侵攻していただろう。
神国には、前世の知り合いがダンジョンエリアを与えられていた。
俺達は、彼女の友人達を中心に彼女を心配していた。
イージーモードの皇国と違い、神国はハードモードだ。
聖剣使いに襲われれば、勝ち目は無いだろう。
せめて、奴等の目を他に向けようと、改宗を装っていたユティ教徒に皇国人経由で金を与えた。
彼は此方の狙い通りにその金を使って旅立ち、紅星帝国経由で神国に入国し、皇国に十七のダンジョンが出来た事を報告してくれた。
これで、全ての聖剣使いを皇国に送ってくれれば、彼女は助かるのだが。
勿論、此方が聖剣使いに殺される危険性は高くなるが、このダンジョンで勝てなければ、何年後でも勝てはしないだろう。
邪神出現の情報を得た神国は、下見の為に紅星帝国人を雇い、送り込んで来た。
うちに来たのは、黒うさ耳青年・白うさ耳青年・茶色うさ耳おっさんの三人だった。
全員Lv50を超えていたが、地下四階に下りる前に何とか拘束する事が出来た。
犯罪奴隷となった彼等は、【運動公園】で、利用者の案内や施設の説明等をしている。
深夜。日付が変わった頃。
三十四人の少女が船で密入国をした。
見付からず上陸出来て喜んでいるようだが、残念だったな。其処も俺のダンジョンだ。
「皆! 起きろ! 来たぞ!」
コールで十六人の仲間を起こし、こんな事もあろうかと用意していた転移魔法陣を起動する。
港に侵入した彼女達は、其処に転移魔法陣が在る事を聞いていたのだろう。
ライトアップされていない普段使われている魔法陣では無く、ライトアップされている俺が起動した魔法陣の方に二人ずつ乗り、行き先を選択して転移して行く。
前者はサブダンジョンの手前に転移するが、後者はメインダンジョンの入り口を一歩入った所に転移する。サブダンジョンを壊されたくないので用意したのだ。
俺のダンジョンに転移した二人の内、一人はダンジョンキラーを所持していなかったが、恐らく交替要員だろう。
ダンジョンキラーは魔力を込める事で威力が上がるらしい。つまり、減った魔力を回復する間交替する事で、安全を確保出来ると言う事だ。
聖剣使いは、襲いかかる鷹型モンスターを、バッサバッサと無駄に魔力を込めて斬り落として行く。
ボウリングでストライクを取らないと先へ進めない部屋も、バスケットボールで3Pシュートを決めないと先へ進めない部屋も全て壊された。
こいつ等には、魔力を節約すると言う考えは無いのだろうか?
直ぐに二人は、地下四階に降りる階段に辿り着いた。
階段の前には扉が在り、『この扉を潜る者。全てを失う覚悟はあるか?』と刻まれたプレートが付けられている。これは、皇国の十七のダンジョンで共通である。
が、二人はそれを読まずに扉毎ぶった切って先へ進んだ。
武器も防具もアイテムもレベルも失うのにな。但し、レベルは外に出たら元に戻るが。
俺は其処に転移して、ダンジョンキラーを拾い上げた。
この設定が、ダンジョンキラーにも有効である事が確認された。
『聖剣が!?』
『邪神の仕業ね! 卑怯者! 返せ!』
そんな事を喚くLv1の二人の背後に、Lv5のモンスターが四羽到着した。




