高い買い物
◇ヒトリ島・29日目(続き)◇
ドンフウは、夕方までファンを待っていた。
『戻って来ねえ……。畜生! ダンジョンに食われちまったか!』
彼は、声を震わせて叫んだ。
『出て来い! 邪神! 通路が狭い穴だなんて、卑怯だぞ!』
卑怯とか言われても……。聖剣使いは通れるんだから。
「どうするんだ、マスター?」
「え? 出ないよ?」
マツに聞かれて、私はさも当然であるかの様に答えた。
私は、自分を殺そうとする人の気持ちを汲んで、自分の命を危険に曝すような立派な人間では無いのだ。
ドンフウが諦めて帰ったのは、一時間ほど後の事だった。
夜になって、水海達からのお詫びの品が届いた。
今回も、ドラゴンは怖いな……。熊より遥かに強いんだもんな。怖いのは当然だな。
『届いた~?』
ダンジョンへ戻ると、水海からコールが届いた。
「うん。ありがとう」
『お詫びなんだから、お礼は良いよ』
ローブは早速身に着けた。私のが、黒地に水色の縁取り・カシのが、黒地に黄色の縁取りだった。
『それは、エルフ製だよ』
「へ~」
ミスリルの大剣はマツに、樫の杖はカシに渡した。
『剣はドワーフ製で、杖はエルフ製ね』
「うん」
そう言えば、皇国製を用意するって言ってなかったっけ?
『ナイフはコドクが持つと良いよ。因みに、皇国製』
オリハルコンのナイフは私に。……総額幾らだったんだろう? 聞かない方が私の精神衛生上良いような気がする。
『で、DPを5,000振り込んであるから』
「ありがとう」
これで、9,720DPになった。
ジャポニカ米やラーメン等も手に入って嬉しい! 貰い過ぎな気がするけど!
その後、ファンをスズメバチが殺した事を話した。
「奥さんを愛していたのは解るけれど、スズメバチの大群に魔法も使わずに普通に斬りかかるなんて、何を考えていたんだろう?」
『何だろうね? 逃げたらその程度の愛だと思われる事を危惧したとか?』
でも、スズメバチにやられたら、仇は討てない訳だよね?
あれ? サクリムを直接殺したのはスズメバチだから、スズメバチが仇で良いのかな?
いや、でも、サクリムを殺したスズメバチの殆どは、ピードに焼き殺されたんだった。
まあ、私が一番の仇だよね。
「私を殺したいなら、スズメバチ退治に命をかけている場合じゃないと思うんだけど。日中に来れば、外に居るのに……」
『そうだけどね。頭に血が上って判断力が低下していたんじゃない?』
「そっか。視野が狭まっていたのか」
『それより、ドンフウを生かしておいて良かったの?』
「……ダンジョンの外に居る時に殺しに来たら、ちゃんと殺すよ」
なるべく殺したくないから、諦めてくれれば良いのに。
◇ヒトリ島・30日目◇
そして、翌日。
「殺してやるぜ! 邪神ー!」
ダンジョンの外に出ている時に、ドンフウがやって来た。
私を守る為に、マツとカシが前に出る。
「正々堂々、勝負しろー!」
レベル差が三十以上あるのに、正々堂々と言われても……。
そもそも、邪神が正々堂々勝負すると思うの?
「お前等が居なかったら、ファンもサクリムも死なずに済んだんだ!」
ドンフウはそう怒鳴りながら、斧でマツに攻撃した。
カシに身体強化魔法をかけられたマツは、それを辛うじて避ける。
カチカチ
昨日、ファンがスズメバチが居る事を大声で知らせていたら、もしかしたら、対処出来たかも知れない。
或いは、スズメバチを恐れて、仇打ちを諦めたかも知れない。
しかし、スズメバチの存在を知る事が出来なかったドンフウは、警告に気付かなかった。
ドンフウを吸収した事でDPは3,900増えて、13,620になった。
「じゃあ、私、罠増やすから。二人は釣りしていて」
「おう」
私は、ボス戦部屋に設置したスパイクの罠を回収し、其処にスパイク(毒付き)の罠(1,600DP)を設置した。
DPは、まだ10,420ある。
落とし穴の外周に沿って、更に三つずつ交換(1,100DP)して設置し、先程回収した物も設置した。
通路から見て左側から落とし穴の外周に沿って、スパイクの罠・スパイクの罠・スパイク(毒付き)の罠・スパイクの罠・スパイクの罠と設置されている。外周で罠が設置されていないのは、通路だけ。
これで、3,820DPとなった。
後は……。落とし穴の底にも仕掛けようか? それとも、他の場所にしようか?
悩んだ末に、落とし穴の底にはパラポネラを入れた。
「それでね。他にどんな罠を何処に仕掛けようかと思って……」
私は、水海に相談する。
『そうだね~? ……その島、ヘビは居ないの?』
「居ないみたいだね」
『そっか。爬虫類系苦手な女性も多いからね~。後は幽霊とか』
そこで、水海は横を見た。どうやら、今日は誰かとコールが繋がっているらしい。
『ハードモードって、モンスターメーカーは無いの?』
「モンスターメーカー?」
何だ、それは?
『モンスターを造る魔導具なんだけどね。召喚リストに無くてもこれで造れるんだよ』
「何それ、便利!」
『モンスターの氾濫って、これで起こせるらしいよ』
「マジか」
『召喚との大きな違いは、死体が残らない・復活させられない・自我が無いって所かな?』
「へ~。で、幾らするの?」
どうせ、高いんだろう。
『3,000DPからとなっております』
それなら、交換出来るな。
交換リストを『モンスターメーカー』・『4,000DP未満』で検索してみると、幾つかヒットした。
その中に、ファントムメーカーという物が在った。
ファントムって、召喚しても肉体って無いよね? 復活するのかな?
他のメーカーにも心惹かれたが、兎や小鳥が苦手な聖剣使いは居なさそうだけれど・幽霊系が苦手な人は居る可能性が高いと思って、それを交換する事に決めた。
ボス戦部屋に移動し、隅にファントムメーカーを設置する。
使い方は……先ず、容姿を設定するのか。
容姿を設定したら、作製頻度の設定。手動にも出来るらしい。
通常、ファントム召喚には30DP必要だそうだが、メーカーでは20DPが消費される。ファントムメーカーが、召喚100回分なので、ちょっと後悔。
100体以上も配置する場所が無いよ。
「ねえ、水海?」
私は、ふとある事を思い着いた。
『何?』
「ユティ神の肖像画か何か無い?」
『え? 何で?』
「いや、ファントムのモデルにしようと思って」
果たして、ユティ神そっくりのファントムに攻撃出来るかな?
「水海? 引いた?」
返事が無いので、引かれたかと心配する。
『いや。感心してた。性格悪くなったね』
「それは褒めてるの?」
『うん』
性格悪くなって褒められるとか、改めてもう人間じゃないんだな、私達。
『今持っていないから、明日ね』
「うん」
しかし、敵の方が早かったので間に合う事は無かった。
◆所持DP◆
880P
◆覚えた魔法(現在Lv8)◆
Lv1:浄化・着火・散水 Lv2:土掘り・潜水・衣類乾燥
Lv3:鑑定・耕作 Lv5:水中呼吸
◆所持品(一部)◆
懐中電灯・ローブ・オリハルコンのナイフ
【小屋】
シャベル・草刈り鎌・釣竿・餌・バケツ・タオル・タモ・盆ザル
【ボス戦部屋】
ファントムメーカー
【マツの部屋】
解体ナイフセット・ミスリルの胸当て・ミスリルの大剣
寝袋・マット・保温シート・電池式ランタン・米焼酎・粟焼酎・コップ
【カシの部屋】
樫の杖・ローブ
寝袋・マット・保温シート・米焼酎・粟焼酎・コップ
【多目的部屋】
テーブルセット(椅子四脚)・瓶(塩漬けの梅)
【ペット部屋】
猫用ベッド四つ・餌箱
【コドクの部屋】
寝袋・マット・保温シート・ラグ
ミニ七輪・オガ炭・電子レンジ(魔力で動く)・小型冷蔵庫(魔石で動く)
包丁・まな板・小型の鍋・小型のフライパン・お玉・小型の土鍋・卓上コンロ(魔力で動く)
食器セット(三人分)・ボウル・ピッチャー(飲料水入り)
塩・醤油・食用油・バター・味醂・砂糖・料理酒・酢・味噌(だし入り)
カラーボックス・ハサミ・ダイビングマスク
◆眷族(下記以外の虫は省略)◆
スズメバチ(群):眷族になった事で毒がパワーアップしている。
パラポネラ(群):眷族になった事で、毒がパワーアップしている。
キラーホーネット:スズメバチ型モンスター。幼児大。
コドク:眷族になった事で、メスは毎日卵を産むようになった。
ローグゴブリン:モンスター化したゴブリン人。
ローグオーク:モンスター化したオーク人。
ローグオーガ:モンスター化したオーガ人。
◆食料リスト(一部省略)◆
魚(塩焼き・干し魚・刺身・バター焼き・煮付け)
貝(生・バター醤油焼き)・蟹(茹で蟹)
肉(牛・豚・鶏)(ステーキ・串焼き)
コドクの卵(生・固茹で・卵焼き)
蕪(甘酢漬け)・じゃが芋・にんにく・梅・ビワ・小豆
ご飯・ラーメン・うどん・パスタ・パン
ワカメ(酢の物・味噌汁)
チョコ・ジャム




