3 再会した幼馴染
「ひ、久ぶりね」
「ああ、愛華こそ元気だった?」
「ええ」
高校の卒業式以来の再会だった。積もる話はたくさんあるはずだが、これまでのわだかまりから僕らはぎこちない会話を続けた。
「ちょっと、失礼」
愛華が席を立った。
すると、合コンに来ていた他の女子メンバーが僕の席に寄ってきた。
「ええと、鈴木君だったよね」
「はい」
「西野さんとはお知り合い?」
「ええ、まあ……。愛華とは昔からの付き合いで……」
女子からキャーという嬌声が上がる。
「西野さんのことを愛華って呼び捨てにするような関係なんだ!」
「もしかして、西野さんの彼氏?」
「いえ。ただの幼馴染です」
「付き合いは長いんでしょ?」
「幼稚園から高校まで一緒でした」
「なら、西野さんの彼氏のこと知っている?」
ズキンと心が痛んだ。
(彼氏? 愛華はあの時好きだと言っていた人と付き合っているのだろうか?)
「知りません。」
「そうか幼馴染も知らないのか……。私、西野さんと同じサークルなんだけど、西野さんって、すごくモテて、何度も告白とかされているの」
あまり聞きたくない話だった。
僕は胸が息苦しくなった。
「でも西野さんは、それを全部断った上、こういう合コンにも自分から参加することがないのよ。訊くと、好きな人がいるからと言うんだけど、誰かと付き合っている様子がないし、なんか謎なのよね」
「そうですか」
「だから幼馴染の君なら知っているかと思って」
「すみません力になれません」
「でも、最近小島先輩の西野さんに対するアタックがすごいよね」
「そうそう」
「西野さんもまんざらではないみたいだし」
「悔しいけどお似合いの二人よね」
「あら何の話かしら」
愛華が化粧室から戻ってきた。
「いや、別に。彼がニッシーの幼馴染だったっていう話をしていたの」
「そうよ、家も近くて高校まで一緒だったの」
「もしかして彼はニッシーの元彼?」
「ヒロミ!!」
愛華が本気で怒った顔をした。
「ごめん、ごめん。冗談だよ、じゃあね」
愛華が席に着くと他の女子も自分たちの席に戻った。
「まさか、ここで再会するなんてね」
愛華がため息交じりに言った。
そして僕の方をキッとした目で見た。
「私、ゆうくんに言いたかったことがあるの」
「うん」
「高3の春から、どうして私の連絡に返事をしてくれなくなったの」
「それは……」
愛華に好きな人がいるからだとは言えなかった。
「大学受験に集中したかったからだよ」
「なら、ちゃんとそう言ってくれればよかったじゃない。私だって受験生だったんだよ。立場は同じだよ。ゆうくんの勉強の邪魔なんてするつもりなんてなかったのに」
「ごめん」
「そのことはもういいけど、じゃあ、どうして大学に合格した後も連絡をくれなくなったの?」
「バイトとかで忙しかったから」
「私達の関係ってそんなものだったの。幼稚園の時からずっと家族みたいにしていたじゃない」
「ごめん」
愛華は腕組みして、僕を責めるような目で見た。
「はぁ~」
急にため息をつき、組んでいた腕を解いた。
「もういいわ。本当はゆうくんの気持ちは分かっていた。好きな人ができたから私とは距離を置きたかったんだよね。私がいつもゆうくんの傍にいるのが邪魔だっただよね。逆の立場で考えたら当然だよね。ゆうくんがその好きな人に告白しても、彼女から見たら二股かけられているような感じになるもんね。だから私もゆうくんにできるだけ連絡しないようにしていたの」
僕はなんと返していいのか分からなかった。完全な誤解だ。しかも僕が距離を置いたのは、愛華のように相手のためを思ってではなく単に嫉妬心で苦しくなって逃げただけだ。
僕が固まっていると幹事の河野が立ち上がった。
「ええと、そろそろお開きとなります。この後、カラオケボックスで二次会をやりたいと思います。参加する人は手を上げて」
「愛華はカラオケに行く?」
「私はパス」
「僕もだ」
結局、僕と愛華を除いた全員がカラオケに行くことになった。
会計を済ませて店を出ると、河野が僕の傍に寄ってきて囁いた。
「二人で別の世界を作っていたぞ。彼女をお持ち帰りか」
「そんなんじゃないよ」
「照れるなよ。いいからこれを持ってゆけ」
「なんだよ」
見ると避妊具だった。
「急な補欠要員だったから用意していなかったろ」
「馬鹿言うな! こんなものいらない」
「何を言っているんだ。俺達まだ大学1年生だろ。子どもの養育なんてできないぞ。それに初回から中出したら、彼女ドン引きするぞ」
「何を言っている」
「どうしたの男二人でこそこそと話しして」
「いや、何でもない」
河野は僕にそれを3個も握らせた。
「俺のことは心配するな、箱買いしたから装備にはまだ余裕がある」
急に河野は大きな声で言った。
「戦争は兵站を制したものが勝利する。では健闘を祈る。武運を我が友よ!」
「何の話?」
「俺達が今ハマっているオンラインの戦略ゲームの話だ」
「なんだ、ゲームの話か」
河野はふふふふふという意味不明な笑いと僕だけに見えるように出したサムズアップを残して、みんなとカラオケに行った。
さっきまで合コンをしていた店の前には愛華と僕だけが残された。
「ねぇ、この後、まだ時間ある?」
愛華は少し上目遣いに僕のことを見て言った。
「あるけど」
「なら、すこし付き合って。相談したいことがあるの」
「相談って?」
「恋愛の相談」
僕は絶句した。今も未練たっぷりで思いを捨てきれない初恋の人の恋愛相談を聞かされるのかと思うと気が重かった。だが、愛華が誰とどういう恋愛をしているかを知りたいという気持ちの方が勝った。
「うん。いいよ」
僕らは、近くのカフェに入った。
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