7. 新米賢者と先輩賢者の弟子たち
――しばらく先輩賢者たちと話し込んだ後。
「終わりましたか?ステラお姉様ーーーっ!」
そう大きな声を出して走って来るのはミリーである。そして、勢いよく私に抱き着く。
「待ちくたびれました!この時を待っていましたよ!長かったです!お姉様!」
それは私の台詞だ。いや、勘違いされてもらうと困るので言っておくと、「長かった」の部分ね。それ以外の言葉は微塵も私は思ってないです。
「……相変わらず、元気だね」
「はい!お姉様のミリーはいつも元気です!」
「ミリーさんは何をなさっておりますの!?」エルナも登場である。
「いいじゃないですか!減るもんじゃなしにー」
ミリーは私の頬に自分の頬をくっ付けてスリスリしている。まぁ、美少女にこんなことされるのは別に悪くはないけどね。
「まぁ、エルナ様にはできませんよね!こんなこと!」
「何をおっしゃっていますの!?私だってお姉様と一緒にお風呂だって入っておりますのよ?まぁ、お城で同棲しているので当たり前のことですわね」
いや、エルナ。対抗してそんなこと言わなくていいでしょ。
「なっ!そんなうらやまけしからんことを!……お姉様!私とも一緒に入りましょう!洗いっこしましょう!そして、結婚しましょう!」
ほら、やっぱりこの流れ……
「……怖い」
「そんなぁぁぁあぁぁぁ!……無慈悲です!ステラお姉様!」
「でもでもー、私たちも負けてないもんねー?リリア」
え?ルルアまで対抗する?まぁ、リリアは止めてくれるよね?
「はい。私たちは朝のおはようから夜のおやすみまで、それはもうあんなことやこんなことまでしております」
リリア!裏切ったね。私を裏切ったね?そっち側だったのか!というか、着替えのお手伝いしてくれたり、髪整えてくれたり、メイクしてくれたり、お茶入れてくれたりってことだよね?真顔で誤解のある言い方やめて欲しいのだけど……
「……ったく、どいつもこいつもうるせーな!お前が新しい賢者か?」
そう言って近づいて来たのは純白の髪をサイドテールにした小麦色の肌の女である。山妖種だろう。そうするとコルネリウスさんの関係者ということになる。身長は低めで私と同じくらいである。
「……はい。エステル……」
「あぁん?何だって?もっとはっきり喋れよな!賢者なんだからもっと堂々としろよ!」
「エステル……サビドゥリア……です」
「まぁ、いいけどよ!うちは天才鍛冶師のコルネリア・ヴィーラントだ!あ、親父の娘な。弟子でもあるけどな!」
そういって彼女は白い歯を見せて笑みを浮かべる。
「この馬鹿野郎!」コルネリウスさんの怒号が響き渡る。「賢者に向かって何だその態度は!22にもなってそんなこともわからねぇのか!この馬鹿娘がぁ!」
「あ……いや、お気になさらず……大丈夫です」
「エステルもこう言ってるけどな!バカ親父!」
「親に向かって馬鹿だとぉ?もういっぺん言ってみろ!」
「……コルネリウスさぁーん?コルネリアちゃーん?親子喧嘩は後にしてくださいねぇ?それとも私がブレンドしたよ~く眠れるお茶でも飲みますかぁ?」
フィリーネさん、怖い。聖女のような笑顔なのに怖すぎます。賢者の中で怒らせたら一番怖いのはフィリーネさんだよね?そうだよね?気を付けよう。
ほら、コルネリウスさんもコルネリアさんもシュンとなっているけど?
「場所を考えてくださいね?」
「あははははっ、マジウケる~!コルネ、また怒られてやんの~♪」
新キャラ登場だ。ギャルみたいな雰囲気で、コウモリのような小さな翼と宝石のような赤い瞳の魔人の女性である。スタイルも良く、桃色のツインテ、メイクも派手で目の下、頬の上部に星やハートのペイントがある。
エレオノーラさんの関係者かな?
「……エステル……サビドゥリアです。……よろしく……お願いします」
「男のアレじゃあるまいし~、そんなに固くならないでよね~!」
何を言っているんだ?この人……
「あ、あたし、シャルロッテ・ヴィヴィ・グラナティスね~!ロッティって呼んでいいよ~。エレオノーラせんせーの弟子やってまーす☆彡」
いや、横ピースされてもね。どう反応すればいいんだ?……というか、エレオノーラさんの弟子って!キャラ濃すぎでしょ。
「あ、エステル」コルネリアさんがジト目になっている。「そいつに近づかないほうがいいぞ」
「え~、冷たい~。コルネ、そんなこと言うんだ~。あたし、コルネの弱点知ってるんだけどな~。いいのかな~?」
「は?うちに弱点なんてねぇし!」
「じゃあ」
そう言った彼女は空間魔術を起動し、中から怪しげな魔導具?を取り出す。
「これ、あたしの新作なんだけど~、コルネも使ってみ~、マジ飛ぶから~!」
「ななな、何やってんだ!お前、こんなところでそんなもん出すな!バカ!」
コルネリアさん、すごく顔真っ赤になっているけど……
「アルベルトにはこれかな~♪」
「ぼぼっ、僕まで、まま、巻き込まないでいただきたいですね、はい」
あ、これはあれだな。大人の魔導具ってやつだね……
エレオノーラさんの弟子が何をやっている?と言いたいところだが、確かに学問や技術の発展や普及という意味ではこっちの方向にも進むってことだよね。地球でも印刷技術やビデオ規格、インターネットの動画配信などはそっちの分野で技術革新があって、一般の分野でも恩恵に与れるようになったわけだし、まぁ、否定はしないよ。否定はね。
「シャルロッテさんは何をやっておりますの!?破廉恥ですわ!」
「ぐへへ、お姉様との……」
はい、ミリーはそこまでにしようか。完全にそれはアウトです。
「おい、ロッティ!こんなところでいったい何やってんだ!この馬鹿弟子がーーーっ!」
あー、エレオノーラさんのげんこつがロッティさんの頭にぃ。
「いったぁーーーい!何するんですか~!師匠~!」
「お前という弟子はいったい何を考えてんのさ!技術は一流なのに……はぁ」
エレオノーラさんも大変ですね。
「……ロッティ~ちゃ~ん。まずはそこに正座しましょ~か~?」
出た!フィリーネさん!
「……はい」
あ、流石のロッティさんも素直に従っている。やっぱりフィリーネさん最強説だね。
「10日間眠り続けるお茶と~、すっご~く不味くて臭いお茶と、1日痺れて動けなくなるお茶と~、どれにしましょうか~」
こっ、怖い。それ、どれもヤバいやつだよね?そうだよね?
「うぅ、ごめんなざいぃぃぃ〜〜〜〜っ!!!」
あ、ロッティさん泣き始めた。
「まぁ、それくらいにしておけ。フィリーネ」
ロッティさんに助け舟を出したのはまさかのブルーノさん。
「そやつが作っているものは、騎士団の遠征で若い者たちの役に立っていないわけではないからな」
「そういうことではありません。ブルーノさんは少し黙っていてくださいね~」
「……はぁ」
え、ブルーノさん溜息だけ?やっぱりフィリーネさん最強説は正しかったか!
いや、でも、確かにね。ブルーノさんの意見にも一理あるし、そもそも、アレに使っている素材は何気にすごいのでは?素材学的に貴重なものなのでは?うん、勘違いはしないでね。私はアレそのものには興味ないからね。あくまでも素材だよ?
というわけで、ロッティさんにとっては地獄のフィリーネさんのお説教が始まるのでした。そして、忘れていたけど、コルネリアさん。まだ顔真っ赤だよね。
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