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42. 理の魔女と星降る夜のトッカータ

 ――お城にある私の執務室。

 蓄音機が完成してから数日後。この日は蓄音機を使ってみんなで遊ぶことになった。

 みんなとは言っても、今私の執務室にいるのは、ルルアとリリア、ユーリアさんのいつものメンバーに加え、エルナ、フローラちゃん、そして何故かミリーである。

 そして、ミリーがいると言うことは……

「お姉様の声を記憶できる魔導具!これは素晴らしいです!ステラお姉様!……結婚しよう!って言ってください!永久保存版にしますので!」

 まぁ、こうなるよね。これはミリーに知られてはいけない魔導具だった。わかっていたのに、また危機管理を怠ってしまった。

「……言わない。……絶対に」

「また、また~、照れちゃって!ステラお姉様は私のこと大好きじゃないですか!」

「あなたはいつまでそんな馬鹿なことを言い続けるつもりですの?」

「そんなの永遠に決まってるじゃないですか!エルナ様!」

「まぁ、あなたの頭を治せる薬なんてこの世にありませんわよね……」

「でも、私はステラお姉様の声を自分の頭に記憶しているので蓄音機は別になくても大丈夫です!」

「……怖い!」

「そんなぁぁぁあぁぁぁ!」

「……ちゃんと記憶できた……かな?」

「お、お姉様!記憶するなら記憶すると言ってくださいませ!いったいどこから録音していましたの!?」

 私の「……言わない。……絶対に」の後からである。

 今回は実験なので短めに録音したのだ。表面に塗っているのは金属系のスライムを加工したものなので、再度魔力を流して塗り直すことで再利用もできるからね。便利だよね。

「……再生してみる」

 私は再生機能に切り替えて魔導具を起動する。

「〈 また、また~、照れちゃって!ステラお姉様は私のこと大好きじゃないですか! 〉」

「〈 あなたはいつまでそんな馬鹿なことを言い続けるつもりですの? 〉」

「〈 そんなの永遠に決まってるじゃないですか!エルナ様! 〉」

「〈 まぁ、あなたの頭を治せる薬なんてこの世にありませんわよね…… 〉」

「〈 でも、私はステラお姉様の声を自分の頭に記憶しているので蓄音機は別になくても大丈夫です! 〉」

「〈 ……怖い! 〉」

「〈 そんなぁぁぁあぁぁぁ! 〉」

「〈 ……ちゃんと記憶…… 〉」

 少し金属質で、くぐもったようなノイズ混じりの音。だが、しっかりと蓄音機としては機能しているようだ。

「あははは!『そんなぁぁぁあぁぁぁ!』だって!おもしろ~い!」

 ルルアが楽しそうに笑っている。ツボに入ったのだろうか……

「姉様の言う通り、魔導具から先ほどの会話が聞こえるというのは面白いですね。何だか不思議な感じです」

「確かに面白いのであります~!楽しいのであります~!」

「……凄い。ステラお姉様、これで音楽も聞けたりするの?」

 フローラちゃんは音楽にも興味があるのかな?

「……うん、……記憶させれば聞ける」

「……いつでも、音楽聞きながら本が読めそう」

 あ、そういうことね。まぁ、フローラちゃんは本が中心だからそれはそうか。

「それにしても魔導具を通して聞いてもあなたは間抜けな声なのですわね、ミリーさん」

「エルナ様は綺麗なお声でしたよ!」

「まっ、魔導具が喋っているのですわよ!……べっ、別にそんなこと言われても嬉しくありませんわ!」

「――騒がしいな。何をしている」

 そう言いながら執務室に入ってきたのはテオバルト殿下である。

 ふふ、丁度いいな。テオバルト殿下の声も録音して遊んでやるか。

「あぁ、蓄音機というやつか。……それで?満足できるものはできたのか?」

「……うん。……蓄音機として……特に問題ない」

「そうか。まぁ、話を聞く限りでは貴族たちがすぐに飛びつく娯楽品になるだろうな」

「……うん。……だといいけど」

「確かに貴族たちに金を使わせれば経済が回るからな。そこまで考えているとは流石だ。洗濯機もメイドたちが喜んでいたし、缶詰も今後、遠征などに役立つだろう。薬や魔導銃に続いて、またいろいろこの国に与えてくれたことに感謝する」

「……それが仕事だから」

「やはり、お前という人間は興味深い。見ていると飽きないし、ずっと見ていたくなるな」

 なっ、急に何を言い出すの!?この王子様は!「ずっと見ていたくなるな」なんてそんな目で見られたら……もういい!反撃だ!

「〈 あぁ、蓄音機というやつか。……それで?満足できるものはできたのか? 〉」

「〈 ……うん。……蓄音機として……特に問題ない 〉」

「〈 そうか。まぁ、話を聞く限りでは貴族たちがすぐに飛びつく娯楽品になるだろうな 〉」

「〈 ……うん。……だといいけど 〉」

「〈 確かに貴族たちに金を使わせれば経済が回るからな。そこまで考えているとは流石だ。洗濯機もメイドたちが喜んでいたし、缶詰も今後、遠征などに役立つだろう。薬や魔導銃に続いて、またいろいろこの国に与えてくれたことに感謝する 〉」

「〈 ……それが仕事だから 〉」

「〈 やはり、お前という人間は興味深い。見ていると飽きないし、ずっと見ていたくなるな 〉」

   これでどうだ?恥ずかしい台詞を録音されていたなんて耐えられないよね、殿下。

「……なるほど。ちゃんと会話が記憶されているようだな。面白い。……まぁ、記憶していることは気づいていたが、俺の声を記憶して何をするつもりだったか教えてもらおうか、エステル」

 いや、まぁ、蓄音機が動いているもんね。殿下なら流石に気付くか……

「聞いているのか?エステル。……そんなに俺の声が聞きたいなら、いつでも耳元で囁いてやる」

 ななな、何を言っているの?この人。もう、その顔でそういうことを言うのは反則でしょ。……やめて欲しいのだけど。

「お兄様!ステラお姉様をからかって遊ぶのはやめてくださいませ!」

「……兄様、嫌い」

 エルナとフローラちゃんが援護射撃をしてくれたのである。でも、フローラちゃん。そこまで言わなくていいんだよ?

「俺は遊んでいるつもりはないけどな。真面目な話をしていただけだ。……まぁいい。とにかく、ここ最近、エステルのおかげで新しいものが次々と作られてきた。少しずつではあるが、人々の生活にも取り入れられていくだろう」

 露骨に会話を変えたよね。見たか、殿下!これが女子同盟の力なんだよ。流石の殿下も退かざるを得なかっただろう。

「……何をそんなに楽しそうにしている。変なことを言ったつもりはない」

「……何でもない」

「まぁ、確かにこれからまたお前が何をするのか楽しみではあるな」

「……別に私は……頼まれたから……それに応えただけ」

「……そうか。それなら、これからも頼む。この国ために力を尽くしてくれ、まぁ、程々にな」

 こうして、短期間でいろんなものを私が設計し、エレオノーラさんやコルネリウスさんが作ってくれた。今後も続けてはいくのだが、ひとつの区切りが洗濯機や缶詰、蓄音機だ。これは私たちの星降る夜のトッカータだ――


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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