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37. 理の魔女とメイドたち

 ――お城の洗濯場。

 それからしばらくして洗濯機が完成する。

 この日、エレオノーラさんにお願いしてお城の洗濯場に設置してもらったところだ。そして、フィリーネさんにお願いした洗剤も既に完成している。

 私たちは事前に試作機を使って動作確認や洗剤の効果を確認済みであった。適切な洗剤の分量などの確認も済んでおり、今日はお城のメイドさんたちに使ってもらおうということで集まってもらったのだ。

「――よし!これで3台目も設置完了だ!」

 エレオノーラさんにはまず3台お願いしていたのだ。

「……じゃあ、何か洗ってみようか。一応試作機ではちゃんと動いていたから問題ないと思うけどね」

「まずは……ベッドシーツとかに……しますか?」

「いいね!それでやってみようか!」

 私とエレオノーラさんの会話を聞いていたリリアがベッドシーツを持ってくる。

「……ありがとう、リリア。……まずは……洗濯機の槽に洗濯物を入れる」

 リリアが指示に従ってベッドシーツを洗濯機の中に入れる。

「……そして、専用の洗剤を……使ってね」

 私は小瓶に入った洗剤をメイドさんたちに見せた後、それをリリアに渡す。

「……これを投入口に……注ぎ入れ、……次に……この青い給水レバー……を手前に倒す」

 洗剤を入れ終えたリリアが青い給水レバーを手前に倒す。すると、洗濯機の上部から水が流れ始め槽に溜まっていく。まぁ、ここからは少し時間はかかるよね――

 しばらくして水が良い感じに溜まる。

「……水が溜まったら……青い給水レバーを……奥に倒し、今度は緑色の起動レバーを……手前に倒して……洗い工程開始」

 リリアが指示通りにレバーを操作する。すると、給水が止まり、ガタゴト音を立てて槽が左右交互にまわり始めるのであった。試作機の時も思ったけど、完璧だね。まさに洗濯機である。まぁ、洗濯機なんだけどね。

 レバーを手前に倒した時に砂時計も回転する仕組みだ。ただし、砂時計が落ち切っても自動では止まらないので、手動で緑色の起動レバーを奥に倒して止める仕組みである。

 また、止める時は砂時計が返らないようにしてもらっている。これにより、関係ない時に砂時計が返って落ち始めるということがないようにしているのだ。

 ちなみにこの仕組みは自転車のペダルや、巻き上げ機と同じラチェット機構だ。手前に倒す時だけ爪が噛み合って回り、奥に倒す時は空回りするから勝手に返らない。

「……緑の砂時計が落ち切ったら、……手動で緑色の起動レバーを……奥に倒して……止めるので、……それまで待つ」

「……まぁ、砂時計周りの調整は少しだけ難しかったけど、良い感じになってよかったよな」

「……そうですね。……砂時計がないと……使う人が困るので……感謝です」

「まぁ、温度管理の魔導具や遠心分離機、そして、この洗濯機を作って、魔導線にもいろんな使い方があるんだなと思い知らされたよ。私もかなりわかってきたからね。いろいろ思いついたから、それを試してみるよ」

「……楽しみに……しています」

「まぁ、いつかエステルの度肝を抜いてやるさ」

 まぁ、既に魔導コアと魔導線で度肝は抜かれているんだけどね。この広い異世界でもエレオノーラさんは間違いなく最高の魔導具師であると私は思っている。

 そんなエレオノーラさんの弟子であるロッティさんにもある意味度肝を抜かれているが……

 私たちはそんな雑談をしながら砂時計が落ち切るまで待つ――

 およそ10分~15分後、緑の砂時計が落ち切ったのを確認して説明を再開する。

「……緑の砂時計が落ち切ったことを確認。……緑色のレバーを奥に倒して、……赤い排水レバーを手前に……倒す」

 リリアが指示通りに操作すると排水が開始される。しばらくして、槽の水が排水される。

「……全部排水したら、……赤いレバーを奥に倒して……青いレバーを手前に倒し……再度給水」

 すすぎのための給水だ。水が溜まるまでしばらく待つ。

「……水が溜まったら、……青いレバーを奥に倒して止め、……今度は白いレバーを……手前に倒して、……そのまま緑色の起動レバーを手前に倒し、すすぎ工程開始。……白い砂時計が……落ち切るまで待つ」

 この時は先程とは別の白い砂時計が半回転する仕組みだ。すすぎの時間を見るための砂時計である。こちらも止める時には返らない仕組みになっている。今度は2~3分程度だ――

「……白い砂時計が落ちたら、……白いレバーを奥に倒し、……赤いレバーを手前に倒して……排水開始」

 そして、排水されるのを待つ――

「……黄色い中間脱水用の……レバーを手前に倒し、……緑色の起動レバーを……手前に倒して……中間脱水開始。……今度は……黄色い砂時計が……落ちるのを待つ」

 黄色いレバーを手前に倒した時に左右に回すトリガーとなる外側のでっぱりを収納する仕組みも完璧に動いている。黄色いレバーを手前に倒したまま、緑色の起動レバーを手前に倒すと、槽が一方向に回り出し、中間脱水の開始だ。こちらは1~2分程度である。

「……黄色い砂時計が……落ち切ったら、……再度、……すすぎの工程。……すすぎは2回必要。……つまり、……1回目の黄色い砂時計が……落ち切ったら、……黄色いレバーと……赤いレバーを奥に倒し、……青いレバーで給水。……その後は白いレバーと……緑のレバーで……すすぎ開始する」

 2回目のすすぎの後は最後の脱水に入るので、またレバーの操作は変わる。そのため、この後、まずは2回目のすすぎを実施するのであった――

 すすぎ工程が完了したら、最終仕上げだ。

「……2回目の白い砂時計が落ち切ったら……赤いレバーを……手前に倒して……排水」

 槽の水が排水されるのを待つ――

「……全部排水できたら、……紫色のレバーを……手前に倒し、……緑色の起動レバーを手前に倒し、……仕上げの脱水開始。……紫色の砂時計が落ち切るのを待つ」

 ここからも6分~7分程度、紫の砂時計が落ちるまで待たなくてはならない。まぁ、当然だけど。雑談しながら待つしかないよね――

 ちなみにレバーは機能を統一して減らし、砂時計だけが変わる仕組みもできたのだが、レバーと砂時計の色が一致していた方が視覚的にもわかりやすいのでそれぞれわけている。途中で担当が交代した時もわかりやすい。まぁ、今は「何回目のすすぎか」については引き継ぎが必要だが……

 まぁ、手数多いけど、外箱の左側に給水用の青、排水用の赤、起動用の緑のレバーがあり、外箱の右側に左からすすぎ用の白、中間脱水用の黄、仕上げ脱水用の紫と並んでいるので手順も間違えにくいと思う。

 簡単に言えば、青、緑のみ、赤、青、白と緑、赤、黄色と緑、青、白と緑、赤、紫と緑という順番で操作すればいいだけだ。あとは水を入れるタイミングで赤いレバーを奥に押し倒す。これだけ覚えればいい。

 しばらくして、砂時計が落ち切ったのを確認して説明を再開する。

「……紫色の砂時計が落ち切ったら、……すべてのレバーを……奥に倒して、……洗濯機を止める。……まぁ、緑色のレバーだけでいいけど……次使う時のために……すべて戻しておくと……いいかな。……あとは、……洗濯物を取り出して……干すだけ」

 リリアが洗濯物を洗濯機から取り出し、それをルルアと協力して物干し台に掛ける。ベッドシーツは太陽の光を浴びて白く輝き、汚れがしっかり落ちているのが見て取れる。

 メイドさんたちもそれを見て大喜びだ。

「本当に綺麗になっているわ!洗濯物は大変だけど、こんなに楽になるなんて!……エステル様のおかげですね!」

「洗濯機?っていう魔導具も何だか面白そう!使ってみるのが楽しみだね!」

「いつも冷たい水で手が赤くなってあかぎれだらけだったのに……」

 そんなメイドさんの声を聞くと、こっちも嬉しくなるよね。実際、洗濯物は大変だしね。少しでも楽になってもらえればいいかなって思う。

 この後は実際にメイドさんたちに使ってもらい、質問などを受けながら過ごした――


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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