32. 理の魔女とサバゲー!?
――遮蔽物や障害物が設置された騎士団第四訓練場。
この日はコルネリアさんに巻き込まれて私はここにいる。
今日はたまたま騎士団第四訓練場が空いていたため、使わせてもらっているのだが、どうしてこうなった?ていうか、これ……あれだよね。どう考えてもサバゲーだよね。
なんか、いつの間にか参加することになっている。
「……どうして私まで巻き込まれておりますの?」
エルナも私と同じように巻き込まれた被害者だ。
いや、エルナだけではなく、ルルア、リリア、ユーリアさん、ミリー、フレデリカさん、ロッティさんも巻き込まれてここにいるのだろう。いや、ミリーは何故かやる気満々である。
「じゃあ、エルナは審判な!」
コルネリアさんも適当である。そもそもエルナに審判ができるのかな?
「どうして私が審判をしなければなりませんの!?」
「撃ち合いたいならそれでもいいけど?」
「そんな野蛮なことしたくありませんわ!」
「いや、どっちだよ!はっきりしろよな!」
「……わかりましたわ!審判をやればいいのですわね?」
「じゃあ、お願い!……エステル、ルルア、リリア、ユーリアチームとうち、ロッティ、ミリー、フレデリカチームで勝負な!」
「あわわ、理の魔女様に銃を向けるなんて不敬なのでは?万死に値するのでは?私には無理ですー!」
「フレデリカさん大丈夫ですよ!ステラお姉様のことは私にお任せください!私がお姉様をスライム塗れにしますので!」
まぁ、ミリーが言うように、物理攻撃を受けると固くなる性質を持つレジストスライムを使った弾をコルネリアさんが作ったのだ。ちなみにレジストスライムは一番柔らかい時でもゲル状の固体だ。それを加工したものを使っている。言ってしまえば、柔らかめのスティッキーウォールボールの小さい版みたいなものである。
コルネリアさんによると、仕組みを簡単に説明するならば、可燃性・可破性のカプセルにレジストスライムを加工したものを詰め、それを弾頭として薬莢にはめている。魔導銃を撃った瞬間にレジストスライムが固くなり、カプセルが燃える、あるいは破れて、レジストスライムの弾が押し出され、銃身を通って放たれる。弾が飛んでいる最中も威力を抑えているため、そこまで圧力がかからず、レジストスライムの弾は柔らかくなり、ターゲットに当たると1度固くはなるが、これも衝撃はほとんどないので、そこまで固くはならず、軽く叩かれた程度の衝撃が伝わるだけなので、服や皮膚などを貫通することはないし、すぐに柔らかくなってペタっと服や皮膚に張り付く仕組みだ。
それを使って模擬戦、まぁ、サバゲーをしようってことで私たちは集められたのだ。
両チームが自分たちの陣地に集まる。
「やるからには勝ちに行くのであります~!」
「そうだよね~!絶対に勝つぞ~!」
「当然です。エステル様に敗北は似合いません。……私と姉様にお任せください。ユーリアさんはエステル様をお守りしつつ、援護射撃をお願いします」
「了解であります~!」
え?この子たちガチなんですけど……
遊びだよね?早く弾に当たって退場しようと思っていたのに……
「……では、始め!」
そんなエルナの声でサバゲー、ではなく模擬戦が始まる。
ルルアとリリアは味方陣地最前線の防護壁に身を隠しながら相手チームに向けてスライム弾を放つ。私とユーリアさんはその少し後ろから援護射撃を始めるのであった。
相手チームもこちらに向かってスライム弾を撃ってくる。
「あわわ、全然当たりませんー!私なんかダメダメですー!」
フレデリカさんは適当に撃ちまくっているようだ。
「おい!こら!無駄に撃つな!もったいねぇだろ!」
「ごごご、ごめんなさいー!」
そんなやり取りが聞こえる。コルネリアさんはやっぱりガチだよね。
しばらくお互いの陣地から牽制程度の撃ち合いが続く――
「……出ます!援護お願いします!」
そう言って防護壁を乗り越えたのはリリアである。ルルアもそれに続く。
「あわわ、コルネリアさん、ルルアちゃんとリリアちゃんが来ましたよ!どどど、どうしましょ~!」
「いいから撃て!わざわざ出て来てくれたんだ!」
「はい~!」
コルネリアさんとフレデリカさんはルルアとリリアの迎撃を開始する。だが、リリアとルルアはそれを悉く避けるのであった。流石は獣人である。身体能力が半端ないよね。
「あわわ~、当たりません~!」
「流石はルルアとリリアだな。……一旦後ろに退くぞ!」
そう言ったコルネリアさんは身を隠しながら前線から退いたようだ。だが……
「――ひゃあ!……当たっちゃいました~!」
フレデリカさんは撤退の時に立ち上がって背を向けて走り出し、その瞬間にリリアのスライム弾が背中に命中したのである。
「フレデリカさん!退場ですわ!」
「おい!フレデリカ!何してんだ!……ちっ、仕方ねぇ」
「ごご、ごめんなさい~!」
「やったね!リリア!流石は――」
そう言いながら満面の笑みを浮かべてリリアのほうを見ながら走っていたルルアであったが、次の瞬間、地面のへばり付いていたスライム弾に足を取られて盛大に転ぶのであった。
「――うわっ!……いたたた~、転んじゃったー、てへっ」
フレデリカさんが外しまくったスライム弾だろうか。ルルアにとってはそれがトラップになったのだ。
「姉様!危ない!」
「――うわぁ!……当たっちゃった!えへへ」
転んだルルアを狙撃したのはロッティさんだ。……というか、何でルルアは嬉しそうなんだ?
「やった~!当たったよ~!コルネ!あたしすごくな~い?」
「はい、ルルアも退場ですわ!そんなところで転ぶんなんて相変わらずですわね!」
「はぁ、またですか。……まぁ、いいでしょう。後は私に任せてください!」
呆れた様子のリリアであったが、その後のリリアは修羅と化す――
「――きゃあっ!……ちょっと、あたしのお尻に当たったんだけど~!ウケる~!」
リリアが敵陣に侵入した後の様子は見えないが、しばらくするとそんな声が聞こえてくる。そして――
「――まずい!……あ、くそっ!……次は負けねぇからな!」
リリアはコルネリアさんも仕留めたようだ。あれ、誰か忘れているような……
「――ひゃん!」
突然の銃声の後、そんな声を上げたのはユーリアさんだ。肩にスライム弾がペタっと張り付いている。
「……撃たれたのであります~」
「ステラお姉様~!隙だらけですよ!」
いつの間にか私たちの陣地に侵入していたミリーである。ホラーである。本当にいつの間に来たの?ミリー。
「……降参……する」
「ダメです!お姉様にはスライム塗れになってもらいます!」
そう言ってミリーは嬉しそうに私に向かって引き金を引く。
スライム弾は私のお腹に命中するのであった。まぁ、当たった衝撃はあるものの、そこまで痛くはない。軽く叩かれた程度である。
「――きゃっ!」
ミリーもまた戻ってきたリリアに撃たれるのであった。
「エステル様、申し訳ございません。……でも、私たちの勝ちですね」
こうして、模擬戦は私たちの勝利で終わったのである。だが――
「――ひやぁあ!……ちょっとコルネリアさん?どうして私まで撃たれなければなりませんの?」
「わりぃ、わりぃ!間違えて引き金引いちまっただけだ」
「そんなわけありませんわ!わざっとですわよね!許しませんわ~!」
まだまだ終わりそうにないよね。
その後、私たちはルール関係なしに撃ち合って結局スライム塗れになるのであった。
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