30. 理の魔女と魔導銃
――ヴィーラント工房。
それから数日後。魔導銃の設計図を作成し終えた私はコルネリウスさんの工房に足を運んでいた。エレオノーラさんにも来てもらっており、これからコルネリウスさんとエレオノーラさんに仕組みを解説するところである。
「おい!3人で何やってんだ?面白そうなことならうちも混ぜろ!バカ親父!」
そんなところに現れたのはコルネリアさんである。
「あぁん!馬鹿娘っ!親に向かって何だその口の利き方は!」
どちらも口が悪い。相変わらずの親子である。
「エステル!うちもいいだろ?……っていうか、この天才コルネリア様がいなきゃ、始まらねぇよな?」
「……じゃあ、コルネリアさんも……どうぞ」
まぁ、想定内である。コルネリアさんなら飛びついてくることなど想定済みだ。なので、設計図は余分に持って来ている。
「うおぉぉぉ!何だこれ!これ作るのか?……うへぇ、かっこいいじゃねぇか!完成したらうちも欲しい!」
いや、想定以上に興味津々である。コルネリアさんはこういうのが好きな人だったかぁ。
「……で、説明してもらってもいい?エステル」
エレオノーラさんは早く仕組みを知りたくて仕方がない様子だ。
「……はい。まず、……私が提案するのは……魔導突撃銃、魔導狙撃銃、魔導拳銃の……3つです。魔導突撃銃は……中距離での戦闘を視野に……汎用性を高く……連射も可能な……仕組み。魔導狙撃銃は……遠距離からの……狙撃に特化した……仕組み。魔導拳銃は……威力を犠牲にしますが……小型で扱いやすく……護身などに使えるような……仕組みにします」
「なるほどなぁ!汎用的なものを1つ作るわけじゃなく、それぞれ使い分けできるようにするわけだな!」
コルネリウスさんも楽しそうである。
「……仕組み自体は共通です。……まずは射手が握る柄の部分です。柄の中に畜魔石を入れます。この畜魔石には魔力をチャージできる仕組みを作ります。ただし、拳銃はこの部分に弾倉をいれるため畜魔石を入れる場所がないので、直接射手の手のひらから魔力を流す仕組みとします。柄の一部に素魔石を使って、手のひらから魔力が内部に流れ込む仕組みが良いと思います。柄の内部に通された魔導線を伝った魔力が引き金の手前まで流れる仕組みにしてほしいです」
「ここでも魔導線が出てくるとはね。流石はエステルだな」
「続いて引き金です。先ほども言ったように普段は引き金の部分で魔導線が物理的に離れているため、魔力はそこで遮断されていますが、射手が引き金を引くと魔導線同士が接触するような仕組みを実現します。これも素魔石を使えば可能だと思います。こうすることで、魔力が一気に薬莢へと流れ込むような仕組みを作れます。そして、普段は魔力が遮断されているので落としたり衝撃を与えたりしても絶対に暴発しない安全な銃を作ることができます」
「安全面もしっかり考えているのは嬢ちゃんらしいな」
「次に弾の仕組みですが、魔力を通さない金属で薬莢というもの、つまりこの図のようなものを作り、その底辺だけ魔力を通す金属を使います。できれば、安全面を考慮し、極力魔力を通す部分を少なくしたいので、平たいキノコの様な形にして、内側から薬莢の底の穴に軸を通す構造が好ましいです。そして、薬莢内側の壁は魔力を通すものでコーティングし、中に魔法陣を描いた紙を円柱状に巻いて入れます。すると、紙が広がり内側の壁にくっつきます。そのまま最後に弾頭をはめます。引き金を引いた時に魔力を通す金属で作った平たいキノコの軸に魔力が流れ、コーティング材を伝って、紙に流れ、インクに伝わって薬莢内で爆発を起こす仕組みが完成します」
「紙とインクなんて古代魔術の仕組みじゃないか!そんなものまで使うとはねぇ」
いろいろ考えたのだが、小さな薬莢に直接魔法陣を刻むなど、さすがのエレオノーラさんも不可能だろうし、できたとしても弾丸のコストが跳ね上がる。仕組みを一番考えた部分ではあるが、古代魔術では専用の紙とインクを使って魔術を発動していたため、それを利用したのだ。こうすることで薬莢に直接刻むよりも遥かに大きな面を使うことができ、魔法陣を書くのが楽になる。
「これで引き金を引いて爆発が起こり、弾頭が押し出され、銃身を通って撃ち出されるという仕組みが完成するはずです。……後は弾倉ですね。撃つたびに次の弾が弾倉から装填される仕組みと、撃った後は薬莢が外に出る仕組みも欲しいです。突撃銃の場合は引き金を引いている限り撃ち続けられる仕組みもこれで作れると思います。……どうでしょうか?作れそうですか?」
「私は問題ないかな。これで大丈夫だと思う」
「まぁ、俺のほうが作業は多いからな!がはははは!」
「親父とうちなら問題ないだろ!なぁ、親父!」
「そうだな!今度もすげぇ手間がかかりそうだが、やってやるしかねぇわな!がはははは!」
「私は部品だけ作って組み立てるのはコルネリウスってことでいいのか?まぁ、最初は調整が必要だと思うから私も同席はするけどさ」
「それで構わねぇ。また面白れぇことになりそうだな。ブルーノ殿の度肝を抜いてやろうじゃねぇか!がはははは!」
「親父!うちの銃も作っていいよな?」
「馬鹿娘!鍛冶師がこんなのを自分用に作って一体何に使うってんだ?がはははは!」
「わかってねぇな!バカ親父!使う使わねぇの問題じゃねぇだろ!こんなかっけぇの使わなくても持っておきたいし、何なら戦闘以外の使い道もうちが考えてやる!」
「考えられるものなら考えてみろ!馬鹿娘!」
「考えてやろうじゃないか!バカ親父!」
「……というわけだが、他に何かあるかな?ないなら私は帰らせてもらうけど……」
「……大丈夫です。……よろしくお願い……します」
「まぁ、任せておきなよ。コルネリウスが失敗しなければちゃんと完成するからさ」
「何を言ってやがる!俺らが失敗するわけねぇだろ!」
「そっちこそ変なもん持ってくんじゃねぇぞ!ロッティにもしっかり伝えておけ!」
「はいはい、それじゃあまたな!これで失礼するよ!」
既に歩き出していたエレオノーラさんはそう言って前を見たまま手だけ振って工房の外に出て行く。
「エステルはもう少しここにいるのか?……てか、少し銃について話そうぜ!」
まぁ、時間はあるからいいけど、コルネリアさんがノリノリ過ぎて怖い。
「なぁ、銃の名前とかうちらで決めていいのか?」
「……別に……構いません」
「……なら、親父!ヴィーラント製突撃型魔導銃アーレント、狙撃型魔導銃ヴァンダーファルケ、魔導拳銃シュヴァルベなんてどうだ?」
「おぉ、なかなか良いネーミングじゃねぇか!がはははは!」
「くぅ~、ヴィーラント製突撃型魔導銃アーレント・コルネリア改バージョンⅡとか作るのが楽しみだぜ!いや、略してアーレント・コルネⅡとかだな!かっこいいだろ?エステル!」
う~ん、なんだろう、この感じ。もしかしたらコルネリアさんはアレかもしれないね。まぁ、瞳を輝かせているコルネリアさんもかわいいけどさ。
「……はい。……かっこいいと思います……?」
「何だ!その反応は!うちは天才だからな!かっこいいに決まってるだろ!」
「……そんなことより、馬鹿娘!早く仕事するぞ!」
「そんなことってなんだ!バカ親父!」
こうして、魔導銃の設計書は無事に届けられたのだが、コルネリアさんの意外な一面を見たのであった。
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