14. 護衛騎士と戦闘メイド!?
――お城にある私の執務室。
フリーデン高等学院での特別講師など、外出も多くなったわけだが、賢者である私にも声が必要だとテオバルト殿下が言い始めてから数日後のことである。
私の護衛はアレクシアさんが団長を務める白凰騎士団の女性騎士が担当してくることになったため、今日は顔合わせなのがあるのだ。
既にテオバルト殿下は私の執務室にいて、客人用のソファに腰かけ、リリアが淹れた紅茶を飲んでいる。
だが、他の賢者には護衛などいないし、私だけなんだよね。
「……何か言いたそうだな。まぁ、護衛の件だろうな。言ったはずだ。何があるかわからないし、お前自身も何をしでかすからからないからな」
つまり、監視ということか?
「勘違いするなよ?別にお前が悪さをするなどとは思っていない。だが、お前が好きなもののことに関しては、少し……いや、だいぶ心配なところがあるからな」
まぁ、殿下が私を信用していないわけではないということは私も知っているけど。
そんな会話をしていた時、ドアをノックする音が聞こえる。それに反応したリリアがドアを開けると2人の女性騎士が入って来る。1人はアレクシアさんだ。
もう1人は栗鼠系獣人族の女性騎士である。ゆるふわローツインテールの赤茶色の髪とモフモフの赤茶色の尻尾、愛くるしい目と緑色の瞳が特徴的である。まぁ、容姿のタイプ的には私やルルア、リリアと同じタイプだ。
またかわいい仲間が増えそうだ。まぁ、かわいいは正義なのでいいけど。そして、モフモフが増える。
でも、なんか、ユニットでも組むのか?この4人で……
「白凰騎士団団長アレクシア・トロイエ、只今参りました!」
相変わらず普段はお堅いイメージのアレクシアさんである。
「エステル様の護衛の任務を預かりました白凰騎士団所属ユーリア・タミアスであります~!」
あ、なるほど「~であります!」とハキハキ言うタイプではなく、かわいらしい声で柔らかく言うタイプのキャラね。というか、ルルアたちのネブラスカでも思ったけど、今度はタミアスって、まんまじゃんね。まぁ、獣人族は家名ではなく、種族名って聞くし、まぁ、気にしないことにしましょう。
「こら!私が紹介したらお前が自己紹介するという手筈であっただろう!」
「ごめんなさいであります~!そうなのでありました~!……20歳。彼氏なし!独身であります~!」
「いい加減にしろ!余計なことは言うな!」
なんだろう、私は漫才を見せられているのだろうか。
「エステル様の護衛という大役、至極光栄の至りであります~!」
「理の魔女様! 申し訳ありません! 普段はとても優秀な騎士なのですが、少々……いえ、だいぶ抜けているところがありまして!ですが、実力に関しては私が保証します!」
まぁ、ただの私の勘だけど、ルルアよりは大丈夫だと思う。そんなことを言ったらルルアがかわいそうだけど。まぁ、ルルアはあれでいいのだ。かわいいので。
そんなことを考えながらルルアを見ていたら、私の視線に気づいたルルアが不思議そうな表情を浮かべる。その隣ではリリアが小さく溜息をついている。
そして、テオバルト殿下、楽しそうにするのはやめてほしい。また、貴様の差し金か?この4人組ユニットをデビューさせるプロデューサー気分か?
「……気にしないで……アレクシアさん。……ユーリアさん……よろしく」
「はいであります〜! エステル様のお命、このユーリア・タミアスが粉骨砕身でお守りするであります〜!」
「アレクシア様、制服にソースか何かの染みが付いております」
リリアが急にそんなことを言い出す。私も気づかなかったが、確かに染みが付いていた。わざわざこんなところで言う必要はないとは思ったが、どこかリリアも楽しそうなので、あえて言っているのだろう。
「なっ、クリーニングに出して今朝戻ってきたばかりの制服だぞ!……あっ、違う!これはお前たちの注意力を試しただけだ!断じて、気づいていなかったわけではない!」
相変わらず残念な人だ。まぁ、そういうところがかわいいというか、馴染みやすい人ではあるけれど……
「ちょっと待ってください。良い染み抜き薬があるので……」
ちなみにその染み抜き薬はフィリーネさんが作っているもので良く落ちるらしい。
「すまない……」
「姉様がいつもメイド服に染み付けますので常備しているのです。お気になさらず……」
あ、それってルルアとアレクシアさんが同類ってことかな?
「いつもありがとう!リリア!でも、こぼしちゃうんだよね~、てへっ」
ルルアは相変わらずルルアである。絶対に反省はしていない。
「姉様!抱きつかないでください」
「また一段と賑やかになったな、エステル」
「……うん」
「まぁ、ユーリアの実力は俺も評価している。護衛としては申し分ないだろう」
「ありがたき幸せなのであります~。殿下にそう言っていただけると、何だか恥ずかしいであります~」
「エステルのことを頼んだぞ」
「はい!であります~」
「……あんまり……頑張りすぎなくていい。……もしもの時も……私は……魔術使えるから」
「それで街を破壊されても困るからな」
何を言っている?私はヴァルデスルーエの時だって壊さないように注意しているが?
「あ、布告式の星降りは見たのであります~。とても美しかったのであります!」
「……ありがとう」
一方でアレクシアさんの制服の染み抜きも終わったようだ。
「ありがとう!リリア。……殿下、理の魔女様、私はこれで失礼いたします!」
そう言って敬礼したアレクシアさんは逃げるようにその場から去っていく。まぁ、アレクシアさんも忙しいのだろう。
「でも、ルルアちゃんとリリアちゃんとも相当強いと聞いたのであります~」
マジか!?そんな話私は知らないけど……
「……そう……なの?」
「メイドさんの中ではトップクラスと聞いているのであります~」
まぁ、確かに狼系の獣人だしな。納得できないわけではないが……
「……じゃあ、何で……メイド……なの?」
「エステル様、お言葉ですが姉様に騎士が務まると思いますか?他の選択肢ならハンターとかだと思いますが、依頼を達成する前に寄り道して森で迷子になる姿しか想像できませんね」
まぁ、確かにルルアはそうだよね。こんなことを思うのはかわいそうだけど。
ちなみにこの世界には魔物狩りなどを仕事にしているハンターがいる。長くなるので、ここで詳しい説明はしないが、この国にはハンター協会という組織があり、フリーデンにも本部があって、アルベルトさんと関係が深い組織でもある。
「私は騎士やハンターになろうと思わなかっただけですね。今のお仕事に満足しておりますし、何より、エステル様担当メイドであることを誇りに思っておりますので」
まぁ、それも本心だろうからありがたいけど、リリアはルルアのことが大好きなのでそれもあるのだろう。
「……殿下も……知っていたの?」
「当然だ。だが、あくまでも彼女たちはメイドだからな。護衛という立場にするわけにもいかないだろう。だから、ユーリアを付けた。それに護衛は多いほうが良い」
「はい。万が一の時は姉様と私も参戦し、エステル様に害をなす愚か者を全力で潰します」
何それ、怖い。いや、頼もしいけどさ。発言が怖いってことね。
「でも、普段はあんな感じの姉様のほうが私より強いですけどね」
「そうなのでありますね~。今度手合わせ願いたいであります~」
「う~ん、そんなことより私はみんなでのんびりお菓子食べたりしたいかな~」
まぁ、ルルアらしいと言えばルルアらしい。
「でありますかぁ……」
ユーリアさんは少し残念そうである。
「……姉様はお仕事をしてください」
そして、ため息をつくリリア。
こうして、ユーリアさんが私の護衛に付き、ルルアとリリアの意外な一面も知ることになった。
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