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11. 女子会とやんちゃな王子

 ――お城の庭園にある東屋。

 今日はミリーが遊びに来たのでエルナ、そしてフローラちゃんの4人で女子会をしている最中だ。と言っても、フローラちゃんはいつも通りほとんど会話には参加せずに本を読んでいる。

 エルナ担当のメイドさんたちが紅茶やお菓子の準備をしてくれるというので、ルルアやリリアは休憩というか、自由時間を過ごしてもらっている。なので、ここにはエルナ担当のメイドさんしかいない。

「あ、聞きましたよ!ステラお姉様!フリーデン高等学院で特別講師をやるんですよね!私はこのためにフリーデン高等学院に合格したのですね!これは運命ですね!結婚しましょう!」

 おい。ミリーの志はそれでいいのか。というか、初めて出会った時に私を守ろうとしてくれたあのミリーはどこに行ってしまったのか……

「……運命では……ない」

「そんなぁぁぁあぁぁぁ!」

「相変わらずあなたは元気……というか、うるさいですわね。格式高いフリーデン高等学院に相応しくありませんわ。あと数日もしたらフリーデン高等学院の生徒になるという自覚はございますの?」

 その台詞も見た目もなんか悪役令嬢っぽいんだけどね。そうは見えないんだよね、エルナ。私が本当のエルナを知っているからだと思うけど。

「何をおっしゃっているのですか、エルナ様!合格発表のとき『お兄様!私、合格しましたわー!』ってテオバルト殿下に飛びついて大泣きしていた人が言っても説得力ゼロですよ!」

 まぁ、どうせテオバルト殿下が無駄にプレッシャーをかけてエルナで遊んでいたのだろう。

「なっ……!ななな、何を言っていますの!?あれは嬉し泣きではなく、当然の結果に感極まっただけでしてよ!そもそもあなたに見られている筋合いはありませんわ!」

「言い訳してますが、そんなにかわらないと思いますよ、エルナ様!」

「全然違いますわ!」

 そんな平和な言い争いをしている横で私はお菓子を食べ、紅茶を飲む。あ、このお菓子美味しい。紅茶ともよく合う。

「お姉様は本当に愛くるしい小動物のようにお菓子を食べますわね」

「わかる!ステラお姉様はお食事している姿もかわいいよね!」

「あなたと同じ思考にされるのは不愉快ですわ!私は純粋にお姉様をお姉様として慕っているだけですわ!あなたのような破廉恥な考えはありませんのよ!」

「聞き捨てなりません、エルナ様!抱きついてほっぺにスリスリしたい!一緒にお風呂入って洗いっこしたい!同じベッドで一緒に寝たい!これのどこが破廉恥なのですか!いたって健全です!」

 いや、それはおかしいぞ、ミリー。

「それが破廉恥だと言っているのですわ!あなたの存在はフローラの教育にもよくありませんわ!それにあなたはロッティさんのアレを見ていやらしい顔をしていましたわよね?」

 そのフローラちゃんは話を聞いていないようだけど。

「さて、何のことでしょうか!?」

「もういいですわ。……そんなことより、お姉様が先生となると、生徒にとっては同世代の先生ですわね」

「はっ!ステラお姉様の魅力が広まり、変な虫が付くかもしれません!」

「あなたが一番変な虫ですわ。……でも、確かにお兄様もうかうかしれられませんわね」

 何故、そこでテオバルト殿下が出てくる。あの人はエルナのように小動物を愛でている感覚だと私は思っているが……

 そんな私たちのところに小さな男の子がやって来る。

「ねえねえ!すごいの捕まえた!」

 そう言って私たちに手を差し出したのは、この国の王子、末っ子で9歳のノルベルト第二王子である。私は本人がそれでいいというので、ノル君と呼ばせてもらっている。

「じゃーん!カエル!」

 こんな感じでいつも私を驚かせようとしてくる。昔はエルナにもちょっかいを出していたようだが、彼女の反応にも飽き、最近はフローラちゃんにちょっかいを出しているようだが、フローラちゃんと少し雰囲気が似ている私に狙いを定めているようだ。ある意味、私をからかったり困らせたりしているテオバルト殿下とそういう部分は似ていて、あ、兄弟なんだなと思う。

「ひやぁぁあーーーっ!なっ、何を持ってきておりますのーーーっ!?そんな気味の悪いものは今すぐ遠くにお捨てなさい!早く放り投げなさいと言っておりますわーーーっ!!!」

 あ、エルナはカエル苦手なのね。カエルも愛くるしいちんちくりんな小動物だと思うけど。いや、でも、さすがにカエルと一緒にされるのは嫌だからこれでいいのかな?

「……ノル、そんなのを持って来ないで!……近づけないで!……何でいつも人が嫌がることをするの?……ねぇ、やめて!」

 あ、フローラちゃんも必死になっていつもより大きい声出している。苦手なんだね。そして、少し青くなっているようにも見える。

「わあ、ちっちゃくて可愛いですね!お姉様、ノルベルト殿下がカエル見せに来てくれましたよ!」

 そして、ミリーは大丈夫なのね。

「……アマガエル……かな」

「はぁ?何だよ!その反応!つまんねー」

 ごめんね。別に私はカエルを見ても何とも思わないし、何ならこの国、というかヴァルデスルーエに来る道中は樹海を彷徨っていてね。

 もっと気持ち悪い魔物とか見ているからね。カエルなんてかわいいものだよ。

 ナメクジとかウミウシみたいな体に無数の触手を生やしたような魔物とかね。あれ、始めて見たから後で調べたらテンタクルスという魔物だったんだよね。あれは気持ち悪かったので速攻で駆除しておきました。

 さすがにあんなのとカエルを比べるのはカエルがかわいそうだけどね。

 あ、脱線してしまったが、そんなことより、今はカエルである。

「……人間の手の……温度は……カエルにとっては……熱湯に入っている……みたいなもの。だから……ノル君は今……カエルさんを……苦しめている」

「へ……?」

「ずっと素手で触っていたら……カエルが弱っちゃう。それに……アマガエルの皮膚には……小さな敵から身を守るための……抗菌性ペプチドやヒストン……などの、毒性を持つものが……含まれているから……触った手で目や口を擦ると……大変なことになる。だから……目と口とか……触らないようにね。あと……すぐに……手を洗って」

 あ、ノルくんがポカーンとしている。まぁ、脅かそうとしてきたから反撃しただけだけどね。でも、注意しないといけないのは確かで素手で触るのはお互いにデメリットなので注意。

 ヒキガエルのブフォトキシンと呼ばれる神経・ステロイド系の毒のほうが怖いけどね。手で触れると炎症を起こし、誤って口にすると嘔吐、下痢、心臓発作などの症状が出て、最悪死ぬ。

 まぁ、地球にはもっと恐ろしいカエルもいいたけどね。その代表格がモウドクフキヤガエルのバトラコトキシンだろう。体長5cmほどだが、1匹が含有する約1mgのバトラコトキシンでハツカネズミなら1万匹、人間なら20人、ゾウなら2頭を殺すのに十分な量だと言われている。あ、でも、自己生成するわけではなく、他のヤドクガエル科の構成種のように食物から毒物を摂取し貯蓄していると考えられているため、ペット用の繁殖個体には毒はないとされています。

「毒ですって!?やっぱり気味の悪いものには触れるものではありませんわ!」

 まぁ、ガチの毒とは少し違っていて、抗菌性ペプチドやヒストンは、細菌などをやっつける強い力を持つ一方で、濃度や状況によっては人間の細胞に対しても細胞毒性を示す性質を持っている。アマガエルからすれば、人間を攻撃するためではなく、あくまでも自分の体を細菌やカビなどの病原体から守るためのものだ。

 カエルに罪はないんだよ、エルナ。

「さすがはステラお姉様ですね!私には良くわかりませんが!」

 一見平和そうに見えてカオスな状況である。

 自分で言うのもなんだが、ノルくんに対して直接、そして頭の中で永遠と毒について語る私、私しか見えておらず、何故か目を輝かせるミリー、永遠にパニック状態のエルナ、そんな中でポカーンとするノル君。そして、終始苦笑いを浮かべているエルナ担当のメイドさん、やんちゃなノル君に振り回されていた彼担当のメイドさんたち。

 あ、前半は全部私のせいか!あはははは……

 まぁ、でも、今日も平和だよね。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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