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聖祈師リアライド・デ・フェルゼの知略戦  作者: ごろごろみかん。
4.恨みも恩も忘れない

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7.恥も外聞もない

街外れとなれば、人気もなくなる。だけどこんなに騒いで、誰ひとりこないのはおかしい。ちらりと見ると、エリーセの部下らしき黒ローブの男たちが封鎖していた。

場の沈黙を破ったのは、エリーセだった。


「愛の深さはわかったよ。だけど、こちらとしても引き下がれない。俺は、リアライドに恋をしてしまったからな」


嘘つけ。私の魔道具を手元で管理したいだけでしょう。私の能力に恋をした、という意味なら正しいかもしれない。


「私は先程、気遣いに溢れ、他人になにかを強要することなく、自立しており、過干渉せず、不快な物言いをしない銀髪ではない男性が好みと言いました。エリーセ殿下はその全てに反しています。それに、蕗の国の聖祈師の扱いは、同じ聖祈師としても反吐が出ますわ。分かります?あなたは、舞台にすら上がれていないんです。そもそもの話、異性として見れるかどうか以前の問題です。私はひととしてあなたが嫌いなので、友人としても有り得ません。知り合いにもなりたくないです」


ちょっと、言い過ぎちゃったかしら。

一応、一国の王子相手に。

でも、これくらい言っておかないと懐柔できると思われたらたまらない。これで嫌いになったり、扱いにくい相手と受け取ってもらえれば万々歳。

私の暴言に怒ったのはエリーセではない。ゼフィラだ。

話聞いてたの?ぽーっとエリーセだけ見てるのかと思った。


「ちょっと!その言い草は何!?せっかくエリーセ様が、あなたみたいなツンケン女でもいいって言ってくれてるのよ!?あいっかわらず可愛くない女!こんな女が好きとか、コンラートも頭おかし~って思ったけど、ここにも異常者、お前のことよ!がいたのね!」


お前!とキリアンを人差し指で指す。


「ツンケン女で結構よ。好きでもない人間からの好意を受け入れるほど、私は人間できてないから。それよりあなたはいいの?好きなひとが、ほかの女口説いてるのよ?嫌にならないの?」


尋ねると、エリーセはきょとんとする。


「え?そんなの、エリーセ様が決めることだわ。私はエリーセ様のもの。それは変わらないもの」


…………理解に苦しむ。

ゼフィラに黙るように、とエリーセが片手を前に出す。それに、ゼフィラは機敏に反応した。すぐに口を閉ざした。エリーセは私たちのやり取りを聞いて苦笑している。


「なかなか手強いな。厳しそうだ。だけど、だからこそ燃える。俺はね、略奪愛っていうのもいいと思うんだ」


知らないわよ。そんな性癖暴露されても。


「だからこそ──奪う。俺と、結婚してもらうよ。リアライド。天才を敵に回すのは恐ろしい、がそれもまた一興。俺は楽しければそれでいい。血なまぐさい愛憎劇を繰り広げようじゃないか!」


あ、このひとやばい。


「ゼフィラ、耳を塞いでおいで」


と、エリーセが言うので私はその先を推測した。

そのため、先手を打つ。

まず、耳を抑える。そして、絶叫。


「きゃあああああああああああああああああ!!!!ああああああ!!!!」


恥も外聞もなく、叫んだ。心の底から、あらん限り。


「──」


エリーセの口が動いて何か言うけど、聞いてないもの。ノーカウントよ。


恐らくエリーセは、真名をカミングアウトするつもりだった。蕗の国の人間は、結婚する相手にしか真名を明かさないんだものね。

弟くんが使った手が、また使えると思わないで欲しい。

その手は既に見たのよ。


私の絶叫に釣られて、ぱらぱらとひとが集まり始める。

いくら封鎖していると言っても、これだけ叫べばひとも集まる。

どうしたんだ、何があったんだ、と集まったひとたちの中には、もちろん女性もいる。


よし、私の勝ちね。


真名を明かすのは、結婚する相手だけ。


この場で真名を明かせば、見知らぬ女性たちまで知ってしまう。ゼフィラは命令通り大人しくまだ耳を塞いでいるから、聞こえないだろうけど。


私の狙いを悟ったのだろう。

エリーセが舌打ちする仕草が見えた。


その瞬間、私は耳を抑えていた手を外し、代わりにキリアンの腕を掴む。


「今のうちに!」


飛び出すようにその場を駆け出せば、一拍遅れてキリアンもついてきた。音が戻ってきた世界では、蜂の巣をつついたような騒動になっていた。


私の絶叫、そんなに響いていたのかしら……。


今の私はリアライド・デ・フェルゼではない。貴族の娘じゃない、平民だ。守るべき矜恃もない。だから、恥も外聞もなくこんな真似を取れる。

本当に怖いのはね、守るものがない人間なのよ!

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