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聖祈師リアライド・デ・フェルゼの知略戦  作者: ごろごろみかん。
3.食って大事

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10.迷惑

「まっ……待て!コンラートを殺してもいいんだな!?お前が、殺すんだな!?見殺しにするんだな!?リアライド・デ・フェルゼ!」


ひとの名前を大声で呼ばないでほしい。

ほら、ひとが集まってきちゃったじゃない。集団のうち、ひとりは怒って吠え立てる。

そういう役回りなの?

数は全部で五人。雷魔法で無力化させるのが一番手っ取り早いかしら。木魔法で植物生やして隔離する?足止めには十分かも。でも目立つ。目立って仕方ない。

大通りから離れているとはいえ、騒いでいたらひとは集まる。


「この血も涙もない冷たい女が!!殺人犯め!」


「殺人犯?殺すのはあなたたちでしょう?拐ったのもあなたたち。誘拐殺人罪でお縄。私は無関係。私に何を求めてるの?コンラートのために嘆願しろって?人質取って要求を押し通そうとする姑息さ、大嫌い。汚いし反吐が出る。コンラート以下のゴミよ、あなたたち」


「このっ……」


五人組の内、やはりこの男が一番短気なのだろう。頭に血が登りやすいなら、情報引き出せるかしら。


「あなたたちはどこの国のひと?コンラートを誘拐して利があるのは、ロア国?ロア国と仲のいい蕗の国?私に言うことを聞かせたい、つまり聖力を求めてるなら、ケイラド国の隣国で瘴気汚染問題が深刻な、蕗の国かしらね?コンラートは腐っても貴族。貴族を誘拐できるくらいだから、あなたたちの飼い主は王侯貴族?王族かしら?オロラド国への宣戦布告?私を探してわざわざグンドウェル国来たの?グンドウェル国の王族はこれを知ってるの?不法侵入?」


多分この男たちの飼い主は、蕗の国の王族。

オロラド国の国王陛下の可能性もあるかしら、と思ったけど、多分あの王にそこまでできない。王太子殿下に指揮系統奪われたって話だし。

それに、こんな回りくどいやり方はしない。上から押さえつけるやり方を好む。


ロア国は、オロラド国の宝箱を手に入れたいとは考えているだろうけど、実際瘴気の影響はそんなに受けていない。だから、ロア国は、私よりキリアンの方が欲しいと思う。


キリアンは、聖力を任意に扱えるから聖祈師という名をいただいているのであって、聖力がなければ魔術師として配属されていただろう。

天才であることは変わらないので、その場合は天才魔術師と呼ばれていたはず。

ロア国は、軍事国家。軍事力を上げたい。それなら、それを飛躍的に上げるだろうキリアンの存在は、喉から手が出るほど欲しいはず。私の発明品は、結局のところ聖力特化だからね。

戦闘マシンとか作らないし作りたくないし、多分作れないし。キリアンなら作れると思う。


だから、私に干渉してきたなら、消去法で蕗の国。ついでに、コンラートを浚えるくらいの権力者。つまり、高位貴族、それも王族と縁のあるものだと判断した。

私の推測に、男たちは絶句した。答えない。

これは当たりかな。

キリアンに情報を流して、ジョアン経由で王太子殿下に伝えた方がいいかしら。


オロラド王家、というより陛下に幻滅したけど、王太子殿下には頑張ってほしい。見逃してくれた恩もある。馬はありがたかった。


「く、くははっ、くはははっ」


その時、高笑いが響いた。

誰かいる。五人の奥、曲がり角。隠れてたのね。


カツカツと靴音を鳴らして、姿を見せる。


「面白い。この短い時間でよくそこまでたどり着いた。頭の回転が早いのか?それとも、短絡的なのか?どっちだ?リアライド・デ・フェルゼ?」


「今はただのリアライドです。ファミリーネームは捨てました」


銀の髪、灰色の瞳。猫っぽい。

美形だ。王族かしら?可愛い顔をしている。

耳に、短冊ピアス。和っぽい。でも、和風ファンタジー。黒字に鶴のが描かれたジャケットを着ている。腰には剣が二本。


靴は……下駄!?


これも、蕗の国を作ったという江戸時代だか戦国時代のひとが持ち込んだものなのかしら。歩きにくそう。靴擦れしないのかな。


蕗の国の王族と思わしき男は、私の前でぴたりと足を止めた。変わった瞳孔。縦に長い。本当に猫っぽい。


「俺の名は、透・リオ・レインフォート。透は真名だ。本当は明かしてはならぬ決まりなのだが、仕方ないな?」


する、とその指先が伸びる。

うん?なんか、魔力が──。

違和感を覚えたら、すぐ自衛。


バチッ!と強い静電気のようなもので、透と名乗った男の指が弾かれる。名前も日本っぽい。カインゼルは、どうして英名だったのかしら?後で聞いてみよう。あ、こいつらと会ったらまずいわよね。早いところ伝えないと。


蕗の王族の目が見開かれる。

その指先は、火傷したように赤くなっていた。


これでも手加減したんだけどな。

指、吹っ飛ばなくて良かったですわね。


「お前……!!リオ殿下に何をする!?」


短気な男が吠える。

獲物を構える。あれ、先が鉤爪なのに蛇行剣だ。なんか色々混ざってるな。あれで刺されたら多分痛い。雷魔法で無効化しておくか。とりあえず武器感電させようかしら。


「何をって、何かされそうになったから自衛したまでですか?それとも、されるがままでいろとでも?反撃したら、罪ですか?自己防衛も認められないと?蕗の国はそうなのですか?」


「きっさまぁ……!いちいち頭にくる物言いを……!!」


吠える部下を、蕗の国の王族が片手で制止する。


「いやはや……ハハ!ますます気に入った。面白いなお前。俺の女になれ」


すごい聞いたことあるセリフ。


占ツ○とかで履修したのかしら。

全世界共通口説き文句なのかな。

カインゼルに聞いてみよう。

ジェネギャで知らないとか言われたらちょっとショックかも。


「これは決定事項だ」


あ、オリジナリティ出してきた。


「お断りですわ」


「なぜ?」


なぜ?理由がいるの?


「お前は俺の真名を知った。花嫁にならなければならない」


呪いの絵?

三回見たら死ぬってやつ。

三枚並べて見せられたら回避不可能。

当たり屋にも程がある。


「勝手に開示してきて、しなければならないとは傲慢ですね。お断りします。あと、コンラートの件でしたか?好きにしてください。話は以上ですか?以上ですね?ではさようなら。マルシェが閉まってしまうので」


「待て、リアライド」


待つはずがないし、返事もしない。

私は自己紹介してないし。


「お前は、オロラド国が憎いのだろう。なら、共にオロラド国を滅ぼさないか?俺はお前に協力する。あの王の首を切って、野ざらしにしてやろう。コンラートも、まあ、お前のすきにすればいい」


「…………だから?」


「ん?」


振り返ると、蕗の王族は目を爛々と輝かせていた。戦闘狂だ。……救いようがない。


「あなたたちがオロラド国を攻めるなら、好きにすればいい。それに私を巻き込まないで。協力してやる?願い下げよ。そんなの私は頼んでないし望んでない。勝手に私の要望を汲み取った振りをして、味方の顔をしないで。迷惑です」


吐き気がする。



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