8.なぜか皆さん
「何を探してるモン?」
語尾が独特だ。
やっぱり幼女向けアニメにいそう。
「山菜を。人間が食べられる山菜、どこかにありませんか?」
「あるけど~~でも、難しいところにあるもん」
やっぱり採取され尽くしているのだろう。
マルシェの野菜は割高。
みんな考えることは同じ。
もしかしたら、根こそぎ乱獲されないように、エリュンがついてきてるのかもしれない。山の生態系を乱さないように。
「構いません。教えてくださいませ」
「うーん……そこまで言うなら!あっちだもん!」
薬草採取クエストだけど、最悪薬草一枚でも摂取すれば条件は達成だ。私はエリュンの案内に従い、山道を歩き始めた。
かれこれ、三十分が経過した。
山の中は、木々の影があるので直射日光の暴力からは逃げられるものの。
「あ、暑い…………」
薄手のワンピース、買っておいて良かった。
聖祈師のローブ、脱ぎたい。でも脱いだら、虫に刺される気がする。
しまった。こんなことなら、虫除けグッズを作っておくべきだったな。こんなに山奥に足を踏み込むことになるとは思ってなかった。次は持ってこよう。
アルコール度数の高いお酒と香辛料が、虫除け代わりになるのだっけ?
お酒……帰りに買って帰ろう。
「大丈夫だもん?帰るもん……?」
心配そうに私の周りを飛んで、不安そうに言うエリュン。可愛い。暑さを感じなさそう。羨ましい。変わって欲しい。
「大丈夫ですわ。あとどれくらいですか?」
「もうちょっとだもん!」
あ、そうか。
ここには周りにひとがいないのだから、魔法使いたい放題だ。私は全属性魔法が使えるし、魔力量が異常なので、あまり人前で使いたいものではない。オロラド国の宝箱、なんてバレたら面倒なことになるのは目に見えている。
グンドウェル王家と接点は持ちたくない。
私は水魔法と風魔法を行使して、安易スプリンクラーを作った。ああ、水……!体感はあまり変わんない気がするけど、視覚的にはとっても涼しくなった。
「すごーい!きみの魔力量、異次元なんだもん!すごいもん!初めて見たもん……!」
目をきらきらさせるエリュンに苦笑する。
私のこの力は、ギフトで底上げされたもの。このギフトは数百年くらい封印されていたと言うし、エリュンが知らないのも不思議ではないと思う。
「すごいもん!すごいもん!綺麗だもんねー……」
何、その語尾。
ちょっと面白くて笑ってしまった。
そして、エリュンの協力の末、私は崖に生えるキノコの群衆と、その付近には黄色の花が咲いていた。アブラナみたい。
周囲の木には、果物のようなものがなっていた。
一面、緑。あの草原も、食べられるのかしら。
食材の宝庫だ。
「ここ!僕のとっておきだもん!いいもの見せてくれた、お礼だもーん」
ふよふよと漂いながら、エリュンが飛ぶ。
「これはぁ、草が食べられるもん。花も食べられるもん。こっちは、引っ張ると野菜が出てくるもん。この果物は、酸味が強いもん。砂糖を混ぜてジャムにする人間が多いもん」
詳しいわね、長生きなのかしら。
「ありがとうございます、とっても助かりますわ」
「このキノコは、味が素朴……らしいもん。僕は食べないから分からないもん。塩で味付けするのがおすすめもん」
おすすめレシピも教えてくれる。優秀。うう、欲しい。勧誘したい。いや、ギルド員さんにあれだけ釘を刺されたのだ。みんなこの誘惑にかられるものなのだろう。
だってめちゃくちゃ有能。
しかも、草原のツタを引っ張れば出てきたのはじゃが芋……もどき。
黄色の花をつけた草は、小松菜かほうれん草みたいだった。
果物は、プラムに似ていた。
キノコは、舞茸っぽい。すごい。季節感の統一がない。異世界ならではなのかしら。この分だと、春にかぼちゃが取れても驚きはないかも。
持ってきた麻袋に、ジャガイモっぽいのと、小松菜っぽいの。舞茸っぽいのと、最後にプラムっぽいのを採取する。
「ここ、また案内してくれる?」
かなり曲がりくねった道を進んだし、振り返ると、道が変わっているようにも見えた。怖い。迷いの森?NPCのセリフを参考にしないと抜けられないってあれ?
「もちろんだもん!それに、ここは僕しか案内できないんだもーん。人間にはこれないよ」
あ、語尾が普通になった。普通の語尾も話せるんだ。
「そうなの?」
「そうなんだもん!特別、だもん!」
やだ可愛い。
その後私はふたたびエリュンに案内されて、山を降りた。太陽が真上に来る前に、山をおりることができた。
途中、エリュンの案内に従って、薬草を何枚かぶちぶち抜いていく。それを持ってギルドに戻れば、カウンターの中にいたお姉さんに「お疲れ様でした」と労われる。
「あの、この薬草はどうしたら?」
「分かりませんが、なぜか皆さん扉を出た右手に進まれますね」
ギルド員のお姉さんはニコッと笑って答えた。
パチンコかな?
なぜか皆さんが行く右手のトビラは、買取カウンターだった。なるほど、ギルドでは買取まではやってないのね。利益独占しちゃうからか。
「また来るもん?また来るもん?」
エリュンはずっと私の周りをくるくるしていた。
こんなに懐くことは滅多にないんですけどね、とお姉さんが目を丸くしていた。




