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聖祈師リアライド・デ・フェルゼの知略戦  作者: ごろごろみかん。
3.食って大事

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6.人質

「宰相は、方々に資金繰りへと奔走しているらしい。卸先のグンドウェル国にまで頭を下げて、恥も外聞もない。責任をもって回収しろ、と王太子から厳命を受けているようだな」


「王妃陛下は?」


「王妃陛下は、国王陛下の視察への動向を拒否して、そのまま実家に帰ろうとしたところを王太子に捕まって一緒に移送中らしい」


ひとまず状況はわかった。


「ロア国には、私が国を出たって知られていないの?」


「まだ、らしいが時間の問題かな。こればかりは時間との戦いになるかもしれない。北西部の民が決起するのが先か、ロア国がしかけてくるのが先か」


家族には、手紙を残した。

いざとなったら、国を捨てて逃げて欲しいこと。逃亡向きの魔道具があるから、それを使って欲しいと書いた。

お兄様は……国の騎士だから、最後まで従事するだろう。


「それで、なんだけど」


前置きをして、キリアンが言いにくそうに顔を上げる。ん?


「どうしたの?」


「いや……。実は、コンラートが行方不明になったらしい」


「はあ?あ、そう。それで?」


あ、そう、でしかない。

治安が乱れてる?北西部に不安のあるオロラド国だから、連れ去られたのかもしれない。目的は何かしら?コンラートは高位貴族だから、すぐには殺されないだろう。身代金……ううん、違う。今、瘴気に脅かされているというなら、魔道具が交換条件かも。

オロラド国民によるものならね。

頭が痛い問題だと言わんばかりにキリアンが額に手を当てた。


「…………中には、誘拐したのはきみだとほざくやつもいるとの、ジョアンの情報だ」


「ええ?とばっちりもいいところだわ。私、もう顔も見たくないくらいなのよ?それなのに好き好んで攫うはずじゃないじゃない。というか、自分から離れて誘拐するとか、意味不明じゃない?その場合。だいぶ歪んでいるって言うか。それに、そんな簡単にお坊ちゃまをさらわれてしまうなんて、警備が緩すぎない?フェアクロス公爵は何をしていたの?」


「完全同意だ。コンラートは自ら邸を出ていったらしい。騎士を置いてな。だから、きみが呼び出してるんじゃないか、って言うやつがいる」


「バカバカしい。そんなことより、仮想敵国のロア国に身柄を拘束されていないといいわね。ロア国なら、コンラートの身柄を拘束した時点で宣戦布告とかしかねないわよ?コンラートは、人質としては魅力的でしょうし、陛下とも、フェアクロス公爵の手前、捨てきれないでしょうし。もし、ロア国に捕まっているなら、私とキリアンの情報も流れているはず。王太子殿下も仰ってたけど、瘴気対策をしながらロア国を相手取れるだけの余裕は、今のオロラド国にはないでしょう?まずいんじゃない?」


何せ、瘴気については、陛下は完全に私に放り投げていた。

それは正解だけど、私に偏りすぎていたのが問題だわ。ひとり抜けただけで瓦解するようなシステムは、欠陥としか言いようがない。

キリアンは何とも言い難い顔をしている。


「コンラートは……きみを追いかけてきたんじゃないか?」


「だとしても、よ?甘ったれたお坊ちゃんがグンドウェル国まで辿り着けるとは思えない。どこかで力尽きて倒れたところを保護されるのが落ちじゃない?」


ひとまず、オロラド国周辺の情報はそんなところらしかった。


「今の情報は全部、ジョアン・デアーレから貰ったものよね?」


「ああ、デアーレ商会は、オロラド国にも顔が聞く」


商人がタダで情報を卸してくれるとは思えない。


「……商会で、何かやってるの?」


キリアンとは、一時的に行動を共にしているだけで、パーティーメンバーというわけではない。だから各自何をしていようが構わないのだけど、私だけタダで情報を得るのは気が引けた。

それに、キリアンは苦笑する。


「魔道具の修正、開発の一時協力だな。雇われそうになったから、情報なら欲しいと答えた」


「その情報を私にも教えてくれたのね。ありがとう。私も何か、あなたの力になれることがあったら協力する」


「本当か?」


「ええ。できる範囲で、だけど」


答えると、少ししてキリアンは顔を上げた。


「それなら、サラダが食べたい」


「サラダ?」


「……………実は俺、あんまりこってりした料理は苦手なんだ。だからオロラド国でも基本的に、素焼きにしたものしか食べなかった」


おお、私以上に胃が弱い。

でも気持ちはわかる。

バターたっぷりのソースとか、美味しいんだけど胃に大打撃なのよね。


「だから、胃に優しい食事が食べたい」


市場(マルシェ)で野菜を買うことならできると思うけど……」


「マルシェ、俺も足を運んだんだけど、あれ、かなりぼったくってるよな?」


公爵家の息子から、ぼったくってる、という単語が出てきてことに驚いているわよ、私は。

すごい庶民に馴染んでいるわね。


「だから、一定の供給が見込めて、価格が安定している店を知りたい」


「デアーレ商会には聞いてみたの?」


「聞いた。けど、定期購入となると、量が多すぎて俺ひとりでは捌ききれない。メイリンとクレスト、きみの分を入れても、多分余る。この夏場に、旅の途中で腐るものを持ち歩きたくはないんだ」


気持ちはわかる。


「うーん……マルシェ以外で、野菜を手に入れる方法、ね。ここら辺は山が多いから、探索に出たら、入手できないこともない、とは思うけど」


あいにく私には、その手の知識がない。

食べられるキノコだと思って毒キノコだったらシャレにならないし。


「考えておくわ。あなたの情報は有用だった。タダで得るのも悪いもの」


「ありがとう、俺は昼はジョアンのところに缶詰だから、頼みます」


こき使われてるのかしら。

でも、楽しそうだ。うっすらと目の下にクマがある。エナジードリンクとか摂取していそう。せめて、 早く寝かせてあげたい。その日はそれで解散となった。


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