VS魔王(後編)
……向こうは大丈夫だろうか。
激しい魔法の応酬の音だけが聞こえる。
俺は目の前の敵、竜騎士にだけ集中出来ている。彼女達が俺を守っていてくれるからだろう。ならそれに集中すべきだ。
「オオオッッ!!」
アカリの命牙を振るい、ミオの命牙で防ぐ。それを難なくこなして五分のような戦いを繰り広げているが……。
(命牙の後押しがあって五分……。ってことは相手も協力な援護を受けている、って解釈で合ってるだろうか)
やはり目を引くのは首に着けられている首輪。ぶ厚い金属のようなもので構成されたソレからはやはり圧力を感じる。
俺がまだ本気で制圧しにかかってない、というのも多少あるだろうが今なら頭を使う余裕がある。すこし考えてみる。
外装、のようなもので強くなるというのはこの世界の共通認識でいいのだろうか。最たる例が命牙なわけだが、例はもう一つ目の前にある。
魔力を纏った首輪。これを付けている竜騎士は出力が高いように見える。どういう仕組みかは分からないが、魔力の流れのようなものは首輪から連なる鎖にも帯びており、源泉は魔王の黒ギャルの手に繋がっている。
——ガン! ギンッ!
まだまだ打ち合えてはいるが、命牙二本を相手に耐えられているのはマズイとも思われる。……本気で倒しにかかるか。
「——覚悟ッ!」
竜騎士に飛び掛かる。その瞬間だった。
「なにっ!?」
竜騎士の体が消えた。だが目で追えなかったわけじゃない。そいつは首輪でひっぱられ魔王の元へ引き寄せられていた。
その光景を目にしたアカリとミオ。攻撃の手が止まる。
「えっ、人質?」
「便利な盾っしょ♪」
その隙に魔王が反撃を試みる。
「させるか!」
相手のいなくなった俺も彼女たちの元へ向かう。そして相手の反撃の一射をミオの盾で弾く。
「へぇ~、ユウシャ君ってちゃんとしてんじゃ~ん。……それに比べて」
ギャリ、と首輪の鎖を絞る魔王。
「オマエはホント使えねぇなぁ?」
「……」
竜騎士は黙ってその叱責を受ける。二人の仲はそんなに良くはない、のか?
「ちったぁ仕事しろよ」
悪態に加え、その背中を蹴って俺の方へ飛ばしてきた。その指示を受けた竜騎士はこちらに迫ってくる。俺が対応するしかない。
「ユーマ!」
「援護はいい! 魔王の方を頼む!」
鍔迫り合いから離れ、再び打ち合う形になる。
(狙うならあの首輪だ。相手の連携を崩せれば……)
「来い! 鎖鎌!」
左手、盾のある方の手に集中する。盾から影が生え、それが鎖鎌の形になる。
鎖鎌を投げ相手の足に括りつける。それと棒を組み合わせて釣り竿のような形にする。そして思いっきり引き上げると相手は体勢を崩し膝を着いた。
「ランス!」
相手の上空へ飛び上がりながら再び影の形を変え、大型の槍に変えた。
普段は盾の形をしており、攻撃性は備えていない、様に見えるミオの命牙だが、本質は変幻自在の武装である。扱いやすいというか、器用というか、ミオらしいというか。
大型の槍による上空からの刺突……はブラフで、狙いは《《さすまた》》のように相手の脇を押さえるところにある。
想定通り相手の脇下にランスを突き立てたので、ランスを蹴って再び上空へ。上からだと鎖の位置がはっきりと見える。
「アックス!」
アカリの棒の先端に組み込む形で斧の形をはめ込む。そして上空からの勢いを加えなら、その斧を振り下ろす。狙いは鎖だ。
「おおりゃぁぁぁ!」
——バキン! と鎖は砕け散った。同時に魔力の圧のようなものが発散されるのを感じる。
「は? マジ?」
繋がりは断った。今の魔王は隙だらけのはず。
「くらえ~~~~!!」
察してくれたか、アカリが魔王に砲撃を放つ。倒すまではいかずとも状況は好転するはず……だった。
砲撃の爆風。その粉塵が散った頃に現れた影。
「……」
「えっ」「はぁ?」
こっちのギャルも向こうのギャルも驚いている。そこにいたのは竜騎士だった。首に鎖はない。なのに魔王を庇うようにアカリの砲撃を受けた。
その一撃はそれなりのダメージだったようで竜騎士の鎧が剥がれていく。
「オマエ……なにしてんの? 別にピンチとかじゃなかったし……」
「……」
竜騎士は沈黙を貫く……と思っていたら。
「……僕は……」
その声は想像より幼く、か弱い声だった。
「レソニアちゃんが傷つくところを見たくない」
「「「……」」」
周囲に満ちる沈黙。えっと、これは……。
「は、はあ!? アンタ、陰キャのくせに何言ってんの!?」
「レソニアちゃん……」
竜騎士は立ち上がる。その背はいままで対峙していたそれに比べずいぶん小さくなった気がする。
「僕は――レソニアちゃんが好きだ」
——。
これは……、えらいことになった……。




