再会
次の日。硬い地面で寝たダメージを感じつつ立ち上がる。
簡単な朝食を済ませ、再び足を進める。……足を、といいつつアカリの浮遊魔法で地面を滑るように進んでいく。この感じだと、昨日言っていたように昼前には着きそうだ。早い。
「……」
つ、着いてしまう。その町に着くということは俺はミオへ告白をしなければならないということ。
こころの準備というものが全くできていない。いや、それよりも問題として、「まさか、”私の事が好き”なんて、言わないでよね」という太すぎる釘が刺さっている。どうしたらいいんだ。
「……」
考えるべきは言い訳か。いやいやそれはみっともない。言い訳はしない。じゃあどう立ち回るか……。
「……」
やっぱり素直に告白、だよなぁ。でもなんて返してくるだろう。それが怖い。俺はこの恋で傷つくことを恐れている。
っ……、いや、ここははっきりというべきだ。どんな返事が返ってくるにせよ、俺はミオに思いを打ち明けるんだ……!
「……」
……思ったより着かないな。体感速度の差というものもあるのかもしれないが、それにしても遅い。
しかし、多少の方向や距離の誤差はあるのかもしれない。あの要塞より奥、と表現するが、その一線を越えた向こうは情報がほとんど遮断されている。
これから向かう町はそんな中でも唯一生き残っている優秀な町だという。が……。
「アカリ、迷子か?」
「うん。この辺のはずなんだけど見当たんないね」
「だったら……うーん」
迷子から脱する方法を思いついた。もしかしたら少し危険かもしれないが、それでもやってみる価値はあるはず。
「アカリ、この浮かぶ魔法でもっと上に飛んでみよう」
「え……でも飛ぶのはよくないんじゃ?」
「だから垂直に上がって周りを見渡すだけ。それなら大丈夫じゃないかな?」
「わ、わかった」
そんなやりとりをして俺たちは上昇する。高い位置からなら町のような大きいものはすぐに見つかると思ったからだ。——と。
そこそこな高さへ到着すると、俺たちはすぐに見つけられた。
「え……?」
そこは廃墟となり、門や防壁の破壊された無惨な町を見つけた。
入口であったであろう門の付近に着陸する。辺りは瓦礫だらけだった。人の気配もまるでない。
「これは……」
破壊された町で呆然と立ち尽くす。
だが辺りを見渡してみればある違和感に気付く。
「もしかして、この破壊があったのは最近なのか?」
ススの付いた建物跡から僅かながら熱を感じる。なんらかの魔法が行使され、その熱量がまだ残っているんだろう。
誰もいないのか。町は破壊されつくしたのか。確認するために俺たちは手分けして捜索した。
十数分後。
「どうだった?」
そう聞く俺に対し二人は首を横に振った。
生存者はなし。ひどい話だ。
もし、一日早く着いていれば町を守れたかもしれない。そう思うと――。
「ユーマっ」
「え、ごめん。聞いてなかった」
「まだ何もいってないけど……、また自分を責めてる顔してる」
「そ、そうか?」
図星ではあったが悟られない様に努めた。なんでも自責するのは悪いクセだな、なんて思いながらも救えたかもしれない命を思う。
「……バカ」
……? だが頭を切り替えないと。とにかく今、何をするかだ。
「この街で一泊しようかと思ったけどそれは無理そうだ。一応休んでから、先に進むか?」
「そうね。どうしようもないし」
とりあえず休むということに決まった。——直後。
「ん?」
アカリがミーアキャットみたいに立ち上がってどこかを見ている。目線の先は空しかないが、なんだ?
「どうした?」
「……」
問いには答えない。だが空を見続けている。そして数秒が経過した時——。
「——来る」
そう言った。何を指してのことか分からなかったが、俺達も立ち上がり警戒をする。十中八九敵のことだろう。
そう言った後、空を通る一つの大きな影。
「あれは……ドラグナーか!?」
乗り手が同じかどうかは分からない。だが黒い龍を従え、空を飛ぶ姿は、この世界に来て最初に目にしたあの時のものと一致する。
向こうはこちらに気付いていないようだ。気にも留めていないか、あるいは――。
「追いかけよう。アレをこの先へ行かせるわけにはいかない」
俺の言葉に二人が頷く。体が浮かび、空を往く龍の後ろに付ける。
俺の適当な推察だが、多分この町を破壊したのはあのドラグナーだろう。
そして、要塞ほどではなくても強固な守りをもつというこの町のことだ。一般市民を逃がす間の時間を稼ぐくらいは出来たのではないか。
……ならば、兵士たちは全滅したことになるが……。
龍の後を追う。俺の考えでは、逃げた一般市民たちをも殺そうと追撃をしに飛んでいるのではないだろうか。そんな予感がする。
非道なやつだ。あの時は逃がしたが、今度は逃がさない。
「ユーマ」
後ろから声が掛かる。ミオだ。
「この距離、今なら多分撃ち落とせると思うけど」
「いや、ここでいきなりやるより、奴が襲い掛かる所を特定してから仕掛けたい。まずは人を守るほうが大事だ」
「なるほどね」
追尾することしばらく。ついに龍は高度を落とした。
俺の肉眼では人の姿はないが……。
「あっ! あそこに人が隠れてる!」
アカリの報告を聞いて納得する。俺には見えないが魔法使いには感知出来るものがあるのだろう。
敵の高度が下がっていく。攻撃を仕掛けるつもりなのだろう。ならその頭を叩く。
「ミオ! 先回りしてあの人達を守ってくれ!」
「了解!」
「アカリ! あいつと戦うぞ!」
「うん!」
ミオが飛ぶ速度を上げると同時にアカリが魔法を放つ。死角からの強襲だ。避けられは――。
「なっ――!」
ほぼ光速に近いアカリの魔法砲撃をいとも簡単に回避してみせた。さらに――。
「ミオ! 避けろ!」
「え――」
すれ違うタイミングに合わせて龍が炎弾を放ち、それはミオの方へと向かった。炎がミオの体を飲み込んだ。
「ミオーー!」
「……大丈夫。まともに喰らってない。ケホケホ」
彼女との距離は離れているが、少し前に開発した”無線機魔法”のおかげで声が耳元で聞こえる。無事ならよかった。あとは守りに徹してもらおう。
「……」
敵、ドラグナーはこちらを向いて対峙していた。
(あの時は遠かった。今はそれだけじゃない、その強さも分かる)
立ち上る圧倒的威圧感。この圧力はヴァルメクには無かったものだ。文字通り「格上」。強いと、そう感じる。
だが下がっていられない。それに、こちらにも切り札がある。
「アカリ、命牙を」
「ん……、ほいっ」
彼女の胸からにゅっ、っと出てきた赤熱した棒を掴む。俺の体に力がみなぎるのが分かる。
あの時はなにも知らなかったし、非力だった。今は違う。
「——いくぞ。あの時の決着を、ここでつけるッ!」
―――――――――――――――――
お読みいただいてありがとうございます。
よければブクマや最新話から評価をつけて応援していただけるととても嬉しいです!




