答えと逆襲と
「——好きって、言って?」
そんな言葉が、アカリから零れた。
「え……」
俺の馬鹿っぽい声が出る。だってそんなこと……急に言われても……。
「……」
潤んだ瞳のアカリを見る。その目から感じ取ったのは、不安定な心。
(今までそんな様子は……いや……)
思い出すのは嵐の王と戦う前の会話。アカリと、なんというか、こころの距離が近い会話をしていた。
あれから返事らしい返事はしていなかったし、触れる事を避けていた。何故かと聞かれれば、単に、俺が恥ずかしかったからだ。
「アカリ……」
でも、彼女はずっと、あの時からずっと、この問題の答えを欲していたのかもしれない。それを俺は気かつかないふりをして……。
「——ごめん」
「っ――!」
「今まで、ちゃんと話せてなくて」
「——う、ううん! だって、忙しかったし、いろいろあったし……」
確かに一旦腰を据えるような時間は無かったが、それでも俺はその問いには「すぐに答えなければならない」はずだ。
だって、その答えは最初から決まっているからだ。
「その、改めて、だけど……。俺は――」
「——ううん! やっぱりいいや」
「え?」
いい、ってなんでだ。この問題はずっと心に引っかかっていたことじゃないのか?
「ミオちゃんの方見てくるね!」
「あ、ああ……」
呆気に取られる俺を横目にアカリはこの場から去った。
……。選択肢を間違えた、気がする。でもどうするのがよかったんだろう。
***
「ミオちゃんの方見てくるね!」
アタシは適当言ってその場から離れた。少し歩いたところで、下を向く。
「——ごめん」
分かってる。アタシの問への本当の答えじゃない。今までのことを気遣って謝ってくれただけ。そんなことは分かってる。
分かってる、けど。
(ホント、なんでだろう)
ちゃんと言葉で聞いていない。彼の本心。でも、なんでだろうか。
《《その言葉が全てだと感じた》》のだ。
「……」
上を向いて吐き出した息は思ったより冷たかった。冷えた胸で弾き出した答えはとてもシンプルで、単純なものだった。
「サポート! ……だよね」
***
俺自身でなにか出来ないかとあれこれしていたら、アカリがみんなを連れて戻ってきた。休憩らしい。
結局、俺自身で出来る事に関しては進展なし。少しでも強くなりたいとは思っているが……、進展なし。
「あの、命牙って、俺でも使えたりとかしませんかね?」
「え……。無理、じゃないかな。はは……」
なんでちょっと笑ってるんだミューズさん。
「魔法の熟練者が最後に使える様になる奥義……なので。多少なり魔法が使えないと、そもそも話にならないというか、ね、はは……」
俺は年下で魔法は確かに使えないが、ちょっと失礼じゃない?
いや、相手側の事情を汲み取るのであれば、俺がかなりの馬鹿なんだろうが……。
「二人に守ってもらいなよ……二人なら一人どころか街を丸ごと守るくらい出来るだろうし……、ね」
……まあ、出しゃばるなというのはそうなのかもしれない。この世界において俺のような者は――。
「大丈夫だよ!」
話をぶった切ったのはアカリ。
「ユーマはいてくれるだけで、ううん、魔法の事を教えてくれるだけで前に進めるんだから!」
「そうね」
続いたのはミオ。
「たまに難しいこと言うけど、でも私たちのために一生懸命考えてるってのは分かる」
二人とも……。その回答を得たミューズさんは――。
「そ、そっかぁ。……いいなぁ」
何か、ひどくショックを受けたようで。焦点の定まらない目で自分の手を見つめている。
「でも……私は……」
(もしかしてこの人は……)
推測だが、この人は未だにブルースさんとアーシャさんが倒されたことを根に持っているのかもしれない。
ブルースさんは凄い人だ。でもだからと言ってこちらも足を止めていられない。
「ミューズさんの力だって、必要です」
「え……?」
「俺たちはまだまだ未熟です。それは分かっている。だから少しでも強くならなければなりません。その為には知恵が必要です」
頭を下げる。バカにされようが、力は必要だ。
「そ、そっか~。ふふ……そっか~」
なんだか楽しそうな、嬉しそうなミューズさん。機嫌が取れたならなによりだ。
「よ~し、このあともがんばろ~!」
アカリが元気に振る舞う。……さっきの回答、本当にあれでよかったのだろうか。
とはいえ、頑張らねばならないのも事実。さっさと立ち上がろう――。と。
カンッ!
何かがぶつかったような、そんな音がした。軽い音だった
なんだ、なにか落としたか。と振り返ってもそんなことは無く。
——ミオが頭から血を流し倒れた。
***
「……まず一人」
魔法使い、ミオを撃ったのは――ヴァルメク。
「奥の手まで使ってまだ生き延びてるってのは癪だが――」
相手との距離、およそ2000m。その超長距離狙撃を成功させた。
「あの女二人がヤバイってのは分かったからな。ヤるなら一方的にヤるに限る」
再び、大型の長い木で出来た狙撃銃を構える。
「今度こそきっちり仕事させてもらうぜ」
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