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海辺の聖女と碧き騎士  作者: ゆうもみじ


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軽い

数日後、ラルローディアは、再び魔術師団を訪れていた。


「では、解呪を始めていきます。」


ナルニエルの声とともに、幾重もの魔法陣が展開され、淡い光が、部屋いっぱいに広がった。体の奥に、ずっと燻っていた、あの澱のような感覚。それが、光に溶けるようにして、少しずつ、消えていくのが分かった。


「……終わりました」


ナルニエルが、静かに、そう告げた。


ラルローディアは、大きく息を吸い込んだ。体が、驚くほど軽い。これまで、気づかぬうちに、どれほどの重さを抱えていたのか、今になって、はっきりと分かった。


「信じられない軽さです。ありがとうございました」


深く頭を下げると、ナルニエルは、穏やかに首を振った。


「私は、原因を見つけ、取り除いただけです。この状態で魔物討伐をされていたとは…頭が下がります」


その言葉に、ラルローディアは、頭を下げて礼を伝えた。


魔術師団を出た後、詰所に戻ると、レオンが、心配そうな顔で待っていた。


「どうだった」


「完全に、解けた。信じられないほど体が軽い」


「そうかそうか……本当によかったなぁ…俺も一安心だ」


レオンは、心底安堵したような表情を見せた。


「父上とも、話した」


ラルローディアは、静かに続けた。


「これからのこと、弟たちのこと。今までみたいに、腹の探り合いではない、まともなやつだ」


「そうか…お前にとっては良い兆候だな」


「弟たちのことも、俺ができる限り、気にかけていくつもりだ」


母を失った幼い弟たちの、あの泣き声が、まだ耳に残っていた。あの子たちに、これ以上の傷を負わせたくないという思いが、静かに胸の中に芽生えていた。


「レオン」


ラルローディアは、少し改まった調子で、友の名を呼んだ。


「今回のこと、お前まで巻き込んで、悪かった」


「はあ? 何言ってんだ」


レオンは、呆れたように、肩をすくめた。


「巻き込まれたなんて思ってない。俺は、お前の親友だぞ。それに!俺はただ言いたいことを言っただけだ」


その言葉に、ラルローディアは、僅かに、口元を緩めた。


「……ありがとう」


「よせよ、柄にもない」


レオンは、照れくさそうに、ラルローディアの肩を軽く叩いた。


その後も、事件の後処理や、部隊の任務が、慌ただしく続いた。伯爵家の対応、弟たちの様子伺い、そして、隊長としての職務。息をつく暇もない日々が、しばらく続いた。


だが、そんな忙しさの中、ついに面会を求めていた神殿から面会の承諾と日時が伝えられたのだ。


(面会に行ける…)


久しぶりに、詰所を早く抜けられる日。ラルローディアは、手首に結んだ、あの貝殻の腕輪に、そっと触れた。


――やっと、会える。


呪いも、解けた。義母のことも、片付いた。お互い話さなければならない事もたくさんあった。


だが、何よりただリーヴァに会いたい、いつしかそれだけが自分の望みになっていた。


神殿へと向かう足取りは、これまでのどんな任務よりも、軽やかだった。



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