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海辺の聖女と碧き騎士  作者: ゆうもみじ


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28/41

原因

「……というわけで、実家に帰ったんだが、どうも調子が悪い」


詰所の一角で、ラルローディアは、レオンにだけ、実家での違和感を打ち明けた。


「調子が悪い、って、どんな風に」


「うまく言えないが……体の奥に、何かよどむようなものが溜まる感じだ。倦怠感とも少し違う」


レオンの表情が、みるみる険しくなっていった。


「それ、いつからだ」


「意識が戻った時からだ。村にいた時も、あったが……実家に戻ってから、特に強く感じる」


その言葉に、レオンは、拳を強く握りしめた。


「……俺のせいだな」


「違う」


ラルローディアは、その言葉を遮った。


「誰のせいとか、そういう話をしているわけじゃない。ただ、原因を知りたいだけだ」


レオンはしばらく黙っていたが、やがて、決意したように立ち上がった。


「なら、専門家に診てもらうべきだ。俺が、知り合いに口を利く」


そうして、レオンの伝手で紹介されたのが、王宮魔術師団の団長、ナルニエルだった。


魔術師団の一室、静謐な空気の中、ラルローディアを待っていたのは、意外なほど若い男だった。


――これが、団長?


驚きを隠せなかった。魔術師団の頂点に立つ人物というからには、もっと年配の、貫禄のある人物を想像していた。だが、ナルニエルと名乗ったその男は、まだ二十代と見紛うほどの若さでありながら、その双眸には、年齢に見合わない、鋭く深い知性が宿っていた。


「隊長殿の身体を、診させていただきます」


ナルニエルはそう言うと、ラルローディアの周囲に、幾つもの魔法陣を展開させた。淡い光が部屋を満たしていく。


しばらくの沈黙の後、ナルニエルの表情が、静かに、しかし確実に、険しさを帯びていった。


「……これは」


「何か、分かりましたか」


「呪いです。それも、かなり悪質な」


その言葉に、レオンが、息を呑んだ。


「やはり、そうか」


ラルローディアは、どこか、納得したような声で呟いた。リーヴァから聞いていた話と、一致していたからだ。


「これは、個人的な問題ではなく、事件として扱うべきものです」


ナルニエルの声が、一段と重みを増した。


「呪いというものは、術者の魔力の痕跡が、必ず僅かに残ります。誰が、いつ、どのような意図でかけたか――それを辿ることが、可能です」


「調べられるのですか」


「一日いただければ。よろしければ、正式に、調査を開始しましょう」


ラルローディアは、迷うことなく、頷いた。


「お願いします」


次の日、ナルニエルから呼び出しがかかった。魔術師団の一室に足を運んだラルローディアを待っていたのは、深刻な表情をしたナルニエルだった。


「調査の結果が、出ました」


「……何が、分かったのですか」


ナルニエルは、一枚の紙を静かに差し出した。魔力の痕跡を解析した結果が、そこに記されていた。


その名前を目にした瞬間、ラルローディアの表情から、色が消えた。

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