37
「うひょ〜、こらまたドえらい目におうたわい」
地形ダメージによる死に戻り後、えっちらおっちらソフィーの下まで戻って来たジジイ。
「ご、御苦労様です」
メチャクチャっぷりはゼロから聞いていたつもりだったが、これ程とはとソフィーは焦りを隠せない。
「ええとですね、ここから先は歩くだけで1歩ごとダメージが入ってしまうのです。ですので回復をしながら進まなければなりません」
「おお、ほんまじゃ! 1歩で5ダメージ食らうぞい」
「え? 5ですか?」
「5じゃよ?」
「あれ? 私は7なんですけどね…… お爺さん何か地形ダメージに対する補正の様な装備とかありますか?」
ジジイを眺めるが、パンイチだし、せいぜい指輪くらいしかハメていない。
「うんにゃ、ワシは【水の精霊の加護】があるからじゃな」
「はい? 水の精霊?」
「水の精霊じゃ」
「あの、つかぬ事をお伺いしますけど、もしかして水の精霊様にお会いになられていたりとか?」
「おう。うんでーねちゃんじゃ」
うんで…… 精霊様の存在は確かに確認されてはいますけど、お会いする方法はまったく出回っていませんのにお爺さんは会った事があると…… 地形ダメージを緩和する加護を頂いたようですし、間違い無くお会いしてるのでしょう……
風の精霊の情報を求めたと思えば、既に水の精霊には会った事があると言うジジイに、ソフィーは驚愕の色を隠せない。
「ワシHP15しか無いからつらいのぉ」
「はえ!? 15ですか!?」
あまりの低さに変な声が出たソフィー。
「15じゃ。3歩で死ぬの」
嘘? でも無いですよね、先程確かに3歩くらいで死に戻りしてましたね。HPのステータスにポイントをまったく振っていないと言う事になりますね…… イベントではあんな異常な爆発をさせていた人が……
「ほしたら回復薬つこうて進むしか無いのぉ」
「そのHPでは回復薬だと相当数必要数になりますよ? ちょっと難しいかも知れませんね。ですので回復魔法ですね」
「ワシ、魔法使えんからの」
「でしたら私が……」
「なに、それには及ばんよ。回復薬濃口〜」
青い猫型ロボット風にジジイが出したアイテムは濃縮した回復薬である。
「回復薬濃口? すいません聞いた事がなくて、普通の回復薬と効果が違うのですか?」
「なんじゃ知らんのかい? 回復薬を濃縮すると出来るんじゃよ。回復量を上げる事が出来るんじゃ。5個濃縮で5分の、10個濃縮で10分持続回復の効果が+される優れものじゃ」
と、ドヤり顔で説明したジジイではあるが、HPは初期ステータスのままである為、その恩恵の凄さがイマイチよくわかってはいない。
「HP持続回復ぅ!?」
「ほわっ!? どないした江藤さん!? 素っ頓狂な声あげて!」
「ああ! すいません! ちょっと想像の斜め上の答えが返ってきたものですから、つい驚いてしまいました」
濃縮? 持続回復? 知らない知らない知らない。カスタムクラフトでもそんな名前のそんな効力聞いた事有りません! いえ、トップレベルのクラフターなら或いは持ってるかもですが、なに? なんなの濃縮って? わかんないわかんないわかんない!
頭をブンブカ振りながら自問自答するソフィー。軽くパニック状態である。
「だいじぶかの江藤さん。ホレ、これ飲みなせ」
そっと差し出された回復薬濃口10個濃縮。
「え!? こんな貴重なもの頂くわけには参りませんよ!」
「そうでもないぞい。工房のアイテムボックスの中にはまだいっぱいあるでの」
いっぱい…… これがいっぱい……
目の前の極上の回復薬がいっぱいあると聞き、冷や汗が垂れるソフィー。意を決して飲んで見ると、
「確かに持続回復の効果が付きました…… あ、あの、とても失礼かも知れませんが、これおいくらかお支払いすれば譲っていただけたりするのでしょうか?」
「何を水臭い事を言うとるんじゃ。ワシと江藤さんの仲じゃろ。欲しいだけやるわいな」
「いや、さすがにただと言うわけには……」
「エエんじゃて。こうしてデートもしてもろてるしの」
ニシシシシと、気色の悪い笑みを浮かべて応えるジジイ。ハラスメント案件待った無しである。
「あ、あはは…… デートでこんな凄い物貰えちゃうんですか……」
これが以前ゼロさんが言っていた事なのですね。
【いいか? 爺さんとこれからも付き合うつもりなら爺さんの言動を深く考えるなよ? 天災みたいなもんだと流せ】
とても良くわかりました……
ソフィーの様な真面目な人間程、ジジイワールドは奇異な物に映るだろう。それを理解しようとする事自体がおこがましいのかも知れない。
「ほいじゃあ進むかのー」
「了解しました。行きましょう」
いよいよイバラの道を進みだした2人。回復薬濃口の持続回復効果は十全に作用し、快適に歩を進める事ができた。




