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ジジイ安定の死に戻りは、もはや街の風物詩とも言っていい。
「爺さん今日は何にやられた?」
「1つ目小僧じゃ」
「サイクロプスを小僧いうなよ!」
草原の街界隈を根城にしているプレイヤーとはそれなりには声を掛けられるようになっていた。
もっとも、死に戻りの常連過ぎて、クランに誘ったりパーティープレイを求める者はいない。足を引っ張る底辺プレイヤーと思われてるからだ。更には呼び名が【爺さん】に定着してしまい、ジジイがお騒がせプレイヤー便所コオロギとは知る由もないからだ。
「ぬぬぬ、しかしこのままではあのデカブツ倒せそうに無いの。1撃で殺されちまうしの」
ジジイは結局サイクロプス討伐は後回しにする事にした。ダンジョン内のモンスターを殲滅しての、とりあえずはレベル上げ。もとよりそれが目的だったわけだし問題は無かった。
こうと決めたら一心不乱に徹底するのがジジイの持ち味。レベルも順調に上がり、いよいよステ振りをする事にしたが、
「賢さ1択じゃ!」
極振りも持ち味だったりする。上がったレベル分のステータスポイントは全て賢さに費やされた。
もっとも戦略として間違ってはいないのかも知れない。今更まんべんなく上げてもたかが知れてしまうだろう。ならいっその極振りだ。もちろんジジイにはそこまで考えての極振りをしたつもりは無いのだが。
それでもその成果は十全に発揮されたのだ。
「ヒェッヒェッヒェ!! この1つ目小僧、ワシの事まったく見えちょらんの」
そう、今まさに例のサイクロプスにリベンジに来ていたのだ。ダンジョンに入る前に【裸の王様】を発動。このダンジョンのモンスターは一切ジジイを視認する事が出来なかった。その為わずか数分で最奥まで来れてしまったのだ。そしてそれはサイクロプスも一緒だった。サイクロプスがヌボーっと突っ立っているのみで、ジジイの存在に気付いていないのだ。
「ヒョヒョヒョ。コレなら簡易ダイナマイトをコイツの周りに設置しての」
設置後に導火線を引き引きエリア端まで退避する。
「そーれファイヤー!! のわぁぁぁああっ!!」
ギリッギリ爆発半径から外れる規模の爆発がボス部屋を蹂躙した。【爆炎の破壊神】の効果で以前より火力や爆発半径が大きくなっていたのを失念していたジジイ。爆風で壁に叩き付けられたのだ。
えらい目にあったと頭を上げれば、そこにはサイクロプスはもう居なかった。
「いやっふ〜い! 勝ったどー。どれどれ戦利品はどんなもんかいのー」
サイクロプスの目玉やらのボス素材にご満悦のジジイ。何よりこれでダンジョン周回に目処が立ったのだ。更にレベル上げは効果的になるだろう。
ボス撃破後、さて地上へ戻ろうかと思ったが、部屋の中央に何やら黒い渦巻きに気づいたジジイ。
「ん? これはなんじゃろか? さっきまではこんなもん無かった筈じゃが? ほいよと」
ここで真っ当なプレイヤーなら少しくらいの警戒はするだろうが、ジジイにはそんなもの存在しない。何の躊躇も無く渦巻きへ入る。
それは転移ポーターだった。
ジジイの転移先は草原は草原なのだが、何かが違う。普段練り歩いて来た草原とはまた違う草原であった。
「やや? 外に出たのかいの? でもワシ、こんなとこ知らんがのー」
辺りを見回せば大きな湖がある。湖の湖畔には何やら建造物、テラスの様な建物がある事に気付き、ジジイは向かった。
「なんじゃい、誰ぞ茶でもシバいとったんかの?」
テラスのテーブルには紅茶の注がれたカップとお菓子も置かれている。だが人影は見つからない。
「あら? お客様かしら? 久しぶりねぇ。ここに来た人は2人目よ」
何処からともなく声が響き渡る。
「ほえっ!? なんじゃ? 誰じゃ?」
辺りを見回すと、湖が泡立ち1人の女性が現れた。青い髪に青いドレスの美人さん。プレイヤーでない事は明らかだ。
「驚かせてごめんなさいね。私はこの湖に住む水の精霊ウンディーネ。お爺ちゃん、とりあえずその手に持ってる物騒な物はしまって貰えるかしら? 危害は加えないから」
突発的に現れる何かには常に苦渋を飲まされているジジイ。今まさに癇癪玉をぶん投げようとしていたのである。精霊様相手に物騒なジジイてある。
「なんじゃ、敵では無いんかいな。びっくりしたぞい」
「アハハ。ごめんなさいね。でもよくこの場所にたどり着きましたね。ご褒美に【水の精霊の加護】と【水の精霊の涙】を授けましょう」
「お? なんか知らんがありがとうのー。ワシもよくわからんけどここに来れたんじゃよー」
「あら、それはとても幸運な人ね。お爺ちゃん、私とこれからも仲良くしてね」
「任さんかーい。今度来る時ゃ手土産でも持ってくるわいなぁ」
「フフフ。それは楽しみにしてるわね」
こうしてジジイは水の精霊様とお知り合いとなった。転移ポーター出現の条件は草原ダンジョンを単独5分以内にクリア。【裸の王様】が使えるジジイ以外にはたった1人しか成し遂げていない隠し要素だったのであった。




