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エリア2のボスを攻略してから数日、コツコツとイベントアイテム【退魔の証】を集め続けているジジイ。
ただ敵を倒せば良いという単純作業は、ジジイ向きのイベントなのかも知れない。
「むっふっふっー。ついに5000個突破じゃーい」
初心者にしては結構頑張っている方では無かろうかとジジイは思っていた。
そんな淡い期待は束の間の夢でしかなかった。
途中経過発表が行われたのである。
ランキング圏外。
ランキングは1000位までしか表示されず、残りは只の有象無象でしかないのだ。
言い方を変えれば1000位までは報酬出しますよって事でもあるのだが。
「おおお…… 結構頑張っちょったつもりじゃがのぅ、残念無念」
ただ、そこまで気落ちするジジイでも無かった。ランキング1位のプレイヤーなどは獲得数が600万を既に越えている。自分が場違いだっただけだと割り切っていた。
そんなジジイに一変する事態が訪れる。
始まりの町から、森林の村へと移動するのに、若干近道となるドワーフの集落を経由したのである。
「坑道はモンスター出ないから楽じゃの。ん? 待てよ。モンスターおるな。それもぎょうさんおる。あれ倒しても【退魔の証】貰えるんじゃろか?」
坑道の別れ道を左へ進む、そこにはかつて飛び降りて秒殺された、蛇神の祠へと続く道があるのだ。
そう、そこには倒した尻からリポップする毒蛇の絨毯が存在しているのだ。
「ここの蛇はダイナマイトで爆殺出来るんじゃろか? 試しにやってみるかい」
毒蛇蠢く縦穴の底へとダイナマイトを投げ込む。そして爆音が轟くと縦穴の上まで吹き上げてきた!
「あはぁ~っ!」
しっかり覗き込んでいたジジイのHPバーは、一瞬で弾けとんだ。
【退魔の証】を手に入れました
【退魔の証】を手に入れました
【退魔の証】を手に入れました
死に戻りした町の広場でそれは起こった。【退魔の証】ゲットの報告が鳴り止まないのだ。
但し経験値は一切入っていない。その性質上経験値はあの毒蛇には無いようである。
「おお、思った通りじゃ、ぎょうさん手に入るわい」
報告が鳴り止むと、その数を確認する。
「い、1万越えとる! これ滅茶苦茶稼げるぞい!」
ジジイは浮かれて走り出す。1撃1万なら容易く1位を抜く事が出来る。ダイナマイトは保管箱にアホみたいに量産してあるのだ。
「ぶひゃひゃひゃひゃ~! 荒稼ぎじゃ~! 荒稼ぎじゃ~!」
「今日の爺さんは何か鬼気迫るものを感じるな」
「なんか知らんが荒稼ぎするみたいだぜ」
「一応時期的にイベントアイテムじゃない?」
「ここらでそんな簡単に荒稼ぎ出来るかよ」
「そうそう、そんな美味しいポイントあるなら上位陣がうようよしてるって」
「まぁそうよね……」
その美味しいポイントを見付けたのである。
ドワーフの坑道へ向けて、ダイナミックなストライド走法で駆け抜けるジジイ。しかし残念ながらそのスピードは遅い。相変わらずの爆弾に重点をおいたステ振りだからだ。
間違えて貰っては困るのが、この美味しいポイントを美味しいポイント足り得るには、相応の実力が必要なのは言うまでもない。
恐らく既製品のダイナマイトを放り投げても、ここの毒蛇は倒せないだろう。何度も言うが、廃プレイヤーが廃プレイの果てにたどり着くクエストであり、そんなプレイヤー向けの設定なのだから。
「さて、戻ってきたぞい。覗かんように放り込むかの」
爆炎は上に向けて走るので、縦穴の少し離れた所から簡易ダイナマイトを投げ込む。
やはり1撃1万からの【退魔の証】がゲット出来るようである。
リポップは即座に行われるので、ジジイは次々とダイナマイトを投げ込む。
うるさいくらいに【退魔の証】ゲットの報告が延々とつづく。
そしてそれ以上にうるさい爆音が鳴り響く。
更にうるさいジジイが爆炎に嗤う。
「ひゃ~っひゃっひゃっひゃっ! ひゃ~っひゃっひゃっひゃっ!! 荒稼ぎじゃ~い! これでもかこれでもか!! うひひひひひひひ!!」
爆炎の真っ赤な光彩に照らされた歯抜けホームレスジジイ。
その爆炎を背後に嗤う様は、火炙りにされた魔女狩りの魔女を彷彿とさせていた。
狂った様にダイナマイト投げ込み機械と化したジジイ、手持ちが尽きると保管箱へと取りに走る。
奇声の様な笑い声を上げて走る様子は、目撃者も多数存在し、ジジイ御乱心とまで囁かれる事態だったのだが、本人は当然知るよしもない。
ジジイのダイナマイト作戦は明くる日も続けられ、坑道の奥から発する巨大な爆音と、引き抜いたマンドラゴラの様な笑い声に、ドワーフ達も戦々恐々としていた。
「そ~いそいそい! そ~いそいそい!」
流れる様にエレガントにダイナマイトを放り込んでいると、更なる事態が引き起こる。
「そ~いそいそ…… ありゃ?」
ピコーンと言う音があたまに鳴り響く。するとそこは一変して白い空間。そう、キャラクタークリエイトの場所である。
『凄いです凄いですぅ~!! なんと便所コオロギさんは爆弾系アイテムで連続キル1000万を突破しましたぁ!!』
妖精のリルリルがジジイの回りをグルグル飛び回っている。
「おおリルリルちゃん! 相変わらず可愛いのぅ、孫に何処と無く似とるんじゃよ」
『あはっ! ありがとう! じゃあお孫さんはとってもプリティなんだね! それでね、便所コオロギさんには新しく称号【爆炎の破壊神】と、100万Gを進呈しまーす! それじゃあ、待ったねー!』
するとそこはもう坑道に戻っていた。




