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ジジイ爆ぜる  作者: おやびん


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 「どりゃあ!」


 洞窟内に巨大な爆炎が迸る。ジジイ謹製癇癪玉++がその猛威を奮っていた。


 「そ、それ本当に癇癪玉なのですか?」


 「ほんまじゃよ。ほれ」


 ジジイから癇癪玉++がプレゼントされると、ゼロは初めてみるそれに驚嘆を隠せない。


 癇癪玉++!! こんなアイテムがあったのか! 本当に癇癪玉なんだな…… 威力的には手投げ弾以上有るように見えたが。


 半信半疑だったが、ついに現物を手渡されたゼロは信じるしかない。試しに1つ投げてみたのだが、気のせいかジジイより威力が劣って見える。


 「あ、あれ? これ同じ物ですか? 少し弱くないですか?」


 「ん? ああ、ワシは【爆炎の支配者】で爆弾系は色々と底上げされとるんよ」


 「え!? まさか称号まで持ってるのですか!?」


 「ん。リルリルちゃんがくれたぞい」


 な、何が起きてるんだこの爺さんは……


 ゼロは驚愕する。癇癪玉だけでも驚きの事態なのに、称号持ちなのである。上位プレイヤーでも称号なんておいそれと貰える物ではないからだ。


 「ふぅ…… 立て続けに凄い物を見せて貰いました」


 どっと疲れが出てくるが、それはとても良い意味である。ジジイと知り合えたのは、今は幸運だなとさえゼロは思っていた。


 「おお、確かにこのキノコは初めてじゃ」


 ボス洞窟挑戦中もきちんと採集はしている。もっともレアとは言っても所詮はエリア2相当なので、ゼロはスルーしているが。


 「でもそろそろアイテム袋いっぱいになるんでは無いですか?」


 「いやぁ、まだまだいっぱい持てるぞい」


 「あれ? もうアイテム袋拡張したのですか?」


 「拡張はしてないぞい。これじゃこれ」


 ジジイはゼロに向かって中指をおっ立てる。


 「あ、あまりその手の挑発行動はしない方が……」


 「違うわい。指輪じゃ指輪」


 そう言われてみれば、ジジイの指には意匠の凝った指輪がはめられている事に気付く。


 「この指輪は…… なんだろう、見たこと無いな」


 「ドワーフの族長に貰ったんじゃ。アイテム袋が増える指輪じゃ」


 「ドワーフの族長!?」


 ゼロ自身ドワーフを知らないわけではない。エリア3の山岳はまさにドワーフの町なのだから。


 ドワーフの族長なんていたっけな…… 

 いや、よく考えたら爺さんまだエリア2だった。山岳エリアの事じゃ無いんだろうきっと。どこか知らない所に存在してるのか…… 

 ダメだ、この爺さんの闇は深過ぎる、これだけの時間で何回驚かされてるんだ一体……


 「そうですか…… 増えたと言いますと、どれくらい入るようになったのですか?」


 「3000くらいかの」


 「3000……」


 これもぶっ飛んだ桁違いっぷりである。そもそも名匠ドワーフ装備に匹敵する物なのだから、それくらいの内包量は当然であり、人によってはそれでも武器と比べたらハズレと言うだろう。


 ジジイにとってはアイテム所持数が純粋にライフラインになる為、価千金の報酬ではあるが。


 そんなゼロの驚きの連続の中も、洞窟探索は順調に進んでいる。広範囲高威力の癇癪玉++を惜しげもなくなげるので、攻略速度は早かった。自由に動き回られるフィールドより、狭い洞窟内の方がジジイ向きではある。


 しかしながら出会い頭に遭遇したモンスターは、ゼロが倒している。懐に潜られると自爆しか手が無いからである。


 そう考えてみると、役割分担が出来ていてそう悪く無いパーティーかも知れない。


 因みに今回のイベントでは、あくまでも個人戦な為、パーティープレイをしても、【退魔の証】は倒した本人しか手に入らない。経験値は人数できちんと分配されるが。


 プレイヤーはその辺も考えてチャレンジする必要がある。とどめを交代で行えば、パーティープレイでも喧嘩にならずに安全に戦闘が行える。

 変則的な考え方をすれば、1人をパーティー全員で徹底的にバックアップして、上位狙いさせるのも作戦かも知れない。


 「よしよし、倒したぞい」


 「背後から来てるのは俺が倒しますね」


 しかしそこまでガツガツプレイでもないこの二人は、譲り合いとかそんな気持ちすらなく、ただ純粋に洞窟攻略を楽しんでいたりするが。


 洞窟を進んで行けば、眼前に大扉が現れた。

 目的のボス部屋である。


 「ボス部屋は一度入ると、相手を倒すか、相手に倒されるかするまで基本出られません。ボスに挑む前に準備など整えておく方がよいでしょう」


 「そかそか、癇癪玉++に激烈癇癪玉じゃろ、あ~これは使えんのぅ簡易ダイナマイト」


 「激烈癇癪玉? 簡易ダイナマイト? それも知らないアイテムですね」


 「簡易ダイナマイトは強過ぎて自爆してしまうから投げるわけにはいかんのじゃ」


 「爆発範囲が広いのですね、それなら俺がコオロギさんを盾で守りますよ。存分に投げて下さい」


 「ほんまかいな! それじゃ宜しく頼むぞい!」


 「任せて下さい!」


 重々しい音を立ててボス部屋の扉を開く、そこには巨大カマキリがいた。


 「うひょ~!! デカイの~!!」


 「さぁどうぞコオロギさん!」


 ジジイ達を発見するや襲い掛かってくる巨大カマキリに、簡易ダイナマイトを3本程投げ付けるジジイ。


 ボス部屋を埋め尽くさんばかりの大爆発が()ぜた!

 襲い来る爆炎と爆煙! 


 ゼロは油断していた。いや、油断ではないのかも知れない。先に見ていた癇癪玉++とはかけ離れ過ぎていた大爆発だったのだ。

 簡易と表示されてるのが拍車を掛けていたのかも知れない。正規のダイナマイトを越える威力とも思っていなかったからだ。


 煙が晴れた時、そこに巨大カマキリは既にいなかった。


 「おお! さすがだの兄ちゃん!」


 何とか大爆発を凌ぎきったのだが、盾となったゼロのHPは残り1割りを切っていた。大盾を構え、念の為防御スキルをしっかりと発動していた上でだ。


 や、ヤバかったぁ~!! なんだこの威力!? これ上位プレイヤーじゃなきゃ耐えられないぞ?


 余りにもイカれた破壊力に、敵に回ったときの事を考えると、心穏やかとはいかないゼロであった。


 



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