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「結構作れたの。そろそろ次のエリア目指そうかいのー」
とりあえず満足するだけの癇癪玉や簡易ダイナマイトを生産したジジイ、いよいよ第3エリアに向けて出発しようと思った時に、運営からお知らせが届いた。
◯月×日△時より、イベントを行います。
敵を倒すとドロップする【退魔の証】をより多く集めて下さい。
集めた【退魔の証】の数量により、イベント順位が決定します。上位入賞者には豪華報酬が得られますので、たくさんのモンスターを倒して下さい。
「ほえー、イベントとなんてあるんじゃのー。少し気張らんとのぅ」
などとは言ってみるものの、そこまで順位に拘ったプレイなどジジイは考えてはいなかった。
そしてイベント当日――――
「まぁやるだけやってみるかいの。癇癪玉はたっぷりあるからの」
などと勢い込んで倒しやすいスライムハントに来たのだが。
「みんな考える事は一緒じゃのー」
草原エリアはかなりのプレイヤーでごった返している。皆、やはりサクサク倒せるスライムを狙っての事だろう。基本的に他者の戦闘中のモンスターを横取り等は出来ない使用なので、奪い合いなどという事態は回避出来るのだが。
一応他者のプレイは眺める事は出来る。そうは言ってもスライムごときに派手な技や魔法などを使う者はいない。逆に効率が悪くなるからだ。
「ひゃ~っひゃっひゃっひゃっひゃっ!!」
そんな中、爆炎に嗤うジジイが1人。
ジジイの存在は余りにも異質だった。端から見てるとスライム相手に手投げ弾を投げまくっているようにしか見えないのだから。
「何だってあの爺さんあんなに手投げ弾持ってるんだよ!?」
「手投げ弾……か? なんかもう少し威力が高く見えないか?」
「どっちにしてもスゲエセレブな戦い方だよな」
誰も癇癪玉である事には気付いていなかった。
癇癪玉++は手投げ弾より既に強いのだから。
「コオロギさんイベントは順調ですか?」
スライム爆殺を楽しんでいるとフレンドメールが届いた。ゼロである。
もし良かったら暫くの間一緒にプレイしないかと、つまりパーティープレイのお誘いである。
ジジイが了承すると、程なくしてゼロが駆け付けてきた。本来ゼロクラスになるとこんな場所では稼がない。より敵の多い場所で無双して荒稼ぎ出来る強さを持っているからだ。
ただゼロの場合は、本懐をゲームを楽しむと言うことに置いている為、今日は少しジジイに付き合ってみることにしたのだ。
「お疲れ様です。いかがです? 【退魔の証】はゲット出来てますか?」
「おひょひょひょ、もう30個くらい手にはいったぞい」
まぁここだとそんなもんか……
これは正直少ない。ゼロクラスが稼ぐ場所であれば桁1つ余裕で違うのだから。
「とりあえずパーティーになりましょう、承認して下さい」
ゼロからパーティー要請がくる。
「来たの。NOと」
「やると思いましたよっ!!」
ジジイの茶目っ気に少しは慣れてきたようではある。もう一度要請して改めてパーティーとなった。
「俺がいるので、もう少し稼ぎ安い所へ移動しませんか?」
「それは構わんけど、ワシはまだ第2エリアまでしか進んでないぞい」
「そうですか…… では森林のエリアボスでも倒しがてら、稼ぎに行きませんか?」
「エリアボス?」
「え? ご存知ないのですか?」
「おう、知らんの」
各エリアにはエリアボスが存在するダンジョンがある。確かにどうしても倒さなければ先に進めないわけでは無いが、ダンジョンには宝箱やレア採集素材などもあり、ボス撃破報酬も良い物が出る。
大体のプレイヤーはそこでレベル上げをして次のエリアに備えるものである。
そこら辺を説明すると、レア素材などに食い付いたジジイは血気にはやる。
「それは良い事を聞いたわい! さぁ向かうぞ兄ちゃん」
「はい、それでは先導しますね」
道中は先導してくれるゼロのおかげで嘘みたいに快適な道のりである。
「兄ちゃんは強いんじゃのぅ」
「いやいや、それほどでも」
ゼロからしてみれば、スライムだろうがホワイトウルフだろうが、ほぼ一緒の雑魚でしかない。攻撃されたところでたいしたダメージも無いだろう。
森林エリアを快適に進む二人、ジジイも森林エリアはたまにしか死に戻りする事もなくなったが、あまり探索自体はしていないのだ。
村の周囲で素材を収集する程度の行動範囲なので、奥まった所の地形はとんとわからないのである。
「おお、こんな所に洞窟の入り口があったのかいな!」
「初潜入ですね、ボス撃破の初回報酬は結構期待して良いですよ」
ボスもリポップするのだが、報酬と経験値はガクッと下がる。それでも周回プレイがレベル上げには手っ取り早いとされてはいる。
「俺がサクサク倒しちゃうとつまんないでしょうから、ここから先はコオロギさんが先陣お願いしますね。援護しますから自由に動いて宜しいですよ」
「ほいほい、了承じゃ。さてさてボスとはどんなもんじゃらほーい」
二人は洞窟に歩を進めるのだった。




