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「コオロギさんに少しお尋ねしたいのですが、宜しいでしょうか?」
「ほいほい、何でも聞いちょくれ」
「もしかして癇癪玉1発でスライムを倒したり出来ますか?」
「余裕じゃ」
本当だったのかよ! これクラフター達が聞いたら卒倒するんじゃないか?
「エリアって何処まで進めてますか?」
「今初めてこの村に来たんじゃ」
やっぱりカスタムクラフトってわけじゃないな、なにがしかの方法を発見したってのか……
それにこの村への移動手段も正攻法じゃ無いんだろうな……
ゼロにしてみれば詳しく聞きたいところだが、それは流石にマナー違反と思いやめている。
「コオロギさん、良かったらフレンド登録して貰えませんか?」
「フレンド? 何言っちょる! 兄ちゃんはもう莫逆の友じゃわいな!」
「爆撃っすか……」
「莫逆じゃ」
「……そ、それはありがとうございます。 あの、でもそう言う事じゃなくて、なんて言うかゲーム的にと言いますか……」
ゼロはフレンド登録という仕様を説明し始める。フレンド登録しておけばログイン状態なども気軽に確認できるのである。
「そりゃ便利な機能じゃの。ほしたらさっそくするかいの」
ゼロからフレンド登録要請が届く。
「来たの、NOじゃ」
「なんで断るんですか!」
「冗談じゃ冗談じゃ! お約束じゃろ?」
もう一度要請が送られて来ると、今度はきちんと承諾した。
「ありがとうございました。それでは俺はこの辺で失礼させて貰います」
「おう、またのー」
ジジイがにこやかに手を振る中、ゼロは去っていった。
「さてさて、ワシもこの村を散策するかいのー」
森林の村は始まりの町より規模は小さいが、住人がエルフなだけあって、木の上に家があったり立体的な構造となっている。
「装備品なんかはドワーフの集落の方が強いのが売っちょるの」
ドワーフの集落製の装備品は、売り物としてはゲーム上の最高品なのでそこは仕方ない。
それよりもジジイの目に止まったのは道具屋である。
「お! おお! 火炎草が売っちょる!!」
はっきり言えば本来特筆すべきアイテムではない。第1エリアで採集出来るし、本来はスライムを倒すのにも3発必要な癇癪玉筆頭に、大したクラフト素材でもないからだ。
「10Gかぁ、最悪買うのも有りじゃなぁ」
しかしジジイにとっては珠玉の1品である。ジジイは称号効果で、これ1つで一般プレイヤーの手投げ弾レベルの癇癪玉が作製出来るのだから。
ただし日々クラフトに明け暮れて万年金欠なので、おいそれと大量購入出来ないのが玉に瑕ではあるが。
「おろ? この村にもクラフト工房有るんかいな。これは助かるのぅ」
一応クラフト工房は町々に存在してはいる。ただやはり使用者は圧倒的に少ない。
「こんちはー。クラフトしたいんじゃがの」
「あらいらっしゃい。お客さんなんて何時ぶりかしら? 使用料は100Gよ」
あまり似合わない前掛けをした美人エルフが、この工房の親方のようだ。
お金を支払うとさっそくクラフトに取り掛かる。
「あら! お爺さん簡易ダイナマイトを作れるのね! それは簡単にはクラフト出来ないアイテムなのよ!」
エルフ親方が目をキラッキラさせて、ジジイのクラフトを覗き込んでいる。その様子からもジジイに対する友好度は上がっているのかも知れない。
「なぁ綺麗な親方、この辺のワンコを手軽に倒せる爆弾は作れないかの?」
「綺麗とか言われたら教えないわけにいかないじゃない。良いわよ、久しぶりのお客さんだし教えてあげる。風魔法のレベルが5になるまでポイントを使用して」
「風魔法じゃな」
癇癪玉+の時は火魔法だったのを考えると、風魔法を上げる事には何も抵抗はない。
「そしたら癇癪玉をクラフトするだけよ」
「癇癪玉が++になったぞい」
「そう、これで爆発範囲が広がったわ。これで少しは倒しやすくなったんじゃない? でも自爆だけは気を付けなさいよ」
「サンキューじゃ!」
癇癪玉を更にパワーアップさせる事に成功したジジイは、さっそく森の中へと踏み入る。
このパワーアップはかなり劇的な効果を発揮してくれた。
素早いホワイトウルフを狙うのにうってつけだったのである。結構大雑把に投げても爆発範囲に入る事で簡単に倒せるようになったのだ。
「ひゃ~ひゃっひゃっひゃっ!! 今まで散々やってくれたのぅ!!」
嬉々としてホワイトウルフを追い回すジジイ。どうやら死に戻りの恨み骨髄といったところか。
ようやくまともに森林エリアを回れる事になってみると、新たなる採集素材も発見出来た。
「なんじゃか明らかに食べたらいかん色のキノコじゃの」
数種類のキノコが採集出来たが、どれも毒々しい色合いに食気はそそられない。
「ん? ここ採集ポイントなのに取れんの」
採集を続けていると1本の木に気付いたのだが、確かに採集出来るマークが付いているのだが採集出来ない。
「村に戻って聞いてみるかのぉ」
村に戻って情報を仕入れてみれば簡単な話しだった。それは道具屋に売っている伐採用の手斧が必要だったらしい。
ジジイは手斧を購入すると、もう一度森の中へと踏み入るのだった。




