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「あふぅ……」
「どうした便所コオロギの。しょぼくれた顔しやがって」
散々森林エリアへとアタックを試みたジジイであったが、ことごとく返り討ちにあっている。
柄にもなくため息をついてるところを、クラフト工房の親方に見られていた。
「おう親方、森林エリアに挑戦しとるんじゃがの、ちーとも前進出来んのじゃ」
因みに罠作戦は成功したとて、一切エリアを進行出来てない事に気付いたのは、ホワイトウルフを20匹程狩ってからである。
「ワンコが…… ワンコがワシを噛み殺すんじゃ……」
「お、おう…… そいつは災難だったな。だがそれなら坑道に行ってみろ」
「坑道かいな? ドワーフの?」
「そうだ。集落の連中なら力になってくれるだろうぜ」
親方はそれ以上は、行けばわかるとしか言わなかった。
どうせ他に策も無いので、ジジイは一路ドワーフの集落へと移動した。
「集落の連中が力になってくれる言うちょったが…… ワンコ退治でも手伝ってくれよるんかの」
「お? 便所コオロギの。何か買い物にでも来たのか?」
ドワーフの一人が話し掛けてきた。
「いんや、ワシ、森林エリアを攻略したいんじゃがの、ここにくれば皆が力になってくれると親方に聞いて来たんじゃ」
「なんだそんな事か。それなら安全第一ヘルメットのドワーフに話し掛けてみろ」
言われるがままにヘルメットのドワーフを探す。結構奥まったところにそいつは居た。
「おーい、お前さんが森林エリアの攻略を手伝ってくれよるって聞いたんじゃが」
「なんでぇ便所コオロギの。森林エリアを抜けてぇのか。ちと攻略とは違うがそれならちょっとついて来い」
ヘルメットドワーフは坑道の奥へと進む、ヒョコヒョコついて行くと別れ道がある。
「ここを右だ」
「左は何じゃ?」
「蛇神様の祠に続く道だ。いいか、その縦穴に降りるなよ? そこは毒蛇がひしめいて……」
しかしジジイは既に飛び降りていた。
「あはぁ~っ!」
そしてお約束の死に戻りを炸裂させるのであった。
しばしの刻が過ぎ――――
「偉い目にあったわい! 毒蛇の絨毯じゃった!」
死に戻りから坑道へと再び舞い戻って来た。
「ちゃんと人の話を聞かねぇからだ! 躊躇なく飛び込みやがって!」
蛇神様の祠に続く道は一面を毒蛇が多い尽くす道程である。しかも倒しても即リポップする凶悪な仕様で、常に攻撃をし続けないと瞬く間に毒蛇に殺されるのである。ソロプレイヤーにはほぼ攻略不可と言えた。
「すまんの、右じゃったな」
「おう、そこを真っ直ぐ進めば」
「……行き止まりじゃ」
「まだな。だからこれから掘り進むのよ。簡易ダイナマイトは持ってるか?」
「おう。ぎょうさん持っちょるぞ」
「よし、それを壁にセットしてくれ」
行き止まりの壁にダイナマイトをセットする。導火線を引いて爆破範囲外へと避難して。
「ふぁいや~っ!!」
着火されたダイナマイトが激しい轟音と共に行き止まりの壁をフッ飛ばす。すると新たなる通路が出来ていた。そしてその通路の途中に斜め上へと登る穴が出来ている。
「よし開通だ。便所コオロギの、この穴を登ってみろ。お目当ての場所な筈だぜ」
「ほんまかいな! サンキューじゃ! ほんならちょっくら行ってくるわい!」
穴を登って行くと光が射し込んで来たのがわかる。どうやら地上への出口らしい。
「ここは…… 村じゃな!」
ジジイがたどり着いた先は第2エリアの森林の村だった。エルフが住む、自然との調和のとれた村である。
「な!? え? え?」
そしてジジイ以上に驚きを隠せないプレイヤーがいた。
「お? あんたいつぞやの親切な兄ちゃんじゃのぅ、元気かの?」
そう、驚きのプレイヤーは始まりの町でジジイに色々教えてくれたゼロである。
ドワーフの坑道はクエストを進めていないと当然現れないし見えない。
ゼロにはジジイが突然目の前にヒョッコリ現れた様にしか見えていないのだ。
「お、お久しぶりです、あ、あの、今何処からやって来られたんですか?」
「ん? そこじゃよ?」
坑道の出口を指差すジジイ、しかしゼロには何もない地面を指差さてれているだけである。
や、やっぱり言ってる事がさっぱりわからん。ただ間違いないのは、爺さんが何か俺の知らない移動手段を知ってるって事だな……
ゼロはゴリゴリの攻略組でも無いが、名の知れたトッププレイヤーである。そうそう驚く発見も無いくらいやり込んでいる自負はあったが、いきなり現れたりされ、流石に呆気にとられてしまった。
高威力の癇癪玉もあながち本当かもな…… こうなってくると、爺さんから目を離さない方が良いかも知れないな。
「あの、俺ゼロって言います」
「ほう、ゼロさんか。ワシは便所コオロギじゃ」
「は?」
「便所コオロギじゃ」
……なんて名前付けてんだよ。
「あの、なんてお呼びしたら宜しいでしょうか? 便所……さん? コオロギさん?」
「あ? 何でもええぞい。只のジジイじゃわい」
「そうですか、じゃあコオロギさんで」
いくらなんでも便所とは呼びづらいゼロだった。




