第玖漆話 Resist
索道の村側に、多くの村人たちが眠り込んでいる中、礼次と昭二の2人だけが立ち上がっていた。
「どうやら、私たちに埋め込まれていた『あいつ』の欠片を回収していったらしいな。」
礼次が言う。
「『あいつ』の支配から逃れられたのですね。他の村人たちはどうなるのでしょう?」
昭二が答える。
「我々は能力を維持するために、頭部のイグジストを奪われはしなかったが、他の者は全員どこかへ移されてしまったからな。取り戻さない限り、目覚める事も無いだろう。」
「気になるのは、なぜ、急に解放されたのかと言う事ですが。」
「彼らだな。よほどの脅威なのだろう。この世界ごと消し去ってしまうつもりなんじゃないか?」
「では、我々もこの世界と命運を共にすると・・・」
「それは『あいつ』の考えだ。大人しく従ってやる必要は無い。」
「では、どうします?」
「首領様の穴がある。元の世界に戻る方法は、解放された今なら見つかるかも知れん!!
まずは村人たちを穴の近くに運ぼう。」
「わかりました。」
すぐに一番近くにいた村人の男性を背負う昭二。
「問題は『誠』の事だが・・・。」
と、礼次が言うのに、
「『あいつ』がそう容易く死ぬとは思えません。なら、『誠』も大丈夫です。
それよりも、村人たちを優先しましょう。」
「すまんな。」
「そうか。『あいつ』が戻ってくるかも知れませんね。索道も落としておきましょう。」
「・・・・・わかった。私がやる。」
昭二は村人たちを助けるためなら、誠を犠牲にする覚悟を決めていた。その思いを汲み、礼次がロープを切り落とした。
「どうやって『この子』と話をするの?寝てるよ?起こす?」
福子が尋ねる。
「こうするんだ。」
と答えると、右手から弦を伸ばして獣に伸ばす。左胸の辺りに到達したところで、獣にへばりつかせる。すると、自然に弦が獣に取り込まれた。
「この『獣』は触れたもの全てを取り込もうとする。だから、こちらから入るのは簡単なんだ。」
「でも、牙で攻撃してくるんでしょ?」
「ああ。だが、小杖がもう大丈夫だって言うんなら大丈夫だろ。」
俺は弦に力を込め、自分の体を引き寄せる。
「じゃあ、ちょっと行って来る。」
「気をつけてね!!」
「行ってらっしゃい。」
全然、緊張感の無い返事が返ってきた事で、逆に気負いや不安も軽減されたようだ。
どんな望みがあるのか知らないが、どーんと来いだ。




