第玖伍話 From now on
「さあ、いくよ。」
小杖が首の落とされた獣に向って歩き出す。
「また、急に変身して襲ったりしないよねえ。」
福子が恐る恐る歩き出す。
「『あの子』を制御できるイグジストは、さっきのカラスだけのよう。他は村人たに入れられているみたい。」
小杖が平然と答える。
「頭の方がまたカラスに戻って、また合体しちゃったりはできないの?」
福子はまだ警戒している。
「『あの子』に一度合体して切り落とされた事で、今は頭のイグジストしか残っていない。いくら意識があっても、頭だけで生きていく事はできないの。」
「じゃあ、あっちは死んじゃうの?」
「放っておけばね。『この子』を『あいつ』はいらなくなったから置き去りにしたんだと思う。今頃、この世界を消そうと。池の畔の『彼』を探し回っているでしょうから。」
「でも、『あいつ』の分身みたいなものなんでしょう?」
ここで俺が返事を引き継ぐ。
「ああ。でも、恐らくコピーを何度も繰り返した果てに、劣化してしまったんだろう。人間の体に入れても、充分な知能を持たなかったんじゃないか!?」
「それで、捨てちゃうなんて酷い話だねえ。だったら、助けてあげたくなるね。」
「今は、どうしようもないけどな。」
小杖は俺達の会話を聞くでも無く、どんどん獣に近づいていく。首を失ったカラスだった獣は、元の姿に戻り、眠り込んでいた。
小杖は獣のすぐ側まで来ると、手の平を獣の胸の辺りにかざす。
「気をつけろ!!刃が飛び出すかも知れない!!」
俺が声をかけるが、
「大丈夫。もう、『この子』に害意は無い。『あいつ』のコピーに操られていただけ。
それよりも見つけたよ。ここにいる。」
小杖は丸まって眠る獣の左胸のあたりを触っている。普通の動物なら心臓があるはずだ。
「『ここにいる』って、こいつの正体だっていう『子供』の事か?」
「そう。でも、私では彼と話をできない。」
と言う事は、俺が行くって事だな。『あいつ』もそれを警戒していたみたいだし。
「つくづく便利な体になったもんだねえ。もう、元に戻る気は無いの?」
「おいおい、誰がそんな事をいった?
でも、戻れる方法は今のところないんだ。」
俺もこんな深刻な事態になっていることを、忘れかかっていたよ。
「そうなんだ!でも、別にいいんじゃない!?
人が変わっちゃうわけじゃないんでしょ?」
そして、また、そんな福子の言葉に救われるのだ。
「まあな。そんなわけで、緑になっちまった俺の事、これからもよろしくな!」
「おう!まかせとけ。」
「よろしく」
お2人の許可も出た事で、俺はこのままでもいいらしい。
さて、目の前の大問題を片付ける事にするか。




