第玖肆話 History
「宗一郎。もう一つの世界とは何の事なのだ?」
玄爺が尋ねるが、先に首領が答える。
「もしや、実政様ではないか?」
「その通りです。」
宗一郎が答える。
「鵺伝説の実政様か?そんな馬鹿な。言い伝えでは1000年も昔の話だったはずだ。」
玄爺が驚いている。
「まあな。あくまでも『伝説』であって、『歴史』ではないとされて来た。しかし、本当の『鵺伝説』は歪曲された『歴史』なのだ。」
首領が言う。
「『歪曲された歴史』!?」
「そうだ。我が、陣家の恥の歴史だ。」
首領は苦々しい顔で言い捨てた。
「『赤僧ヶ池の鵺伝説』と言えば、当時の権力闘争に敗れ、都を追われた陣家が、四十万のトロメキに流れ着き、失意の中、亡くなった実政様の母、照様が都の貴族たちへの恨みのあまり鵺に姿を変えたと言うものですね。」
宗一郎が改めて説明する。
「そうだ。そして、鵺は都へと飛び、災厄をもたらしたが、それを、嫡男の陣実政様が退治し、手柄を上げた事で、再び都への帰参が叶ったという話になっている。」
首領が続きを説明する。
玄爺が問う。
「それが『捏造』だとおっしゃるのですか?」
「ああ。そうだ。宗一郎は、分かれた時と変わらぬ少年の姿だ。お前の世界に居れば年を取らないのだったな。」
「はい。そうです。」
「同じように、時を越える能力者は他にいるのだ。そして、父上が首領だった頃、真実の歴史が陣家にもたらされたのだ。」
「そのような事が・・・」
「黙っていて悪かったな。玄爺。父上が、歴代の陣家の党首のみに伝えると決められたのだ。
だが、宗一郎ら、核心に迫る者たちが現れた。もう、隠すべきではないだろう。」
「真実とは、なんなのですか?」
「陣家には、強い異能の力を持つ者が多く現れる。それは、『鬼の血』の流れる一族だからなのだ。」
「えっ!!」
返答に詰まる玄爺。そして、何も発せず首領の言葉を聞く宗一郎。
「どういうことですか!?父上!!
俺にも『鬼の血』が流れていると!?」
柱の陰で盗み聞きしていた陣岳斗が、たまらず詰め寄ってきた。
「誰が聞いていいと言った!!!」
首領が息子を一括した。
「ひっ!
しかし、私にも関わりのある話です。」
一瞬怯んだものの、岳斗は食い下がる。
「そもそも、お前が早く一人前になっていれば、ややこしい事件が起こる前に、お前には話していた事なのだ!」
再び、一括される。
「うっ。ええ、いや、あのー。」
うろたえる岳斗だった。
「まあいい。お前も話しに加われ。
司もだ!!」
柱の陰にまだ隠れていた司も、呼び出されたのだった。




