第捌肆話 Reason
俺たちは索道から村に入る事にした。谷へ下りる道だと、村に登り返す道は、村から丸見えになってしまうからだ。どんな待ち伏せを受けるかわからない。
しかし、索道を渡っている途中で見つかったら、余りにも危険すぎる。モタモタしている時間は無かった
小杖は、横殴りの強風をものともせず、ロープの上を走る事ができた。
問題は福子だが、元々小柄なので、俺がおんぶして渡る事にした。ロープには弦を絡めているので、手は空いているのだ。
「そのトゲトゲ、なんとかならないかなあ。」
「俺も好きで尖ってるわけじゃないから。刺さりそうなところは、適当に折ってくれ。」
「もう、折ってるけどね。でも、小杖ちゃんじゃ無くて、残念だったねえ。」
「お前、まだ言ってるのか?あれは、毒を抜き取ってただけだって何度も言ってるだろ!!」
「そうやって、ムキになっちゃって。じゃあ、小杖ちゃんの事、好きじゃないって言うの!?」
「なんで、そうなるんだ!好きだけど、その好きとは違うって言うか・・・」
「今度は歯切れが悪くなるんだねえ。小杖ちゃん。かわいいもんね。」
「否定はせんぞ。せんが、お前が思ってるような事はしてないからな!!」
先に渡り終った小杖の声が聞こえる。
「何を話ているの?作戦?」
福子が答える。
「違う違う。この鈍感男が、やっぱり鈍感だったって話。」
「なんだそりゃ。」
ようやく渡り終える。
「ふーん。鈍感なんだ。」
小杖にじろじろ見られてしまった。
「もう、ここからは命がけだから。つまらない私語は禁止で頼む。」
「ああ!話を誤魔化して、終わらせた!!」
「頼むから静かにしてくれ。本当に危険な敵なんだ。」
福子もようやく俺が、本当にヤバいと思っている事を理解した様子だった。
「俺は誠さんの攻撃を受けて脚が動かなくなった。イグジストを切り取る能力を使われたのだと思う。つまり、『あいつ』は今、誠さんの中にいるはずだ。そして、池にいた少年のものだった、『この世界を操る能力』も一緒に持っているはずだ。」
「じゃあ、誠さんと戦えって言うの!?」
福子が反論する。
「いや。首領から聞いたんだが、誠さんだけは自分の意志で穴に入って行ったらしい。元の世界では無傷だったそうだ。だから、小杖の能力でイグジストを元の世界に送るだけで戻れる可能性が高い。」
「でも、今は『あいつ』に操られているんでしょう?」
小杖が問う。
「『あいつ』は誠さんの地属性も使って来た。能力だけを奪うのは、殺してしまう危険性が高いって話だったよな。」
「ええ。池の少年が、一度死んだって言ってた。」
「それと、『あいつ』は自分自身のイグジストを切り刻んだって話だろ。」
「そうね。それも彼が言ってた。」
「この世界は『あいつ』のわがままが通る世界だ。だから、イグジストの切り貼りなんて真似がまかり通っているが、もし、切り貼りしたイグジストが、元の世界に戻ったらどうなると思う?」
「もしかして、バラバラになっちゃう?」
福子が答える。
「肉体という拠り所があれば、そこに留まるかも知れないが、『あいつ』は少年に招かれ、肉体を持ったままこの世界に入って、切り刻んでしまったんだろ!?」
「そっか。じゃあ、あいつは、元の世界に戻ったら死んじゃうんだ。」
「多分な。でも、その失敗に気付いた。だから、元の肉体が壊れていない誠さんを選んだんじゃないかな。」




