第捌伍話 Search Enemy
俺と福子の役割は小杖の護衛。そして、小杖が誠に接近してイグジストを元の世界に戻す。作戦というにはあまりにも単純だが、今、俺たちにできるベストだと思った。
「でも、元の世界の方向がわからないの。私も、間違ってここに来ちゃったから。」
「それなら大丈夫だ。あいつは『穴』の近くにいるはずだ。『穴』に向かって飛ばせばいい。」
「わかった。その後は?」
「依り代を失った『あいつ』のイグジストは、別の肉体を求めて移動するはず。そこを、俺の作った体に閉じ込める。そして、この世界を操作する能力を奪えば、バラバラに四散するはずだ。」
「やってみる。」
「よーし。小杖ちゃんのガードは任せてね!指一本、触れさせないんだから!!」
福子が妙に張り切っていた。
「じゃあ、行くか。
俺は普通に歩けないから、屋根の上を行く。
接近して来た敵は福子に任せたからな!!」
と言い置き、弦を伸ばして一番手前の家の屋根に音も無く登った。
「ちょっと見ない内に、頼もしくなったねえ。」
福子が呑気に褒めてくれた。
「私たちも行こう!」
「うん。」
2人の少女の表情が引き締まる。こうなると、殊の外、強い2人だった。
俺は屋根の上にへばり付き、下から見つからないように這いずっていた。ただ、弦を伸ばし、その先には小さな花をつけ、下を見張ってもいた。
今いる家の左側に、村人が1人いるのを発見する。
俺はすぐにその弦を伸ばして、村人の死角から体内に侵入させる。すると思った通り、頭部が切断され、それを悪茄子の粘液で再生されている事が感じられた。なにしろ、今の俺は悪茄子そのものだからな。
つまり、体のイグジストは村人のものだが、頭のイグジストはあいつのコピーだ。誠を除いた、他の村人も同じなのだろう。
では、奪われた頭部のイグジストはどこへ?
やはり、あの獣を調べてみる必要がありそうだ。
俺の捜索にあたっている村人は、その一人しか見つけられなかった。まずい状況だ。それだけ、核心部分の護衛に力を割いているのだろう。
俺は村人を家の中に入らせ拘束した。今、首を刎ねてしまうと、後で戻せなくなるかも知れない。できる限り、余計なダメージを与えない方がいいだろう。
作業を終え、次の屋根へと渡る。そして数軒の屋根を越え、最後の家へと辿り着く。
この家の向こうが、獣のいた広場だ。『穴』もそこにある。
屋根の天辺の手前で止まり、広場の様子を伺う事にした。




