第捌弐話 Cut & Paste
「実験って?」
「あいつの能力は、私の見立てでは、イグジストを切り取る能力だ。肉体を切断した際に、小さい方をイグジストごと奪う。『能力』を司る部位を奪われたら『能力』も奪われる。」
「切断っ!!ぞっとしない話だねえ。」
「池のほとりに、鋭いトゲの生えた草があっただろう。あいつが持ち込んで来たものだ。
凄い増殖と再生の能力を持っている。あれから採取した粘液を精製した薬を作っていて、体を切断された者に投与することで、切断された部位が再生する。」
「体が再生?腕を失っても、また、生えてくるの?」
「そうだ。ただし、肉体が再生してもイグジストを奪われた箇所は、動かす事が出来なくなる。」
「じゃあ、あなたも一度、どこかを切断されて、再生されているのね。」
「気を失っていたからどこを切られたのかは分からないが、恐らくは脳だろうな。ただ、その際、再生が間に合わず、私が一度死んでしまったらしい。あの薬は毒でもあるからな。
すると、能力が完全に消失してしまい、空間の概念すら無い世界に放り出されたと言っていた。
その後、再生が進んで生き返った事で、能力が復活したらしい。
以降、俺の能力を完全に奪おうとはしなかった。」
「あなたに、死なれては困るのね。」
「それから、あいつはあの植物を使い、村の人間や周囲の森の動物を次々と攫ってきては、実験台にしていったんだ。」
「なんか、聞きたくないなあ。」
「最初は動物の首を挿げ替えたりしていたが、子供の頭部だけを残して、動物の体に入れ替える事を繰り返し始めた。『最強の生物を作る』とかなんとか言ってな。」
「じゃあ、鵺の正体って・・・」
「この10年は、あいつの作った失敗作の事だ。鵺伝説自体はもっと古くからあるけどな。
それともう一つ、自分自身のコピーを作りはじめたようだ。」
「自分をコピー?」
「そうだ。死なないように、自分の体を少しずつ切り取っては、別の動物にくっつけることを繰り返し、それらを再び切り取って繋ぐことで、もう一体の自分の体を作り上げた。」
「じゃあ、今の『あいつ』って人は・・・」
「そう。肉体のほとんどの部分は、薬で再生されたものだ。だが、イグジストは失われていない。つまり、イグジストを切り取る事も、複製する事もできる能力者のようだ。」
「イグジストの複製。本当に、そんなことが・・・」
「俺もあいつの能力の全てを見たわけじゃない。だが、人間の複製を作る能力を持っているのは間違いない。」
小杖は、偽浩二の嫌な笑い方と、偽浩二の中にいた小男のイグジストの姿を思い出していた。




