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福見福子の最終定理 第1章 始まりの仮説  作者: 黙定六
始まりの仮説
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第陸陸話 Glider

 その時、前方の上空を礼次が滑空しているのが見えた。礼次は風属性を利用して、空を飛べる稀有の能力者だった。

 礼次は大災害の前まで、元山の大学で航空力学を学んでおり、ベルヌーイがどうとか空を飛ぶ能力の原理について教えてくれたが、残念ながら無学な私にはさっぱりだった。

 火、水、土、風の4属性は、能力者たちにとって最もありふれた力なのだが、風属性を持っているからといって、空を飛べる者は他に聞いた事がない。


 大結界の内側では、化石燃料を利用した移動手段の使用が禁じられているため、礼次の能力は有能極まりなかった。第2位に序されるのも当然だった。


 結界を翼にし、能力で気圧差を作り楊力を得るらしい。原理が分かったからと言って、真似できるようなものではないが。


 礼次は、つぎはぎの化け物を引き付けていた。どうやら化け物は飛ぶ事が出来ないらしいが、建物の壁をあっという間に垂直に登ったり、慣性の法則を無視したように方向を変えたりしながら、まるで礼次の影のように付き従っていた。


「首領様。まずいです。」


 その礼次の声が届く。音は空気の振動だ。礼次は『音』を飛ばすこともできる。だが、こちらから返事はできない。


「赤僧ヶ池の方から、獣の群れがこちらに向っています。あの『つぎはぎ』が呼んでいるのかもしれません。」


 そうか。一匹だけとは限らなかったな。


「ただ、こいつほどデカいのはいないようです。普通の野生動物サイズです。」


 いつか見た、変なうさぎみたいなのが、大量にやってきているという事か。


「私に考えがあります。そちらの準備ができたら合図を下さい。私がヒビ割れに突っ込んだら、涅槃寂静をお願いします。」


 なにやら、物騒な事を考えているようだ。


 そして、物騒なのは礼次だけでは無かった。

 昭二と誠も、属性を練りこんだ結界を張り、ゆっくりとこちらへ向ってきた。もし、夫婦で連携攻撃をしてきたら、私でも危ない相手になる。


 しかし、それは杞憂に終わりそうだ。2人は少しずつ歩調を速めているが、互いに競い合って、我先に前に出たがっているようだ。あれでは、連携などできようはずもない。


 2人の背後では大量に吐き出された白い粘液がとぐろを巻き、大きな白蛇へと姿を変えていた。

 あの白い粘液が2人を操っているらしい。あの蛇は触るだけで危険と言う事だ。


「せいっ!!」


 2人に気弾を打ち込む。火属性は載せていない純粋な気だ。2人とも、まともに食らって吹っ飛んだ。


「やはりな。」


 あの2人が避けられないはずのない攻撃を仕掛けたのだ。つまり、2人は意識を失っており、あの草の化け物に体を乗っ取られている状態だ。

 目を覚まさせてやれば、元に戻るかもしれない。

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