第陸拾話 Patchwork
森に隠れるフリをして、再び村に戻ってくる子供が2人。翔太と司だ。
「おい司!首領様と礼次さんだぞ。2人とも第2級能力者だ。
あの2人が同時に戦う所をみられるなんて、なんてラッキーなんだ!」
「首領様はともかく、礼次さんってそんなに強いの?」
「俺も見た事は無いけど、2級なんて世界でも数えるほどしかいないはずだ。
父ちゃんと母ちゃんも、あんなに強いのに3級だぞ。
それ以上なんて化け物に決まってる。」
「浩二さんは知ってるのかなあ。お父さんの能力の事。」
「さあな。でも、この目で見られそうだ!たのしみだなあ。」
翔太はいたって上機嫌だ。危険な目に遭うなど、微塵も思っていないのだろう。
「でも、首領様は村人全員を避難させてるし、危ないんじゃないかなあ。」
司は少し不安そうにしている。
「そんなわけ無いだろう。あの4人が倒せない奴なんて、世界を滅ぼせるレベルの奴だぞ。
そんなの、どこに逃げたって一緒だよ。」
「あれですか。」
「だな。」
首領と礼次は、村の入り口に向かい、ゆっくりと歩いてくる巨大な獣の姿を見据えていた。
「しかし、なんだありゃ?あれで、よく歩けるなあ。」
その獣は全長5mはあろうかと言う巨躯ながら、妙に足が細くしかも、それぞれが不揃いで、長さも異なっており、ひょこひょこと今にも転びそうな足取りで歩いているのだった。
伝説の鵺と言うにはあまりにも不恰好なのだった。
「あちこち、つぎはぎだらけじゃないか?毛の色もパッチワークみたいだ。」
「酷いもんですね。間違いなく人為的に作られたものでしょう。」
「しかし、なぜこの村に現れたんだ?目的があって向っているようだが。」
化け物は一旦立ち止まってこっちを見る。すると、それまでの動きが嘘のように、一直線に猛スピードで坂を滑るように駆け上がってきた。
私は道から離れて、横に距離を取ろうとするが、礼次が動かない!
化け物の体のあちこちから、イノシシの牙のようなものが無数に伸びてくるのが見える。あんなのに貫かれたら命は無い。なのに、礼次の目は焦点を失っており、両手を無防備に前に出して、まるで旧友をハグで迎えるかのように、フラフラと前に歩き出したのだ。
「危ない!!」
咄嗟にUターンし、胴タックルを食らわせるように礼次を突き飛ばすと、間一髪で化け物が通り過ぎて行った。
「おい!しっかりしろ!!」
礼次の頬を叩く。
「健作とこの栄作ですよ。あれは。あの時、助けてやれなかった。なんで、今まで忘れていたんだ・・・」
礼次はワナワナと震えているのだった。




