第伍伍話 Confidence
「昭二の家は子供が2人だよなあ。4人家族だ。」
「その通りです。」
「だが、健作のところは子供はおらんのだろう。夫婦2人だけのはずだ。」
「そうですね。」
「だが、家の大きさも、畑の広さも、作っている作物の量も同じくらいだろう。」
「確かにそうですね。家を建てたのも、結婚した時期も一緒です。違うのは子供がいるかいないかくらいですね。」
「子供もおらんのに、なぜだと思う?」
「生来の働き者夫婦だからですかねえ。」
「私はな、子供がおったような気がするんだ。顔も名前も思いだせんが、毎日、挨拶をしていた気がして仕方がない。」
「健作に子供ですか?そんな話は聞いた事もありませんなあ。」
「まあな。変な夢でも見て、現実とごちゃ混ぜになっとるんだろうなあ。」
再び、首領は考え込んだ。
「首領様。それより、ここのところ鵺を見たという話が頻繁にあるのですが、どうなさいますか?」
「ああ、その件か。大方、妖獣の類なんだろうが、今のところ、被害も出ていないんだろう?
こちらからつつきに行って薮蛇にならんとも限らんし、村の見回りを強化して警戒するという事でどうだろう?」
「賢明だと思います。」
「では、警備は任せる。」
「承知しました。」
昭二は頭を下げると、向き直って帰ろうとする。
「ああ、それと、昼飯の後にでも、うちに顔を出してくれるか?」
「わかりました。どのようなご用件で?」
「まあ、用ってほどの用でもないんだ。」
昭二は少し考えると。
「わかりました。首領様の勘は、侮れませんからな。」
と答え、帰って行った。
昭二が去った後、翔太がこそこそと戻って来る。
「草むしりは終わったのか?」
「まだに決まっているじゃないですか。
それより首領様。健作さんのところに子供がいたって話、本当ですか?」
「お前、盗み聞きまでしていたのか!」
翔太は慌てて、
「そこの陰に草が生えてて、そいつと戦ってた時に聞こえちゃったんです。」
と、取り繕う。
「まあいい。なんとなく私がそう思ったという話だ。」
というと、翔太はいつに無く真剣なまなざしで首領に言う。
「俺は絶対にいたと思う。顔も名前も思い出せない。でも、絶対に。」
そこへ遠くから声がする。
「ああっ、そんなところにいたーーーーーっ!」
翔太は一瞬『まずい』と思ったようだが、それよりも重要な事を思い出したようだった。
「司!お前も思うよな。健作さんとこには子供がいたよな!!」
「どうしたの?急に。それで誤魔化したつもり!?」
「そうじゃない。大事な話なんだ。首領様もそうおっしゃってるんだ!」
「首領様も!?」
司は非常に驚いた様子だった。
「まあな。気のせいだとは思うんだが。」
すると司は目を見開いて言うのだった。
「気のせいなんかじゃありません。私もそう思います。お兄ちゃんも。でも大人に言っても誰も相手にしてくれないから言わなかったんです!」
と、目を輝かせて訴えてくるのだった。




