第伍肆話 Strangeness
「首領様!おはようございます!!」
「ああ、おはよう。朝から精が出るな。」
村の住人と朝の挨拶を交わす。しかし、最近、何かおかしい。違和感を感じているのだが、何が原因なのか分からずにいた。
「首領様、おはよう!」
元気な少年が一人、目の前を駆け抜けていく。姿が見えなくなった頃、
「お兄ちゃん。待ってってば!」
遅れて少女が追いかけてきた。少女は立ち止まって私に頭を下げると、
「首領者、おはようございます。兄を見かけませんでしたか?」
「翔太なら川の方へいったぞ!」
「もう、また仕事をさぼって、遊びに行ったのね。ありがとうございました。」
と礼を言い、川へ下りる道へと向って行く。その背中を見送っていると、物陰から翔太が姿を現した。
「えっへっへ。上手く行った。首領様、ありがとうございました。」
「お前なあ。私がグルみたいに言うんじゃないよ。全く、こういうことばっかり頭が回る奴だ。」
「司は馬鹿まじめでしつこいんですよ。まだ9歳だっていうのに。」
「12歳のお前が妹より子供でどうする。お前はおしめを妹に換えてもらうつもりか!?」
「そんなに子供じゃないですよぉ。」
すると、少年の背後から男性が近づいてきた。
「本当かどうか、確かめにゃあならんな!」
「うわっ!父ちゃん!!」
「首領様、おはようございます。また馬鹿息子がお手を煩わせましたでしょうか。」
「まあな。だが、私よりも妹の方が難儀しとるんじゃないか。」
「げっ!」
「また、司に意地悪しとるのか。しょうが無い奴だ。
今日から1週間で村中の草を抜き尽くせ。できるな!」
「ええーーーーーーっ、そんなあ!」
「それが返事か!!!!!!」
少年は大声で怒鳴られる。
「わかりました!!!!!」
負けじと大声で答えた。
「すぐにかかれ!!!!」
「はい!!!!」
少年は立ち去っった。
「毎度の事ですが、お恥ずかしい限りです。」
「元気が一番だ。まあ、多少のいたずらは目を瞑ろう。こんな山奥じゃあ、子供たちも退屈だろうしな。」
「恐れ入ります。」
男性が首領に頭を下げた。
「ところでなあ、昭二。何か村でおかしな事が起こってないか?」
「おかしな事ですか?首領様がそうおっしゃるなら、何か起こっているんでしょうなあ。
私には見当もつきませんが。」
「私も見当がついてるわけじゃあないんだ。ただ、なんとなく、何かがおかしい。」
「雲をつかむような話ですなあ。」
「まあ、そうなんだが。例えば、今、畑に植えている作物なんだが、妙に多すぎないか?」
「村の人間が食べる分には十分過ぎますなあ。でも、余れば売ればいいのですから。」
「余った野菜の為に、索道を使うか?あれを動かすには、村中が総出でかかることになるぞ。そこまでやって、たいした金額にもならん。
保存の効く米ならわかるんだが、葉野菜なんぞ、食う分以上を作る意味はないだろう。」
「なるほど。」
「毎年、必要な分だけを作っとるんだ。今年だけ、なんで見当違いの量を作るのか不思議なんだ。」
「言われてみれば、確かに妙ですなあ。」
「まあ、それだけではないんだがな。」
そう言うと、首領は腕を組んで、少し考え込んだ。




