第伍弐話 Wrench
首領は真っ直ぐに結界の穴を塞ぐ本株へと向っていく。子株はヤドリギ体に駆逐されつくしており、抵抗するものはいなかった。
本株には無数の花が咲いており、全てが首領に向っている。最初に見たとき、花は2つだったので、まるで眼のようだったのだが、数がここまで増えると、全て眼に見えて不気味さが遥かに増すのだった。
首領はアッパーカットで気弾を飛ばす。いとも簡単に悪茄子の茎や葉を切断する。
また、子株が増えるなと思ったのも束の間、切り飛ばされた部分が子株に成長することなく、枯れ落ちたのだった。
よく見ると切断面が焼け焦げている。火属性を載せた気で細胞を焼き殺す事で、増殖が抑えられるらしい。
首領はその場でこぶしを振るい続ける。いくつもの気弾が本株を襲い、伸びた茎を切断していく。次第に本株は人間くらいの大きさまで剪定されてしまった。
子株とテントウムシという、遠隔攻撃の手段を失った悪茄子は、まるで無力にみえるが、普通は気弾で切断することなど不可能だ。葉に傷をつけるのが関の山だろう。
俺が使っていた鉈は、玄爺から借りた特別製で、刃に特別な結界が仕込んである。刃の表と裏の2面にそれぞれ結界が施されており、それぞれの気の流れが逆になっているのだ。
気が反対方向に動く事で、相手を捻じ切る力が生まれる。首領の気弾も同じ原理で出来ているため、柔軟性の高い生きた植物を、いとも簡単に切断できるのだった。
首領は小さくなった本株に近づくと、腰をしっかりと落とした低い構えを取る。
ふう。
と大きく息を吐くと、
スパン!!
中段回し蹴りを放った。すぐに、後ろへと下がる。次に何が起きるのか分かっているのだ。
本株の太い主茎がど真ん中で切断された。上半分は切り飛ばされて、まったく動かない。しかし、下半分の切り口から、白い粘液がドロドロと溢れ出してきたのだった。
首領は地面スレスレまでかがみこむようにしてアッパーを放つと、今までよりも大きな気弾が地面を滑って粘液に直撃する。当たった部分の粘液は蒸発して、カスが周囲にこびりついた。
粘液はまだまだ出てくる。首領は構わず、気弾を放って粘液を少しでも減らそうとしているようだ。
やがて、本株から粘液が出尽くすと、一筋の流れに収束していく。首領は容赦なく気弾を放ち続けるが、あまりダメージは受けていないようだった。
そして、次第に粘液は白い巨大な蛇へと姿を変えていったのだった。




