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福見福子の最終定理 第1章 始まりの仮説  作者: 黙定六
始まりの仮説
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第伍壱話 Disturbance

「ワシは何をすればいいんだ?」


 さすが首領だ。話が早い。


「その前に確認させて下さい。あなたが10年前に戦って、あの穴を開ける事になった相手は鵺(ぬえ)ですね。」


「そうだ。」


 やはりそうか。


「では、あの穴を広げて下さい。俺が通れるくらいに。」


「わかった。しかし、何をする気なのかは聞かせてくれ。」


「悪茄子を鵺から引き剥がして、俺が支配します。」


「鵺はどうなる?」


「あなたにお任せします。」


 首領は驚いた表情をみせると、


「そこまで分かるものなのか。お前たちは。

 すまん。見くびっていた。

 あいつらのこと、よろしく頼む。」


 深々と頭を下げると、くるりと向きを変え、結界の穴の方へと歩き出す。


「待って下さい。本株は俺がなんとかしますから。」


と声をかけたものの。


「これ以上、頼るわけにはいかん。」


と、振り向きもせず向っていく。


 ヤドリギに乗っ取られた俺の元の体は、周囲にあった悪茄子の子株から水分を奪いつくすと、人型に乗り移った俺の方に向って来た。

 こいつにも手伝って貰う事がある。倒してしまうわけにもいかないが、倒されていいわけがない。


 俺は右腕から伸びる弦を、ヤドリギ体の腹を目掛けて突き出すが、いとも簡単に鉈で切り落とされてしまった。続けて左腕の弦を頭部目掛けて突き出す。鉈は間に合わないタイミングだったが、頭を振って避けられた。


パーーーーーーーーーーン!!


 避ける際に視線が逸れた瞬間を狙い、俺は体に実っていた実を破裂させた。飛び散ったタネの一つがヤドリギ体へと向っていく。

 ヤドリギ体は腕に茂った枝葉で身を守る。しかし、その隙に、最初に頭部を襲った弦がヤドリギ体に巻きつき自由を奪う。

 再び、右の弦を伸ばしてヤドリギ体の脚に突き刺す事に成功した。


 たちまちヤドリギ体の動きがおかしくなる。上半身と下半身の動きが合っていないのだ。俺は右の弦の先端にタネを仕込んでおいたのだ。実から落ちた悪茄子のタネだ。

 ヤドリギは俺の体を支配するために脳へと向った。このため下半身の守りは甘いのだ。

 下半身に打ち込まれたタネはすぐさま発芽し、脚中に根を張り巡らせて行く。俺にも制御することは出来ない。


 ヤドリギ体は、腕に生える枝を自らの脚に突き刺して、悪茄子の排除を試みているようだ。恐らく体内では根を伸ばしているだろう。だが、増殖力で悪茄子に敵うはずもない。徐々に、悪茄子の支配力が上回って来るはずだ。

 両者の決着が着くまで、まともに動く事はできないだろう。今のうちに準備を進めよう。


 しかし、ヤドリギに続いて、悪茄子まで寄生させてしまった。もう、俺が元の体に戻れることはないだろう。だが、この悪茄子の体も悪くない。俺の木属性の能力も存分に発揮できるのだから。


 自分でも驚くほど冷静に、この奇妙な状況をあっさりと受け入れているのだった。

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