↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
福見福子の最終定理 第1章 始まりの仮説  作者: 黙定六
始まりの仮説
PR
50/240

第伍拾話 Overthere

 俺の意識は元の体を抜け出し、いとも簡単に結界をすり抜けると、妖樹の作り出した俺のコピー体の一つへと滑り込んだ。

 そして、すぐに首領と逆の方に倒れこんだ。


 目の前で気の爆発が起こる。左右から詰めていた2体が消し飛ぶ。前にいた一体は、体の半分ほどが吹き飛んだが、頭部は無事なようだ。自分は下半身がやられたが、簡単に再生できそうだ。


 再生している間に、自分が動かせる範囲を確認する。ほぼ人型の部分だけで、枝葉や地下茎は伸ばすことができるだけのようだ。ただ、元々持っている木属性の力を使えば、伸ばした部分も操作はできそうだった。


 完全に明け渡した俺の体はどうなったんだろう?

と、思うまもなく、もう一体の人型の首が切り落とされ、突き刺され、水分を吸われてしまった。

 俺の意思が消えたことで、ヤドリギは結界を不要と判断し、解除して出てきたのだ。そして、旨そうに妖樹から水分を奪っている。


 しかし、植物にも意思があるとは思っていたが、これほどとは思わなかった。しきりに、本株は俺に、首領を殺させようと干渉してくる。勝手に体が動きそうになるのだ。殺意も伝わってくる。だが、この人型に関しては、俺の意思での制御力が遥かに上回っている。


 それよりも気になるのは、本株は結界の穴の下に何かを隠して、それを守っているらしいこと。いや、何かが出てこようとしているのを押しとどめているのではないか。


 俺はさっき聞いた声に従い、もう一つの瞼を開く。この体でも可能なのかと少し不安だったが、クロノスの眼を開く瞼は精神に存在するため、体が変わっても関係ないようだ。


 結界の穴の向こうに、もう一つのトロメキ集落があるのが見える。今いる建物は存在しないが、広場になっており、その中央に見た事の無い大きな獣が丸まって眠り込んでいるのだった。

 その獣は腹で穴を塞いでおり、妖樹の根は獣に寄生しているようだった。


 広場の周囲には20人ほどの村人の姿が見える。その内、子供が7人。しかし、彼らは全て実体を持たない存在だった。『イグジスト』のみの存在。幽体とでも言えばいいのだろうか。


 その中の一人の男性と目が合った。向こうから俺が見えているらしい。向こうもクロノスの眼を持っているのだろうか。

 俺が見ている事に気付くと司の方を指差した。司は柱の影から心配そうに首領を見ている。


 ふと気付く。目が合った男性の隣にいる女性が、司とそっくりな事に。そして、男性もまた翔太の面影があったのだ。


 翔太と司には両親がいなかった。しかし、誰も2人の両親について語る人はいなかった。

 もしかすると、あの人たちは、この妖樹の犠牲者なのではないか。そして、その犠牲者たちの『イグジスト』は、穴の向こう側の世界に閉じ込められており、そのため、こちらの世界には『元から存在しなかった』事になっているのではないか。


 首領は片足をあちらの世界に突っ込んで蓋をし続けている。彼らの存在を知っており、彼らを奪還するために妖樹を完全に殺して、穴を塞ぐ事を拒否しているのではないか。

 確かに妖樹は強敵だ。だが、首領の力はそれを凌駕するように感じたのだ。妖樹を殺せないのではない。殺さないのだ。


 評議会に助けを求めないのでは無く、妖樹が駆逐され、彼らを救うチャンスが失われる事を恐れて、隠しているのだろう。


 俺が選ばれたのは、どうやってかは分からないが、俺が『視える』人間だったからだ。そして、首領は彼らを救う糸口を見つけたかったのだ。


 そして俺はそれを見つけたかも知れない。


 首領に声をかけたのはこの時だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。