第参拾話 Kite
そのまま浩二の案内で、まずはトロメキに向かう。朝、出発したばかりの宿を通り越した先にあるらしい。
陣と司は天土街道という大きな道から向かったそうだ。お出四十万最大の都市である天山と、四十万南部最大の町である土坂を結ぶ主要道だ。
俺たちは裏道から向かっている。道は細いが近道なので、先回りできるのではないかということだ。
「もう、草もちはできてるかなあ。」
福子だ。結局、草もちがいたく気に入ったらしく、今朝も買おうとしていたのだが、まだ、作っていないとの事だったので、実は出来上がるまで出発を遅らそうとしていたくらいだったのだ。
小杖もそれを聞いて、『うんうん』と頷いている。
もしかしてこいつら、もちが食いたいからトロメキ行きに賛成したんじゃないだろうな。
「先に行くからな!」
宿の前まで来たところで、もちを買う2人を置いて、俺と浩二が先行することにした。そのくらいは走って来て貰おう。能力抜きの勝負なら、俺が一番、足が遅いのだ。
「りょーーーーーかい!」
福子がご機嫌で答えると、2人して宿に入っていった。
「二手に別れましたね。」
「急に戻ってきた理由は、合流した男が関わっているんだろうが・・・」
番外の隊長から、監視役を言い渡された男女の隊員である。
「こちらも二手に別れますか?」
「いや、男の方を追う。」
「でも、監視対象は3人ですよね。最重要ターゲットも白杖小杖のはずです。」
「上の指示はな。だが、隊長は少年の方を最重要視しておられる。」
「では、2人の少女は放っておくのですか?」
「いや、そっちはこいつを使う。」
というと、
ピィィィーーーーーーーーーーッ!
と指笛を鳴らした。すると、
ピィーーーーーーーヒョロロローーーーーー!
という鳴き声が返って来た。トンビが男の頭上で旋回している。
「眼を借りるぞ!!」
男は叫ぶと、何か餌のような物をカバンから取り出し、上空に放り投げる。それをトンビが綺麗に空中でキャッチした。
男はカバンから、今度は眼帯を取り出して左眼を覆った。
「それが、『飛鷲』の技ですか。猛禽を操るとは聞いていましたが、視野も共有できるんですね。」
「言いふらすなよ。隊長以外、この能力の詳細を知っている人間はいないんだ。」
「わかりました。しかし、てっきり鷲を従えてると思ってたんですが、トンビなんですね。」
「トビはどこにでもいるから、現地調達の時には便利なんだ。ちゃんと訓練した鷲も飼育しているがな。」
「まるで、鷹匠ですね。」
「実際、俺の家は代々鷹匠だ。それより、俺の手の内を明かしたんだから、お前も教えろよな。」
「必要とあらば披露いたします。」
「わかった。では、少年を追うぞ。」




