第拾陸話 Vision
見たことがあるのに何かが違う風景。記憶には無いのになぜだか懐かしい場所。
子供の頃に住んでいた街。まだ活気があった頃。近所の駄菓子屋さんでは、いつもおばあさんが居眠りしてた。今日も居眠り。
この先の角を曲がると健ちゃんの家。そういえば、もう長らく会っていない。元気にしているのだろうか。
あれ?昨日、また遊ぶ約束をしたんじゃなかったっけ。健ちゃんは小学2年生。僕は1つ下の1年生。
角を曲がる。しかし、健ちゃんの家は見えない。なぜか、川の向こう側の町に繋がっている。昨日までこんなんじゃなかったのに・・・。
っていうか昨日?
時間がわからなくなる。自分が何者なのかも・・・。
『僕はどこだ?』
・・・・・・・・・・・・・どのくらい気を失っていたのだろう。
気がつくと、森の中の広場のような場所に倒れていた。直系50mくらいはあるだろうか。ほぼ真円形に、木の生えていない柔らかな草むらが広がっていた。
その中央部に、盛り土のような膨らみが2つ。それぞれに石が墓標のように置かれていた。
「お前が作ったのか?」
少し離れて様子を伺っていたボスに問う。ボスは猿の姿だ。女性の姿は幻だったのだろうか。
ボスはかぶりを振った。
「理恵ーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
翔太が駆け込んでくる。ボスの前に割って入り、俺から庇っているようだ。
翔太は極められた腕を無理やり引っこ抜いたのだろう、左肩を抑えていた。
「さっきは、よく分からん爆発のせいで油断したが、もう逃げられんぞ、翔太!!」
陣もおっとり刀で現れた。
「全部話して。」
落ち着いた鈴の様に響く声が冷たく告げる。小杖が姿を現す。
翔太は膝から崩れ落ちた。そして、搾り出すように言う。
「理恵だけは見逃してくれ。」




