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福見福子の最終定理 第1章 始まりの仮説  作者: 黙定六
始まりの仮説
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第拾伍話 Fall Down

 俺は左手に横っ飛びする。すぐさまボスも俺の方へ走り出す。しかしこれはフェイクで、俺はボスの結界をギリギリ掠めて、右手に反転して全力で杉の大木へ向かう。一か八かボスに背を向けて。


 いくらボスが怪力とは言え、大岩の重量を考えれば、一度動き出してから急激な方向転換はできないはずだ。そんな体勢から投げる事も出来ないだろう。その為にフェイクを入れたのだ。一旦は距離を詰められるリスクを犯して。杉の木を盾に出来れば、大岩のプレッシャーはほとんど無くなると思っていた。


ドゴーーーーーーーン!


 しかし、後方からものすごい勢いで大岩が俺のすぐ横を掠めて行き、目指していた杉の木にぶち当たった。ボスは崩れた体勢のまま、大岩をぶん殴るように、俺の方へ飛ばしてきたのだ。さすがに、方向は少しずれたが、直撃していたら一たまりもなかった。


ミシ・・・ミシ・・ミシ・・・・


 巨岩の一撃を喰らった杉の大木が、悲鳴を上げている。地上付近を大岩に抉られてしまい、自重を支えきれなくなっているのだ。

 一刻も早く、杉から離れなければ危険だ。しかし、さすがのボスもこの木の下敷きになれば、ダメージを負うのではないだろうか。俺の今の力でも、倒れる方向を多少はコントロールできる。


 と思うなり、ボスの方から安全圏まで下がったのだ。


 ボスの知能なら、下がらなければ俺が杉を背にして戦わなければならなくなるのはわかったはずだ。たしかに、それだとボスも危険な範囲にいるのだが、杉を見ながら戦えるのだから、極めて有利な状況だったのだ。

 俺の思考を読む能力者なのだろうか。それにしてはイチイのタネは見破られていない。いろいろとおかしい。


 ただ、恐らく最初にボスが俺を誘導しようとした方。杉の大木の反対側の方に何かがあるのは間違いないだろう。そしてそれは、単純に俺を殺す為の罠などではないはずだ。

 ボスは何かを俺に見せたがっている。しかし、翔太の手前、戦いは続けなければならないのではないだろうか。


 俺は急いで杉から離れつつ、ボスを迂回するように、何かがあると予想する方向へと走り出した。ボスは驚くほどあっさりと俺に回り込まれ、その後を付いてくる。

 しかし、俺も100%安全と思っているわけでもない。さっきフェイクを入れたポイントを通過する。ボスも同じ場所を通るように。

 フェイクを入れた時に、イチイのタネを撒いていたのだ。ボスが気づいていなければ、今頃、タネがボスの陰の気に引き寄せられて付着したはずだ。最初にタネを使ったときより、ボスが遥かに強力な結界を纏っているので、引き合う力も強いのだ。


 そのまま、森の開けた部分を奥へと進んでいく。ボスも追ってきているが距離は縮まっていない。やはり誘導されているのだ。

 こちらへどうぞと言わんばかりに、道らしきものが続くので、それを追っていると、


バリバリバリバリ!

ズドゴォーーーーーーーーーーーーーン!!


凄まじい音がした。さっきの杉の大木が倒れたのだろう。

 俺は後方をチラ見する。すると、追ってくるボスの後方から、津波のように大量の陰の気が押し寄せてくるのが見えた。


『間に合わないっ』


 そう思う暇もなくボスが飲み込まれる。その刹那、ボスが美しい人間の女性の姿になるのが見えた。


 ハッと息を呑む半瞬後に俺も飲み込まれた。そのまま、気の乱流にもみくちゃにされるように吹っ飛ばされる。

 そのまま、意識を失っていたようだ。

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