第佰参話 Dominating
ゴロゴロと坂を転がり登っていく昭二を、さらに『あいつ』が追い、止まった昭二を踏みつけようとする。
しかし、昭二は咄嗟に道の横に転がり出て難を逃れる。すでに、肋骨のほとんどは折れており、無理をすれば内臓に刺さってしまうのは明らかだった。
「どうだ?さんざん馬鹿にした相手に圧倒される絶望感は!?
俺様はそんなみじめな目に遭った事がないからな。是非とも『食レポ』をしてくれよ!」
すでに勝ったと思っているのだろう。『あいつ』が追撃の手を緩めた。
昭二は激痛に顔を歪めながら、近くの木の幹にすがりつくように立ち上がるが、また、血を吐いてしまう。
「無駄だ。無駄だ。お前も妻の後を追うんだよ。負け犬同士で、仲良くしてろ!」
ニヤニヤと笑いながら言う。
昭二は歯をグッとかみ締めると、坂を全力で駆け下りだす。
「だから無駄だと言ってるだろ!?」
あいつは、一呼吸置いてから追いかける。すると、坂の中間ぐらいであっさりと昭二を追い越してしまった。
前方に『あいつ』が現れ、慌てて方向転換しようとするも、バランスを崩して大転倒してしまう昭二。
「あっははははははははははははははははっ!!!
いいざまだなぁ、おい!」
『あいつ』はそれを見て上機嫌だ。すぐには止めを刺しにいかない。
昭二はさらにどこかを骨折したらしい。もう立ち上がろうとせず、這いずって坂を下る。
「川だろ?お前、『水』だもんなあ。そこまで行けばなんとかなるとか、甘い事を考えてるんだろ!?」
昭二は無視して進む。
『あいつ』は「チッ」と舌打ちをすると、
「返事はどうしたぁ!!」
昭二に駆け寄って、腹から蹴り上げた。
ドボーーーーーーーーーン!
昭二は川まで蹴り飛ばされる。
「どうだ?お望みの『水』だぞ。なんか、面白い事でもやってみせろ!!
それとも、今ので死んじゃったか!?」
昭二の返答は無い。水から浮かんですら来ない。
しかし、川の一点から血が流れ出しているのだった。
「それで、川底に隠れたつもりか?随分とお粗末だな。」
人間の頭くらいの石を片手で軽々持ち上げると、野球のボールのように、血の流れ始める地点に投げつけた。
バシャーーーーーーーーーーーーーン!!
巨大な水しぶきが上がる。しかし、昭二は出てこない。
続けて、さらに大きな岩をいくつも川に投げ込むが、昭二は出てこなかった。
「もう、死んだのか・・・。もっと、遊ばせろよ。こいつを使ったのは、お前のガキのツレをぶっ殺した時以来なんだからよぉ・・・」
本当に寂しそうな声を出した。
「まあいい。他にも遊んでやる奴らが残ってるからな。全員、八つ裂きの刑にしてやるとするか!!」
すぐに嬉々として坂道を、鼻歌を歌いながら登っていくのだった。




