第佰弐話 Change
吹き飛ばされた『あいつ』の下に、急速に砂が集まり山ができた。その砂山に落下したことで、ダメージは軽減された。
「教授がどんなちょっかいを出しているのか知りませんが、ちょっと、小賢し過ぎやしませんか。」
『あいつ』は砂山を滑り降りてくる。
「お前はもう終わりだ。」
昭二は水刀を再び八相に構えている。
「終わりなどありません。例え『この』私が滅びたとしても、『私』は消えません。」
「お前もどうせコピーなんだろ?」
「誤解しているようですね。コピーなんていません。全て本物の私なのです。『分裂』というべきでしょうか。」
「なるほど。だから、全部劣化してるんだな!」
言いながら、昭二は突進して切りつけた。
『あいつ』は足踏みして、また、土の壁を作るが、明らかに土の量が少ない。
昭二の斬撃は壁を切り飛ばして『あいつ』に迫る。あいつは転げるように距離を取り、かろうじてかわすのだった。
「どうした?また、力が弱くなったんじゃないのか?」
「くそっ!!」
『あいつ』は恥も外聞も無く、でたらめに土の壁を作りながら、昭二に背を向けて逃げ出した。
「待て!逃がさん!!」
昭二は壁を避けながら『あいつ』を追う。しかし、真っ直ぐ逃げるあいつとの距離は離れていく。
そして『あいつ』が川を渡ったところで、後ろを振り向く。手には注射器を持っていた。
「止まれ!!」
昭二が川の手前まで来たところで、声を上げる。
「何をする気だ!?」
「お前の妻の最期を見せてあげましょう。もっと、感傷的な場面を用意してあげるつもりでしたが、堪忍袋の緒が切れてしまいました。
さっさと死ね。」
と言うと、自らの首に注射を打ち込むと、その場に崩れ落ちたのだった。
「な!?」
驚きつつ、昭二は急いで橋を渡り駆けつける。様子を見ようと、屈もうとした瞬間、誠の体からイノシシの牙が伸びてくる。
咄嗟にかわしたものの、頬をかすめた。
それまでとは、明らかに違う、禍々しい雰囲気を纏った誠がそこにいた。いや、誠がいなくなったというべきだった。
「お前、何をした!!!」
昭二の声に強い怒気がこもる。
「言っただろ。『死ね』と。もう死んだよ。」
完全に口調も変わっていた。
「ここからは、俺様の最高傑作を見せてやる。感謝して死ね!!」
『あいつ』の両方の手の平から、巨大な牙が生えてくる。
昭二は咄嗟に水刀を消すと、前方に水を噴出する。しかし、その水流をものともせず『あいつ』が突進し、肩からぶつかる。
昭二は村へ向う登り坂の方に20mほど、吹っ飛ばされた。
「ゲフッ、ウグググッ!!」
昭二が血を吐く。それでも、急いで立ち上がろうとする。
しかし、容赦なく『あいつ』が突進し、昭二をさらに坂の上へと蹴り飛ばした。




