第佰壱話 Arrogance
「まだわからないのか。私たちは、お前を殺すと決めたのだ。もう、お前の支配など受けない。」
「『お前たちが決めた』事など、私には何の関係も無い。なのに、なぜ、支配が及ばない。」
「お前にはわかるはずもない。『決意』にどれだけの力があるかなど。
もう、私たちは互いを人質に捕られているとは思っていないのだ。命をかけると決めたから。
いずれ、誠もお前の支配から完全に逃れるだろう。殺したければ殺すがいい。だが、その隙を私が逃すとは思うなよ!」
『あいつ』は昭二の言葉など、耳に届いていない様子だ。
「どいつもこいつも、インチキばかりだ。私の力が及ばない事など、絶対にありえない。なんらかのインチキをやっているに違いない。
!!!!!!!
そうか!!教授か!!!
教授が私の能力を恐れて、外からちょっかいを出しているのだ!!!」
「何を言っても無駄か・・・」
ふうっと一つ溜息をつくと、昭二は水刀を八相に構えなおした。
「もう、斬らせません。」
『あいつ』が手のひらを地面につける。すると、五本の指の方向に、地割れが発生した。
水柱のいくつかは地割れに飲まれ、溝を水が満たしている。
「その程度か。誠の力なら、とっくに俺はズタズタだぞ。」
明らかに『あいつ』の使う地属性の力は弱まっている。
もう一度、釘を出したとしても、昭二の足を貫くほどの強度は得られないだろう。
昭二は水刀の先を溝の水につける。すると、刀が水を吸い上げ、刀身が3mほどに伸びた。
その大刀を頭上でグルングルンと振り回し、『あいつ』に切りかかっていく。
「あなたに、『この体』は切れません!」
『あいつ』は真っ直ぐ昭二に突っ込んでいく。躊躇なく、昭二は横なぎの一撃を放つ。
「おっと。」
『あいつ』は急停止すると、強く右足で地面を踏みつける。すると、土の壁が立ち上がり、水刀の斬撃を防いだ。
昭二は手を休める事無く、あらゆる角度から斬撃を放ち続ける。しかし、悉く土の壁が現れ、刃が届く事は無かった。
しかし、壁がいくつも出来た事で、両者に死角が生まれる。壁に身を隠し、一撃を狙う昭二。だが、『あいつ』が足踏みをすると、全ての壁が消え失せた。
壁に体を預けていた昭二の体制が崩れる。その隙を逃さず、『あいつ』は地面に手をつく。今度は5本の指を揃えており、5本の地割れ全てが昭二に向った。
昭二はわざと倒れ込みながら、水刀を前方の地面に向けて振るう。地面が横方向の一直線にえぐられる。
『あいつ』の地割れは、その溝で止まってしまった。
「馬鹿な!相性でも能力の強さでも、こちらが有利のはずだ!!」
『あいつ』が喚く。
「いつまでも、自惚れていろ!!」
とっくに立ち上がっていた昭二が、自分の足元に水刀を突き刺す。
すると、『あいつ』の足元から水柱が上がり、誠の体を容赦なく上空へ吹き飛ばしたのだった。




