第佰話 Couple
「お母さんの本当の力はね、鬼道っていうんだ。」
「鬼道?卑弥呼が使ってたっていう力の事か?」
「ひみこ?それは知らないけど、みんなの願いを叶える力なんだよ。」
鬼道を使うから、鬼の一族なのか。
「願いが叶うのなら、なぜ、隠さなければいけないんだ?」
「口先だけの願いではダメだからね。心の奥底からの望みしか叶わない。
酷い世の中で、みんなの心が荒んでくると、願う事は他人の不幸ばかりになってくる。
だから、鬼道は『呪い』の力だって言われる様になったんだ。」
昭二は一人、村の入り口にいた。
坂の下に誠の姿を見つける。
「お前は俺が止める。いいな。誠。」
昭二は大きく息を吸い、目を閉じるとゆっくりと息を吐き出した。自分に動揺しないよう、言い聞かせるように。
そして、坂を下り始める。
「おや?出迎えですか?てっきり、裏切られたとばかり思っていましたが。」
誠の姿の『あいつ』が皮肉たっぷりに言う。
「好きにしていいんだろ?だから、好きにさせて貰うだけだ。」
昭二は水属性の能力を使い、一振りの刀を出現させた。
「あなたもですか。いとも簡単に、この世界で能力を使うじゃないですか。ちょっと、傷付きますねえ。」
この世界では『あいつ』の力を上回る者だけが能力を使えるのだった。
心にも無い事を言う『あいつ』を無視し、昭二は誠に向って行く。
「誠。いくぞ!!」
前に踏み込む昭二の右足に激痛が走る。
地面から釘のようなものが飛び出しているのを踏みつけてしまったのだった。
「どうです?奥さんの能力で作った罠に引っかかる気分は!」
『あいつ』は心の底から嬉しそうだ。
いつもなら、白い粘液が傷口から出てきて、すぐに塞がるのだが、今は赤い血が流れ続けている。
「そうそう。私の薬に頼るつもりだったのなら甘すぎますよ。あなたに預けていたものと一緒にほとんど抜き取りました。あの場で死なない分だけ残してあげたのは、親心というものですよ。」
また、心にも無い事を言うのを無視し、右足の激痛も無視して、さらに踏み込もうとする。その地面から再び釘のようなものが飛び出してくるのが見えた。今度はわかっていたので、水の刀を杖にして、足を地面には付けずに回避した。
しかし、昭二の周囲を取り囲むように、無数の釘が飛び出してくる。どこに足を置いても、刺さってしまう状況で、昭二は地面に突き刺した自分の水刀を踏みつけた。
ほとんど抵抗なく水刀は地面に潜り込む。すると、地面のあちこちから水柱があがったのだった。
昭二は、水柱を足場にして誠へと突っ込み、新たに生み出した水刀の斬撃を振るう。
誠は一瞬、何かをしようとするが何も起きず、昭二の袈裟切りをまともに受けたのだった。
「ぐわっ。っつう。なぜだ!なぜ邪魔できる?」
『あいつ』がうろたえていた。誠の支配がほころんでいるようだった。




